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ローリン・ヒル、ロバート・グラスパーからの“告発”に反論

Ms. Lauryn Hill

今月中旬に、人気ジャズ・ピアニスト/プロデューサーのロバート・グラスパー(Robert Glasper)がラジオ番組の中でローリン・ヒル(Lauryn Hill)を厳しく批判、告発したことについて、ローリン・ヒルがついに沈黙を破った。

今月25日には、ソロ・デビュー・アルバムにして名作『The Miseducation Of Lauryn Hill』の発売20周年を迎えたローリン・ヒル。その記念ツアーで忙しい最中、思わぬ方面から彼女への批判が飛び出した。ジャズの枠を超えて活躍し、2012年作『Black Radio』がグラミー賞の最優秀R&Bアルバムに輝いたロバート・グラスパー・エクスペリメントでの活動でも知られるロバート・グラスパーは今月中旬、地元ヒューストンのラジオ番組に出演。その中で、これまでに困らされたアーティストとしてローリン・ヒルの名を上げ、語り出した

ロバート・グラスパーが最初に明かしたのは、2008年頃にローリン・ヒルが「モンブラン」ブランドのためにニューヨークで行った20分のショウに、バンド・メンバーとして参加した時のトラブル。「1週間、毎日10時間」のリハーサルの中で、「毎日やってきては、ショウの内容を全く違うものに変え」ていったローリン・ヒルは、しかしリハーサル最終日に姿を見せず、バンドの演奏に満足できないとして公演前日にも拘わらず「ギャラを半額にする」と彼女のマネージャーを介して通告したという。バンドを辞めようとしたグラスパーをマネージャーが引き止め、交渉したことで最終的にグラスパーは公演当日も参加したが、「彼女は、バンドをクビにするのが好きなんだ。パッと浮かんだだけで15人の(クビにされたミュージシャンの)名前を暗唱できる」と彼女の“悪癖”を語り、またバンドのミュージカル・ディレクターから、「目を見てはいけない」、「彼女のことはMs. Hill(ヒルさん)と呼ばなくてはならない」といった厳格なルールが課せられたなど、ミュージシャンの扱いが酷いと告発した。

さらにロバート・グラスパーは、『The Miseducation Of Lauryn Hill』について、「俺の友人たちの音楽を盗んだ」、「『Miseducation』は、俺も個人的に知っている素晴らしいミュージシャンやプロデューサーたちによって生まれたんだ。自分で書いてもいない音楽で絶賛されている」などと糾弾。グラスパーの舌鋒鋭さに、司会者は「彼女が耳にするかもしれないこと分かってるよね?」と確認したが、「100%理解しているよ。別に気にしないさ。だって俺の言っていることにひとつも嘘はないから」と堂々と回答し、最後に「いつまでも彼女に文句を言う気はない。でも、事実としてこういうことがあって、彼女は責任を取る必要があるってこと。人は変わることができる。彼女にも変わってほしい。彼女は多くの人に対して敬意を欠いてきたから。たくさんのミュージシャンとその家族にね」と語った。

ローリン・ヒルは、公演予定時間に大幅に遅れる“遅刻癖”も有名で、ファンから批判されることは度々あった。2016年にはアトランタ公演で2時間以上の遅刻をし、その影響で公演時間を大幅に削ったためにバッシングされ、ザ・ルーツのクエストラヴ(Questlove)が怒るファンの肩を持ったことはあるが、今回のように人気のグラミー受賞アーティストにここまで真っ向から批判された例は珍しい。ちょうど発売20周年というタイミングで『The Miseducation Of Lauryn Hill』における“盗作”の話題が持ち上がったということもあり、このロバート・グラスパーの発言は大きな話題に。

これについてローリン・ヒルはしばし沈黙を守っていたが、27日、ブログ型プラットフォームのMediumにグラスパーへの反論を掲載した。反論が遅れたことについてローリンは、『The Miseducation Of Lauryn Hill』の発売20周年(8月25日)が過ぎるのを待った、としているほか、この話を知ったのが少し遅かったなどと説明している。

このMediumに投稿した長文の中でローリンは、「バンドをクビにするのが好き」というグラスパーの発言に対して、「クビにすることが好きだなんてことは決してない。最適なミュージシャンを見つけるのに私は何年もかけてたくさんの人と会っているけど、今のバンドは、一番新しいメンバーでも2~3年一緒にやっているし、中には7~8年一緒の人もいる」と否定。「公演前日にギャラを半額にすると言われた」という件については、「なぜ誰も、私もギャラをもらう立場だということを思いつかないのだろう」「彼の言っていることが正確なのかは私には分からない。半額にしたという話について私は詳細を覚えていない。もし私の知らぬうちにそういうギャラ交渉があったのなら、私は元に戻すように話すと思う」としながら、「でも、私は正当な理由なく、独断でミュージシャンへの支払いを減額したことはない」と回答している。

