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Spotify、ヘイト対応の新ポリシーを早々に訂正 「検閲」との反発受け

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音楽ストリーミング・サービスの最大手Spotifyがヘイトコンテンツの削除を目指した新たなポリシーを施行した結果、特定のアーティストが予告なくオフィシャル・プレイリストから削除され、反発を受けていた問題で、Spotifyは1ヶ月と経たずにこの新ポリシーを訂正することになった。

Spotifyは5月10日、ヘイトコンテンツの削除を目指した新たなポリシーを発表。具体的にはヘイトコンテンツを「人種、宗教、性自認、性別、民族性、国籍、性的指向、軍役経験、身体的障害などの特性に基づいて、個人やグループに対する憎しみや暴力を明らかに助長したり、支持したり、促したりする内容が主になっているコンテンツ」と規定。その上で、「アーティストやクリエイターが、きわめて有害で憎むべき行動をした場合(例:性的暴行や子供に対する暴力)、そのアーティストやクリエイターとの関わり方に影響を与えるかもしれない」とし、こうしたポリシー違反があった場合、該当コンテンツの削除、もしくはSpotifyでのプロモーションを止めるとした。

この新たなポリシーに従って、「R&B界の帝王」R.ケリー(R. Kelly)や、今年3月に発表した『?』が全米アルバム・チャートで初登場1位を獲得するなど若者に人気の20歳新進ラッパー/シンガーのエクスエクスエクステンタシオン(XXXTentacion)らの音楽が、Spotify運営のオフィシャル・プレイリスト、そしてユーザーの好みから分析するレコメンド機能から削除された。

これはあくまで「Spotifyは違反したアーティストをプロモーションしない」という意味でのオフィシャル・プレイリストとレコメンド機能からの削除であり、Spotify上では変わらず聴くことができ、ユーザー作成のプレイリストなどには影響はない。だが、特に近年勢いのあるヒップホップにおいては、900万人以上のフォロワーを抱える「RapCaviar」などの人気プレイリストに楽曲がピックアップされることでヒットにつながっており、エクスエクスエクステンタシオンの“SAD!”もRapCaviarに取り上げられ、全米シングル・チャート最高7位を記録した楽曲だった。膨大な楽曲数を持つSpotifyでは、実に31%がプレイリストを通して再生されていると報告されており、こうしたSpotifyのエディトリアル・チームが運営するオフィシャル・プレイリストから除外されれば、ストリーミングの再生回数に大きく影響が出ることになる。

だがそれ以上に、Spotify側が明確な基準を提示していないことも問題視された。今回の“ポリシー違反”と見なされたR.ケリーやエクスエクステンタシオンは、具体的にどういう違反があったかの報告もなく、一方的に楽曲がオフィシャル・プレイリストやレコメンド機能から削除されたことに不満を唱えた。また、R.ケリーは現在巻き込まれている様々なスキャンダルや訴訟を「虚偽の主張や、何も証明されていない疑惑」と主張した上で、「重罪の判決を受けたことのあるアーティスト」、「ドメスティックバイオレンスで逮捕され有罪になったアーティスト」、「暴力的で女性を貶めるような歌詞を歌うアーティスト」が他にいるにも拘わらず、対応していないのはおかしいと非難した。

そして、今回“ポリシー違反”に挙げられなかったアーティストやレーベル側も、Spotifyの対応に猛反発。Spotify側は「コンテンツを検閲するわけではない」と主張したが、そのようには受け止められなかった。中でも、今年1月の第60回グラミー賞でラップ4部門すべてをさらった30歳のスター・ラッパー、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)は、代理人を通してSpotifyの重役に抗議し、ケンドリックの音楽をSpotifyから取り下げる可能性を示唆してポリシー撤回を迫った、とブルームバーグが報じた。実際にその後、ケンドリック・ラマーが所属するレーベル TDEのCEOであるアンソニー・ティフィスが米Billboard誌のインタビューに応じ、「検閲」についてSpotifyに話に行ったことを認めている。ティフィスはSpotifyに「特にヒップホップ・カルチャーにおいては、アーティストが検閲されるのはよろしくない」ということを伝え、その後パフ・ダディ(Puff Daddy)や、元Sony Music社長のトミー・モトーラらとも話し合ったという。

こうした反発を受け、米時間で6月1日にSpotifyはポリシーの更新を発表。「説明があまりにも漠然としており、そのために混乱や懸念を招いてしまいました。また、新たなガイドラインをお知らせする前に、私たち自身のチームや、主要パートナーたちの意見を聞くための時間を十分に用意できていませんでした」と謝罪した上で、「私たちの目的はアーティストとファンをつなぐことであり、裁判官や陪審員を演じることではありません」と説明。具体的には、「アーティストやクリエイターが、きわめて有害で憎むべき行動をした場合(例:性的暴行や子供に対する暴力)、そのアーティストやクリエイターとの関わり方に影響を与えるかもしれない」としていた部分を撤回し、“アーティストの行い”をポリシー適用の判断基準にしないこととなった。

これにより、過去に逮捕歴のあったエクスエクスエクステンタシオンの音楽は、人気の「RapCaviar」でふたたび確認されるようになり、オフィシャル・プレイリストおよびレコメンド機能に復活したようだ。一方で、昨年から「若い女性たちを“洗脳”し、“カルト”的な監禁をしている」と告発を受けており、性的同意年齢を満たさない若い女性に対する性的暴行など様々な疑惑が持ち上がっているR.ケリーの音楽は、いまだ復活していないと指摘されている。米Billboard誌によると、Spotify側は個別のアーティストについての質問についてはノーコメントを貫いているという。

もっとも、5月10日の新ポリシー発表から11日後に米Billboard誌が報じたところによると、ポリシー適用前のSpotifyでのR.ケリー楽曲の再生回数は週およそ658万4000回(2018年の再生回数を週で平均したもの)だったのに対し、ポリシー適用後の5月10日~16日の1週間は、およそ667万6000回と、ほぼ変動がなく、ポリシー適用の影響がなかったという。R.ケリーが2017年以降ほぼ楽曲を発表していないこともあるが、ベテランのR&Bアーティストはストリーミング・サービスで聴かれることはあまり無く、2015年にR.ケリーが発表した『The Buffet』も初週の総合ユニットおよそ3万9000のうち、実売セールスがおよそ3万6000枚と9割以上を占め、ストリーミングによるポイントはわずかだった。一方でエクスエクステンタシオンの『?』は、初週およそ13万1000ユニットのうち、ストリーミングによるポイントだけでおよそ10万6000ユニット(収録曲の再生回数が1500回=1ユニット、アルバム1枚の売り上げ相当と換算)と、8割以上をストリーミングが占めていた。