T.I.のコンサート会場で死傷者を出す銃撃事件 NY市警長官のラッパー非難発言が波紋を呼ぶ

人気ラッパーのT.I.が公演を予定していたニューヨーク市のコンサート会場で4人の死傷者が出る銃撃事件が発生したことについて、ニューヨーク市警察のウィリアム・ブラットン長官による「ラッパーは暴力を賛美している」という発言が賛否を呼んでいる。
事件が起きたのはニューヨークのマンハッタンにある[Irving Plaza]という老舗のライブハウス。人気ラッパーのT.I.が公演を行う予定だった現地時間25日(水)夜、メイノー(Maino)とアンクル・マーダー(Uncle Murda)のラッパーふたりが前座を務めている中、主にVIPゲストのための場所として使われる、三階の「green room」で発砲事件が勃発。33歳の男性が腹部に銃弾を受けて死亡したほか、男性2名と女性1名がけがを負ったという。
けが人のひとりはニューヨークはブルックリンのラッパー、トロイ・エーヴ(Troy Ave)で、死亡した男性はトロイ・エーヴのボディガードだったという。足にけがを負ったトロイ・エーヴは、事件後近くの病院に運ばれたが、危険を加える行為および違法銃器の所持の疑いで逮捕された。監視カメラにトロイ・エーヴらしき人物が発砲している映像が映っており、事件との関連が疑われているが、事件の全容はまだ明らかになっていない。
この事件を受け、事件翌日にラジオ番組に出演したニューヨーク市警のブラットン長官は、「いわゆるラップ・アーティストというのは基本的にサグ(悪党、凶漢、チンピラなどの意味)であり、彼らは基本的に暴力を賛美している。残念ながらその暴力性は彼らのパフォーマンスの中でしばしば形となり、昨夜起こったことはまさにそういうことだ」とラッパー全体を非難し、また女性差別やドラッグの使用を助長しているとする発言をした。これには極論すぎるとの批判が相次いでおり、中でも、伝説的なヒップホップ・グループ、ランDMC(Run-DMC)のDMCは、デ・ラ・ソウル(De La Soul)やウィル・スミス(Will Smith)、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)など、非暴力的のメッセージを伝えるラッパーたちも多く存在すると反論。AP通信に対し、ブラットン長官が「ストリート出身のラッパー全員に謝罪すべきだ」と述べた。後にブラットン長官は代理人を通じて、ラップが伝えるストーリーの重要性を理解している、今回の事件がラップやヒップホップと結び付けられて語られているが、実際はそうではない、などと弁解する声明をAP通信に送っている。
なお監視カメラ映像では、トロイ・エーヴらしき人物がメイノーに向けて撃とうとしていると一部で報じられ、ふたりの敵対関係が問題だったのではとされたが、メイノーの弁護士はNew York Daily Newsに対し、「メイノーとトロイ・エーヴのふたりのラッパーの間に諍いはありませんし、これまでも一度もありませんでした」と否定する声明を発表している。加えてメイノー自身も、Instagramにトロイ・エーヴと一緒に写った写真を公開し、「いつもの馬鹿げた、真っ赤なウソが、メディアの中の無責任な奴らによって広まっている」などとコメント。この5年に渡って何度も共演しており、プライベートでも親しかったと述べている。また、今回の事件に巻き込まれた形となったT.I.は、「我々の音楽は、自分だけでなく他人も救うためのもの」と述べながら、被害者や遺族への祈りを綴っている。
WANTED: Info/witnesses regarding homicide at Irving Plaza in Manhattan. Call #800577TIPS. https://t.co/HuL0YszMK8 pic.twitter.com/hto8W6M42D
— NYPD NEWS (@NYPDnews) 2016年5月26日
Evacuated after shots fired while crowd waited for @Tip tonight at @IrvingPlaza pic.twitter.com/2hDT9qgO9t
— Diana Zuluaga (@dmz75) 2016年5月26日
Gunshots just went off at the T.I concert, never been so scared in my life pic.twitter.com/rn0CjpAuaU
— Marco (@markygeezy) 2016年5月26日
Rest In Peace Bro. God bless. pic.twitter.com/Vq6qFnq5bC
— T.I. (@Tip) 2016年5月26日