またバンド・メンバーのオーディションについて、「私が見定めているのは、一緒にやってヴァイブが合うかどうか、私のその時の特定の音楽的方言、方向性を理解しているかどうか」と述べ、その基準に満たなければ呼ばれることはないと説明。「私は、ミュージシャンに特定の“サムシング”を求めている」としており、多様なジャンルの音楽に影響を受けたローリン・ヒルにとって、「音楽とは、言語のように必ずしも容易に翻訳できるものではない」とした上で、「素晴らしいプレイヤーであっても、特定のスタイルにおいてフィーリングやグルーヴを捉えられない人もいる」ため、そういうミュージシャンは落選となり、「新しいことに挑戦することにオープンで、進んでやるようなミュージシャンに惹かれる」としている。

ライブ・パフォーマンスにおいて、オリジナルとは違うアレンジにしている理由については、「私が何年もアルバムをリリースしていないから」と回答。「これには多くの経緯があるんだけど、それはともかくとして、変化をつけたり、新しい試みをしてみたりしないで何度も何度も同じ曲をやり続けるというのは、ありえない。私はロボットじゃないんだから。もし私が新作を出していたら、過去の楽曲はアレンジをそのままにしていたかもしれない。でも、新作を出していないから。だから私は、その時のフィーリングに合わせて修正し、リアレンジしている」と説明し、「オリジナル・バージョンでの演奏を許さない」という噂について、「都市伝説」だと否定している。

このライブにおける別アレンジについては、グラスパーのインタビューでは『The Miseducation Of Lauryn Hill』において“盗作”をしているから、と理由付けられていたが、この「楽曲は彼女以外の人たちによって書かれ、実際に書いた人たちはその功績を認められず、クレジットされていない」という糾弾についても、「『The Miseducation』は私が初めてフージーズ以外のミュージシャンと制作した作品で、誰が関わったかという情報や、制作における彼らとの関係はクリアになっている」と真っ向から否定。

実際にローリン・ヒルは、『The Miseducation Of Lauryn Hill』の発売時に、ヴァーダ・ノーブル(Vada Noble)など4名のプロデューサー/ミュージシャンたちによる音楽集団=ニュー・アーク(New Ark)から著作権について訴訟を起こされており、グラスパーの発言はこの件についてのことと見られている。ニュー・アークのメンバーは、『The Miseducation Of Lauryn Hill』においてアディショナル・プロダクションなど「部分的な貢献」という形でクレジットされているが、彼らは実際には制作において主要な役割を果たしたとして、5曲においてプロデュース/共同プロデュースとしてクレジットすることや賠償金などを求めた。「ローリン・ヒルのプロデュース」という名義だったアレサ・フランクリンの“A Rose Is Still A Rose”についても同様の要求が為されていた。この訴訟は、発売4ヶ月後の1998年12月には発覚していたものの、係争は長引き、2001年2月に和解が伝えられた。和解内容は明かされていないが、ローリン・ヒルの反論の根拠も、“和解済”であるところにあると思われる。

ローリン・ヒルは、「リハーサルの間、ギターのチューニングすらしなかった」というグラスパーの発言については、「ただの憶測に聞こえる」と一蹴。「目を見てはいけない」という“ルール”については、「私に顔を向ける時に目を見てはいけないだなんて、そんなこと誰にも言ったことはない。おそらく、私がそうしてほしいと誰かが勝手に想像して言ったことだろうと思う」と否定しつつ、「でも、もし誰かアーティストがこういうことを言ったとしても、私は理解できる。音楽というアートを作ったり演奏している間は、一定の脆さ、弱さがあるものだから」とコメント。一方で、Ms. Hill(ヒルさん)と呼んでほしいという話については、過去形ではあるが事実だとし、「私は若く、黒人で、女だった。そういう人間に対して、みんなが適切な敬意を払わないわけではない。だから、特に当時は大事なことだった」としている。

またローリン・ヒルは、“遅刻”問題にも言及。「私が公演開始時間に遅れるのは、ファンをリスペクトしていないとか、ファンの時間を軽視しているということじゃない。むしろ逆」、「私は、アレンジを変えたりだとか、別の曲をセットリストに入れたりだとか、公演内容を定期的に変えていくのが好き。このためにサウンドチェックが長くなることが多くて、そのために開演時間が遅くなり、公演開始が遅くなってしまう。この完璧主義は、オーディエンスにもっとも最高で本物の音楽体験を味わってもらいたいから」と弁解している。