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ミックステープもグラミー賞の対象に? ファンの署名活動でグラミー側が検討を開始か

Grammy Awards

インターネットが当たり前のように日常的なものになり、音源を無料ダウンロードできる形で発表するアーティストも珍しくない時代となったが、「無料で発表された音楽でもグラミー賞の候補対象に」と嘆願する署名運動が注目を集めている。

プロモーションを目的に、元々はカセットテープから始まった“ミックステープ”は、主にヒップホップを中心に広がり、特に2000年代後半からは無料でダウンロードできる作品として定着。以前は他のアーティストのトラックを借用したり、カバーやリメイクが中心だったが、近年は全曲オリジナルで発表する例も少なくなく、これによってメジャー・レーベルとの契約を勝ち取ったり、後に有料販売するなど、アーティスト/レーベルにとってプロモーション戦略のひとつとして多く見られるようになった。近年は、ラップ・スターのドレイク(Drake)が、「ミックステープ」と銘打ちながら最初から通常のスタジオ・アルバム同様に販売した『If You’re Reading This It’s Too Late』など、無料で音楽を発表することから脱却する動きも見られるが、一方で、新人を中心に無料でのリリースは多く、また全曲無料で発表した作品を「アルバム」とアーティスト側が説明する例もあり、アルバムとミックステープの違いが曖昧になっている。

だが、グラミー賞においては、候補の対象になる資格があるのは、「アメリカにおいて一般的な流通形態で商業的にリリースされたもの」で、「有料で売り出され、購入できる作品であること」と規定されており、無料で音楽を発表している場合、アルバムであろうとミックステープであろうと、現状ではグラミー賞の候補にはなりえない状態となっている。

5月13日には、2013年に無料で発表した『Acid Rap』がさまざまなメディアの2013年のベスト・アルバム・ランキングで上位に選ばれるなど高く評価されたシカゴの若手ラッパー、チャンス・ザ・ラッパー(Chance the Rapper)が、カニエ・ウェスト(Kanye West)やジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)など豪華ゲストが参加した新作『Coloring Book』を無料で発表したが、このチャンス・ザ・ラッパーの新作リリースに合わせ、こうした無料作品もグラミー賞の対象に、と求める署名運動が音楽ファンによってスタート。チャンス・ザ・ラッパー本人もTwitterでこの署名運動についてツイートするなど応援の姿勢を見せ、話題となっている。

この署名運動は、「すべてのアーティストが無料で音楽を発表すべきということではない」と前置きしつつ、無料で音楽を発表しているアーティストたちは「購入する余力のない人たちにも届くようにしている」とし、グラミー賞を運営するレコーディング・アカデミーは、グラミー賞の候補対象から外すことでこうしたアーティストを「処罰している」と糾弾。世界最大のオンライン署名プラットフォームであるchange.orgで始まった署名運動は、5日前に始まったばかりだが、チャンス・ザ・ラッパーらアーティストたちも情報拡散に協力したこともあり、目標の3万5000人に対し、すでに2万8000人以上の署名を集めている。

こうした動きに対し、レコーディング・アカデミーは米Billboard誌に対して声明を発表。「グラミー賞における授賞選考プロセスは流動的であり、音楽同様に進化し続けています」と述べた上で、「毎春、音楽クリエイターたちがレコーディング・アカデミーのスタッフと共に準備をし、そこで提案された内容は委員会で吟味され、その後に結果がアナウンスされることになります。第59回グラミー賞の規定については今年6月に発表予定です」と説明されている。具体的に言及はされていないが、来年のグラミー賞に向けて検討する姿勢を見せたと思われる。グラミー賞は度々、授賞選考プロセスや規定の改正などを行っており、昨年のグラミー賞からは、「ソング・オブ・ザ・イヤー」などのソングライティング・カテゴリーではエントリーが認められなかったサンプリング楽曲も候補対象となるように変更されている。

一貫して無料で音楽を発表しているチャンス・ザ・ラッパーは、2013年の『Acid Rap』でのブレイク以降も数々のメジャー・レーベルからのオファーを断っており、「(レーベルとの契約は)する理由がない。もう終わった産業だし」とインディペンデントで活動を続けているが、昨年はインディのアーティストで初めて人気TV番組『Saturday Night Live』にも出演を果たしている。また、過去のインタビューでは、「俺の『Acid Rap』はみんなにこう問いかけている。全てオリジナルの楽曲で、これだけの感情が込められていて、これだけ多くの人とつないでくれている作品だったら、それは“ミックステープ”なのだろうか? そもそもこの時代、“アルバム”って何? 俺が販売していないからって、それは公式リリースじゃないの? だったら俺はこれからも商業アルバムは出さないかもよ。ツアーで金を稼ぐだろうね」と、有料でのリリースに拘らないと発言しており、音楽業界の既存のスキームに頼らないチャンス・ザ・ラッパーの活躍は様々な分野から注目を集めている。