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MOSES SUMNEY interview / 「人間同士のコネクションとアイソレーションを表現している」

ソランジュ、ジェイムス・ブレイク、スフィアン・スティーヴンス、ボン・イヴェール、ベックなど様々なアーティストたちがその才能を認める鬼才、モーゼス・サムニー。どこか謎めいて、神秘的な彼が、デビュー・アルバム『Aromanticism』を引っ提げて今年6月に初来日公演を行った。ルーパーを使った多重録音でのソロ・ステージで圧巻のパフォーマンスで魅せたこの男が、いよいよ今月9日(火)、今度はバンドで再来日。このタイミングで、初来日公演前日に行われたインタビューをお届けする。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) ライブ写真/古溪一道 Kazumichi Kokei

モーゼス・サムニー。彼の音楽をひと言で説明するのは難しい。ソランジュやコリーヌ・ベイリー・レイの近作に参加する一方で、ベックやサンダーキャットの公演で前座を務め、ジェイムス・ブレイクやスフィアン・スティーヴンス、ボン・イヴェールらと共演する。彼は、2017年9月に発表したデビュー・アルバム『Aromanticism』について、「ただ奇妙なものを作りたいと思った」と話してくれた。

サンダーキャット、キャム・オビ(SZA)、ルーヴィク・ゴランソン(チャイルディッシュ・ガンビーノ)なども参加した『Aromanticism』は、Bandcampによる2017年の年間ベスト・アルバム・ランキングで1位となったほか、Pitchforkで年間6位、Spinで年間10位に選ばれるなど高い評価を集めた。そして今年6月15日(金)に東京はキリスト品川教会のグローリア・チャペルにて初来日公演を行い、その無二の才能を遺憾なく発揮した男が、今度はバンド編成で帰ってくる。10月9日(火)に渋谷WWW Xで行われるこの再来日公演を前に、6月の初来日時に行った彼へのインタビューをお届けしたい。

まず話をしたのは、完全にひとりでステージに立つソロ・パフォーマンスについて。近年はバンドと共にツアーをしている印象だが、元々はルーパー/ループペダルを使った多重録音でのパフォーマンスからそのキャリアを始めた。

この1年くらいは確かにバンドと一緒にやっているけど、今でも3ヵ月に1回とか、たまにソロ・ショウをやっているんだ。そうすると自分がシャープでいられるから。

自分にとって他の人たちと演奏するのは難しいことだった。大学(UCLA)に入った頃は楽器が弾けなかったから、バンドに入らざるを得なくて。でも自分の音楽をやりたいと思った時、ひとりでやるようになった。バンドを常に全員連れて歩けないし。それだと(バンドメンバーを)囚人状態にしちゃうからね(笑)。それで、ギターは多少は弾けたから、ループペダルを使って足りないところを補うって方法に行き着いたんだ

その多重録音のパフォーマンスでは、声もひとつの楽器となる。ボーカリストとして影響を受けたアーティストは?との質問に迷いなく真っ先に挙がったのは、エラ・フィッツジェラルドの名前だった。

エラ・フィッツジェラルドが初期に影響を受けたアーティストだね。あとはインディア・アリー、……(しばらく考えながら)、アッシャー、他には……スティーヴィー・ワンダーとか。

でもクワイアで歌ってた経験が大きいかな。子供の頃から声が高くて、その高さをキープしたいと思って練習しているうちに、ファルセットを活用するようになった。

クワイアではバス担当だったんだ。アルバムでも低く歌っているのを聞くことができるよ。僕のボーカルだけになっている1曲目の“Man On The Moon (Reprise)”とか。“Plastic”にもそういう瞬間がある

クワイアと言えば、6月の初来日公演に選ばれたのは教会だ。「教会でやる最大の理由は、静かだから。スピリチュアルでもあるし」と話すが、静謐な空間を彼の歌声が彩っていくさまには、神々しさすら感じた、というのは決して大げさな表現ではないだろう。

続いて、『Aromanticism』について話を聞いていく。レディオヘッドからの影響を感じる、という指摘はよく見かけるし、実際にソロでのライブでカバーを披露するなどレディオヘッドのファンではあるが、そういった指摘に本人はピンと来ないようだ。

どうだろ。分からないな(笑)。ただ僕は奇妙なものを作りたいと思っただけで。そうだとしたら(影響を受けているのだとしたら)無意識だね。レディオヘッドのスペースのある感じは好きだけど

アルバムには様々なミュージシャンやプロデューサーたちが関わっているが、スタジオに来てもらって実際に演奏してもらったミュージシャンに対しては、ざっくりとしたオーダーを伝える程度だったという。

こんなことをやってほしいという“ボックス”で希望を出して、その“ボックス”の範囲内だったら好きにやってもらっていい、そして出来上がったものを自分で編集するという感じ。大体は、オーダーするにしても、『エモーショナルにしたい』とか、『速く』とか『重く』とかそんな感じかな

中でも、“Lonely World”でのサンダーキャットの演奏は「自分の想像を超えるものになった」いい例だと挙げる。

サンダーキャットは“Lonely World”で演奏してくれたけど、スタジオに来てくれて。彼は、事前に曲を聞かせようとしたら『聞かせないでくれ』って言って、その場で曲を聞きながらそれに合わせて演奏していったんだ。イントロのところなんかは完全に彼のインプロビゼーションだよ。あれは、自分の想像を超えたものになった、まさにいい例だね。

“Lonely World”のドラムも自分が考えていたよりはるかにいいものになった。イアン・チャンというドラマーだ

参加した面々は、LAで活動を続けてきた中で知り合った友人が中心。「そのほうが気楽にメールや電話で参加をお願いできるから(笑)」と振り返る。一方、“Make Out In My Car”の様々なバージョンを収録したEPでは、ジェイムス・ブレイクやスフィアン・スティーヴンスに加えて、アレックス・アイズリーも参加しているが、アレックスとは面識はなかった。

アレックス・アイズリーとは今回が初めてだったんだけど、7年ぐらい前から彼女の大ファンだったんだ。彼女がLAで長年活動をしてきたのを見てきて。彼女はとても素晴らしいよね。R&Bシンガーであり、アーティストであり、自分の音楽をセルフ・プロデュースしているプロデューサーでもあり。アイズリー・ブラザーズのメンバー(アーニー・アイズリー)の娘でもあり。それはともかくとして、彼女とぜひ一緒にやりたいと思っていたから、快諾してもらえた時は本当に嬉しかったよ

スフィアン・スティーヴンスとは、今年3月に開催された第90回アカデミー賞の授賞式の舞台で『君の名前で僕を呼んで』の主題歌“Mystery Of Love”のパフォーマンスに参加したことも記憶に新しいところ。

あれは楽しかったよ。傍観者でいられてハッピーだった(笑)。時には主役じゃなくてバックなのもいいものだね。でもあっという間だったよ。面白かった」(⇒ P2に続く)

 

モーゼス・サムニー来日公演
日時:2018年10月9日(火)開場19:30 / 開演20:30
会場:渋谷WWW X
価格:オールスタンディング ¥6,800(税込 / 別途1ドリンク)

・6月の初来日公演のセットリストを再現したプレイリスト