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MOSES SUMNEY interview / 「人間同士のコネクションとアイソレーションを表現している」

ソランジュ、ジェイムス・ブレイク、スフィアン・スティーヴンス、ボン・イヴェール、ベックなど様々なアーティストたちがその才能を認める鬼才、モーゼス・サムニー。どこか謎めいて、神秘的な彼が、デビュー・アルバム『Aromanticism』を引っ提げて今年6月に初来日公演を行った。ルーパーを使った多重録音でのソロ・ステージで圧巻のパフォーマンスで魅せたこの男が、いよいよ今月9日(火)、今度はバンドで再来日。このタイミングで、初来日公演前日に行われたインタビューをお届けする。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) ライブ写真/古溪一道 Kazumichi Kokei

(⇒ P1より)
『Aromanticism』に話を戻そう。彼が描こうとする世界観について、ミュージック・ビデオの側面から話を聞いていく。彼はこれまで一貫して、アリー・アヴィタル(Allie Avital)という女性ディレクターと共に映像を作ってきた。

彼女は変なものが好きなんだ(笑)。でもビデオ制作でそういう人と出会うのはなかなか難しいんだよね。変なことやろう!って言うと彼女はもっと変なふうにしてくれる。彼女がおかしなアイディアを提案すれば、僕がもっと奇妙な風にする。そういうことができるのは本当に貴重。僕らは世界を似たような形で捉えているんだと思う。だからずっと一緒にやっているよ。

僕らはアルバムの世界観を視覚的に表現するという意味で共通する視点を持っていたと思う。それを簡単に説明すると、人間同士のコネクション(繋がり)。どういう繋がり方があるかっていうのを探求すると共に、コネクションだけじゃなくアイソレーション(孤立)についても表現している

頭のないモーゼスが宙に浮いた、『Aromanticism』の不思議なアートワークについても、このテーマが根底にあるという。

それもまた、コネクションについて違う形で表現しようとしたものと言えるのかな。アートっておもしろいよね。ビデオを撮ったり、曲を書いたり、写真を撮ったりして、自分ではそれぞれ違うストーリーを語っているように思えるけど、実は同じストーリーを何度も何度も表現しているようになってるんだから

ミュージック・ビデオもまた、モーゼス・サムニーのアートを表現した作品となっているが、その着想源について、彼はこう語る。

曲を書く時に時々、色が浮かぶんだ。“Doomed”を書いていた時はブルー。“Quarrel”はブラウンとレッド。

基本的にはアルバムが完成するまで映像のアイディアなんてものは無かったけど、でも“Doomed”の場合はブルーが浮かんだから、水の中にいるようなイメージがあって。水のタンクの中に閉じ込められている映像が浮かんで、それをアリーと発展させたんだ。

ビデオについては、そんな風に僕のアイディアをアリーが発展させる場合もあるし、アリーが曲を聴いて浮かんだアイディアを持ってくることもある。“Doomed”と“Quarrel”については僕のアイディアが元になっていて、“Doomed”は水の中に閉じ込められる、“Quarrel”は馬、っていうのがあったんだ

ちなみに“Make Out In My Car”を書く時に浮かんでいたものは?と訊くと、「ホンダシビック(笑)。ミッドナイトブルーの」と返答があった。

“Quarrel”は、彼の言うとおり馬が登場するミュージック・ビデオだ。Berlinde de Bruyckere(モーゼス本人も「発音は分からない(笑)」)というコンテンポラリー・アーティストによる、馬の死体を使った作品「No Life Lost II」もフィーチャーされている。最後のシーンで、馬に囲まれながらモーゼスが空へと吊るされ、彼の影が次第に馬の形になるという終わり方も印象的な映像だ。

僕が演じているキャラクターは一見すると馬が好きな人間なんだけど、フェティッシュの側面のある人物で、馬が好きなあまりに殺してしまう。メインの馬がそのことに気づいて、罰を与えるんだ。そこまで馬が好きなんだったら、馬になってしまえ、と。だからあの影の形が変わるという演出は、僕が人間から馬へと変わっていくことを表現しているんだ

人魚を救うも、最後は人魚に海に引き摺り込まれてしまう、という“Lonely World”のストーリーは、アリーの発案だ。

大体どのビデオも僕が死んで終わるよね(笑)。後で気づいたことだけど(笑)。

あれはほとんどアリー・アヴィタルのアイディアで。彼女は本当に素晴らしい。ここで語られているのは、時に、救われたくないって思っている人もいるということ。そして(劇中の)僕も、相手に対して助けてほしいのか聞かずに、勝手に助けた。最後のシーンは、相手には海に戻りたいという意思があって、それで僕を引き連れて海に戻っていくという演出なんだ

時間切れになったところで、ちょうどインタビュー直前に行われたボナルー・フェスでボン・イヴェールのステージに立った時のことについて訊ねた。シャーデーの“By Your Side”を共にカバーしたのだ。

ジャスティン(・ヴァーノン)に一緒に歌ってほしいと言われて、それで3曲候補を出したら、ジャスティンがあの曲を選んだんだよね。僕はシャーデーが大好きだし、彼もあの曲を知っていたから。他の2曲はボン・イヴェールの曲だよ。

あれはぶっつけ本番だったんだ。もちろんジャスティンはバンドとリハーサル済みだったけど、僕は飛行機で現地へ向かって、あのステージで初めて一緒にやったんだよ

キャリア初期にはジェイムス・ブレイク“Lindisfarne”を歌ったりとカバーも少なくないだけに、来日公演でもカバーは聞けるだろうか?と軽い気持ちで言ってみたところ、「おっと。考えておくよ。予定してなかったけど、考えておいたほうがいいかな(笑)」と笑っていたモーゼス。その発言どおり、当日はエイミー・ワインハウスの“I Heard Love Is Blind”をその美しい声で歌い上げていた。

それにしても、たった独りでのステージでスタンディングオベーションの巻き起こる圧巻のパフォーマンスで魅了したこの男が、バンドと共にやるとどうなるのか? 期待が高まらざるを得ないバンド・セットでの再来日公演は、10月9日(火)に渋谷WWW Xで行われる

モーゼス・サムニー来日公演
日時:2018年10月9日(火)開場19:30 / 開演20:30
会場:渋谷WWW X
価格:オールスタンディング ¥6,800(税込 / 別途1ドリンク)

>> 6月の初来日公演でも披露された“Rank & File”を含む最新EP『Black In Deep Red, 2014』全曲フル試聴

>> ジェイムス・ブレイク、スフィアン・スティーヴンス、アレックス・アイズリーらによる“Make Out In My Car”のニュー・バージョンを収録した『Make Out In My Car: Chameleon Suite』全曲フル試聴

・6月の初来日公演のセットリストを再現したプレイリスト