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チャイルディッシュ・ガンビーノ、銃社会のアメリカを風刺した新曲が大反響

Childish Gambino - This Is America

『スパイダーマン:ホームカミング』や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』に出演している俳優ドナルド・グローヴァーのアーティスト名義であり、先日の第60回グラミー賞では5部門でノミネートを受け、見事受賞したチャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)の最新シングル“This Is America”が大反響を呼んでいる。

主演・脚本・製作総指揮・エグゼクティヴ・プロデュースを務める人気TVドラマ・シリーズ『Atlanta』が昨年の第74回ゴールデングローブ賞でテレビドラマ部門の作品賞と男優賞に輝くなど、ここ最近は映画/TV界での活躍が目覚ましいドナルド・グローヴァー。一方でチャイルディッシュ・ガンビーノとしても、グラミー直前の今年1月下旬には、自身のクリエイティヴ・エージェンシーであるWolf + Rothsteinとのパートナー契約という形で、メジャー・レーベルであるRCA Recordsと契約。そして第60回グラミー賞では、ロングヒットとなった“Redbone”が最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス賞に輝いたほか、受賞式で披露された“Terrified”のライブ・パフォーマンスも話題となった。

そして、Wolf + Rothstein/RCAから新作をリリース予定と明かされているチャイルディッシュ・ガンビーノは、5月5日に人気TV番組『Saturday Night Live』で司会を務めると共に、同タイミングで新曲“This Is America”をリリース。番組内でライブ・パフォーマンスも披露されたが、シングル発売と合わせて公開されたミュージック・ビデオが大反響を呼んでいる。

このミュージック・ビデオの監督を務めたのは、フライング・ロータスらのミュージック・ビデオを手がけていることで知られ、『Atlanta』では全10話中7話の監督を務めたLA在住の日本人ディレクター、ヒロ・ムライ(Hiro Murai)。「これがアメリカ」と繰り返すこの曲のビデオは、アメリカにおける様々な問題や歴史の闇を参照しているとされており、特に、アメリカで過去最悪の銃乱射事件が起こりながらも規制の進まない銃社会の問題を表現していると見られている。

ビデオはYouTubeで公開から24時間で1100万回以上が再生され、この数日で再生回数は5000万回近くになるなど、今年最大級の注目を集めている“This Is America”だが、特にその反響の大きさがうかがえるのは、冒頭に登場するギターを弾く男性の件だ。この男性は、2012年にフロリダ州で自警団員が丸腰のアフリカ系の17歳を射殺し、「ブラック・ライヴズ・マター」運動が盛り上がるきっかけとなったトレイヴォン・マーティン事件の被害者の父親によく似ており、一部で「トレイヴォン・マーティンの父親が登場している」と騒がれたこともあって、CNNなどが「トレイヴォン・マーティンの父親ではない」と呼びかける報道をしたほど。

また、銃を乱射するチャイルディッシュ・ガンビーノがすぐに何事もなかったかのように踊り始めたり、暴動のような状況が背景で起こっている中で、それを無視してチャイルディッシュ・ガンビーノが踊り続けるさまは、痛ましい銃乱射事件が起きてもすぐに忘れ去られてしまう状況や、社会における問題に対する無関心さを「これがアメリカ」と皮肉ったものだと見られている。他にも、曲が始まる前にチャイルディッシュ・ガンビーノが最初に銃を撃つシーンでは、米南部で1964年まで存在した人種差別法であるジム・クロウ法の名前の由来であり、人種差別的コメディであるミンストレル・ショーで白人が顔を黒く塗って演じる黒人奴隷のキャラクター=ジム・クロウの戯画を再現するようなポーズを取っているとも指摘されている。終盤にカメオ出演するSZA (シザ)は、自身のInstagramで「liberty」(自由)の言葉と共に自由の女神を思わせるポーズをしており、ビデオでは傍観者のようなSZAの態度もまた、風刺となっていると見られる。

また力強くラップするこの楽曲自体も評価は高い。プロデュースしたのは、チャイルディッシュ・ガンビーノを初期から支えている盟友ルーヴィク・ゴランソン(Ludwig Göransson)。最近では記録的大ヒットとなった映画『ブラックパンサー』の音楽スコアを担当したことで有名だが、『ブラックパンサー』に通ずるアフリカンなリズムやチャントを現行のトラップ・ヒップホップと組み合わせたようなサウンドだ。さらに、曲中にはヤング・サグ(Young Thug)、ミーゴスのクエヴォ(Quavo)、レイ・シュリマーのスリム・ジミー(Slim Jxmmi)、トゥエニーワン・サヴェジ(21 Savage)、ブロックボーイ・JB (BlocBoy JB)といった20代の若手黒人ラッパーたちがアドリブで声を加えており、今のアメリカの状況に対する、アフリカ系アメリカ人の若い世代からの“声”を体現するかのような曲になったとも言えるだろう。

映像そのものは過激な内容だけに、一部では批判の声も上がっているが、ブルーノ・マーズ、トレント・レズナー、アデル、エリカ・バドゥ、ジャネル・モネイや、タラジ・P・ヘンソン、ナオミ・キャンベルなど多くの有名人が賛辞を送っており、さらに反響を拡大させている。

こうした反響の大きさはチャイルディッシュ・ガンビーノの過去作品にも影響を及ぼしており、グラミー賞アルバム・オブ・ザ・イヤー候補になった2016年作『”Awaken, My Love!”』、そして2013年発表の前作『Because The Internet』のストリーミング・サービスでの再生回数が増加。来週発表される5月19日付の全米アルバム・チャートに再ランクインしそうなのだとか。

RCAと契約したチャイルディッシュ・ガンビーノは、Wolf + Rothstein/RCAから新作をリリース予定とされているが、RCAのプレスリリースによると、この“This Is America”は新作からの公式なファースト・シングルという位置づけではないとのこと。9月から10月にかけて全米ツアーを行うことが発表されており、年内の新作リリースへの期待が高まっているが、「チャイルディッシュ・ガンビーノの最後のアルバム」になるとされるニュー・アルバムがどのようなものになるのか、今後ますます注目が集まりそうだ。