全米チャート1位も手にした20歳ラッパー、エクスエクスエクステンタシオンが死去

今年3月に発表した最新作『?』が全米アルバム総合チャートで初登場1位となるなど人気のあった新鋭ラッパー/シンガー、エクスエクスエクステンタシオン(XXXTentacion)が亡くなったことが発表された。20歳だった。
フロリダ出身のエクスエクスエクステンタシオン、通称エクスは、2016年に発表した“Look At Me!”などで、当初はヘヴィメタルなどにインスパイアされた「パンク・ラッパー」として注目を集めた若手。虚無的かつ内省的で、ドラッグや自殺、傷心を歌う「エモ・ラップ」の代表格として若者を中心に大きな支持を得、2017年に発表したデビュー・アルバム『17』は全米アルバム総合チャートで初登場2位、R&Bアルバム・チャートでは初登場1位を記録。今年3月に発表した最新作『?』は全米アルバム総合チャートで初登場1位、リード・シングルの“SAD!”は全米シングル総合チャートで最高7位まで上昇するヒットとなった。
今後のさらなる活躍も期待される中、エクスエクスエクステンタシオンが銃で撃たれ、帰らぬ人となった。現地時間で18日月曜の午後、フロリダ州ブロワード郡で銃に撃たれ、意識不明に。その後、搬送先の病院で亡くなった。まだ20歳という若さだった。米ゴシップ・サイトのTMZが目撃者の話から速報を伝え、警察が死亡を発表した。報道によると、エクスはバイク・ショップを訪れており、彼が帰ろうと車に乗り込んだ際に何者かによって銃で撃たれたという。複数回の銃声が聞こえたとされている。午後1時に病院へ緊急搬送されるも、午後2時40分頃に死亡が確認された。警察発表では、武装した2名がエクスエクスエクステンタシオンに近づいたことが分かっており、容疑者として行方を追っている。目撃者によると、車からエクスのルイヴィトンのバッグが盗まれたとされており、警察側も強盗殺人と見ているという。現時点で逮捕者は出ていない。
この突然の訃報に、多くのアーティストたちからも驚きと共に彼の死を受け取める声が相次いでいる。友人のスキー・マスク・ザ・スランプ・ガッド(Ski Mask The Slump God)は、「本当なわけがない」と受け止めきれない想いを率直に綴った。人気プロデューサーのディプロ(Diplo)は、エクスエクスエクステンタシオンについて「こいつは天才だった。本物のアーティストだった。過ちも犯したが、彼は若かったし、改善しようと一生懸命だった。もっとよい人間になろうとしていたんだ」と振り返り、「週末に俺にメールを送ってきた。彼の目標のひとつが、彼の次のアルバム完成のために、俺とスクリレックスが参加することだった。俺は今週、彼をLAに招いたところだった。来るかなって思いながら」と、コラボレーションするところだったことを明かしている。
また、カニエ・ウェスト(Kanye West)も「君にどれだけインスパイアされたか、伝えられなかった」などと綴ったほか、J・コール(J. Cole)、ビッグ・ショーン(Big Sean)、DJプレミア(DJ Premier)、ジューシィ・J (Juicy J)、ジデーナ(Jidenna)といったヒップホップ界、さらにはエクスとコラボレーション経験もあるノア・サイラス(Noah Cyrus)など、多くのアーティスト、ミュージシャンたちがその死を悼んだ。
エクスエクスエクステンタシオン、本名ジャセ・オンフロイ(Jahseh Onfroy)は1998年、フロリダ州プランテーション生まれ。エジプト、インド、ドイツ、ジャマイカ、イタリア系の血が入っているという。違法銃器の所持で2014年に少年鑑別所に1年間収容されていた際にスキー・マスク・ザ・スランプ・ガッドと友人になり、スキー・マスクの影響を受けて本格的にラッパーとして活動を始めた。2016年1月に発表した、ダブステップ・プロデューサー、マーラ(Mala)の“Changes”をサンプリングした“Look At Me!”が注目を集め、特に、ドレイク(Drake)が後に『More Life』に“KMT (Kissin’ My Teeth)”というタイトルで収録した楽曲でのラップが“Look At Me!”を思わせたことから、「俺のフロウがドレイクに盗まれた」とドレイクを非難したことでも大きな話題になった。
2017年には、米ヒップホップ誌XXLがこれからの躍進が期待される10名のラッパーを選出する「XXL Freshmen Class」の2017年版において、投票で決まる「10th Spot」に選出。その後発表されたデビュー・アルバム『17』は、これまでとは一転、ローファイで内省的な歌を聞かせるオルタナティブR&B~インディ・ロック路線に転身して世間を驚かせ、またあのケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)もTwitterで紹介するなどの反響を呼び、全米アルバム総合チャートで初登場2位、R&Bアルバム・チャートでは初登場1位を記録した。今年3月には、ロウなヒップホップや流行のトラップ路線から、エモーショナルな激しいラップを聞かせる「パンク・ラッパー」、さらには前作『17』に連なる歌ものまで、様々な表情を見せる新作『?』を発表し、見事、全米アルバム・チャートで初登場1位を手にした。
その活躍の一方で、「ラップ界でもっとも物議を醸す男」と評されることもあるなどトラブルも多く、昨年12月にはドメスティックバイオレンスなど複数の容疑により拘置。その後、釈放され、自宅監禁の状態がずっと続いていたが、3月21日に制限付きで自宅監禁を解かれた。しかしその直後に、彼が女性を殴っているように見える2013年頃の映像がインターネット上に出回り、問題に。音楽ストリーミング・サービスの最大手Spotifyは、5月にヘイトコンテンツの削除を目指した新たなポリシーを発表した際、Spotify運営のオフィシャル・プレイリスト、そしてユーザーの好みから分析するレコメンド機能からエクスエクスエクステンタシオンの音楽が除外されることになったことも話題となったばかり。これは、違反の基準が不透明であり、検閲との声も上がるなど音楽業界から猛反発を受けたこともあって、撤回されている。
The two leaders of this entire wave of hip hop are dead now . If you really want to revil in their deaths I will block you. No time for negativity
— diblo (@diplo) 2018年6月18日
rest in peace I never told you how much you inspired me when you were here thank you for existing pic.twitter.com/QU7DR3Ghbw
— KANYE WEST (@kanyewest) 2018年6月18日
This got me fucked up. RIP X. Enormous talent and limitless potential and a strong desire to be a better person. God bless his family, friends and fans.
— J. Cole (@JColeNC) 2018年6月18日
No This Can’t Be Real
— $ki Mask (@THESLUMPGOD) 2018年6月18日
My heart dropped when I heard about @xxxtentacion, I feel like we only got to see a glimpse of his artistry. I didn’t know him personally but I respect how passionate he was about his music and message. Nobody deserves this kind of ending. gone too soon, damn! RIP
— Sean Don (@BigSean) 2018年6月19日
R.I.P. Xxxtentacion
— juicy j (@therealjuicyj) 2018年6月18日
R.I.P @xxxtentacion No one can be so self-righteous that they are happy when a youth dies. The young still have the capability to reform. God bless the kids. #xxxtentacion
— Jidenna (@Jidenna) 2018年6月18日
Condolences to family, friends and fans of @xxxtentacion
— DJ Premier (@REALDJPREMIER) 2018年6月18日