bmr

bmr>FEATURE>KANDACE SPRINGS interview / 「カリーム・リギンスはオールド・ソウルな感覚を持ちつつ、ニュー・スクールなこともできる」

FEATURE

KANDACE SPRINGS interview / 「カリーム・リギンスはオールド・ソウルな感覚を持ちつつ、ニュー・スクールなこともできる」

晩年のプリンスから「雪をも溶かす(ほどの温かい)歌声」と称賛され、名門Blue Note Recordsからデビューを飾ったシンガー・ソングライター、キャンディス・スプリングス。彼女が届ける2作目のフル・アルバム『Indigo』は、なんとカリーム・リギンス全面プロデュース作。ロイ・ハーグローヴやクリス・デイヴ、エレーナ・ピンダーヒューズらも参加した同作を9月7日にリリース、11月には来日公演も控えるキャンディスが、この注目の新作、そして以前のインタビューで明かしていた「ペイズリー・パークで録音した」音源の行方などについて語る。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/押野素子 Motoko Oshino Matthews

ペイズリー・パークでレコーディングした曲は、個人的な持ち物として私が持ってる。分かるでしょ、プリンスのエステートがいかに厳しいか(笑)

(⇒ P2より)
ロジャース&スターケンとは、ロイ・ハーグローヴやロバート・ハーストが演奏で参加したゴージャズなジャズ・バラード“Unsophisticated”や、クリス・デイヴがドラムを叩き、ミゲル・アトウッド・ファーガソンが弦アレンジを担当した“Fix Me”なども生み出した。

また、日本盤ボーナストラックには、ロジャース&スターケンが送り出したションテルの10年前のアルバム『Shontelligence』に収録されていた“Cold Cold Summer”をリメイクした“Cold Summer”も。もっともキャンディス自身は原曲の存在を知らなかったが……。前作においても、カバー曲について「教えてもらうまでは知らなかった」と取り繕うことなく回答していた彼女らしい。

『Soul Eyes』の前に発表したデビューEP『Kandace Springs』は、ポップ&オークらが参加するなどR&B~ヒップホップ色の強い作風だったが、アルバム制作に行き詰まり、プリンスからの助言もあって、『Soul Eyes』では一転してそういうテイストからは離れ、「プロダクションより歌声が核になるよう」なアルバムにした、という背景がある。キャンディス自身も、「確かに当時はヒップホップだったり、実験的な方向性だった。今よりもっと、クロスオーバーなものを目指していた」と当時振り返っていたが、『Indigo』でのクロスオーバー性は、かつて彼女が目指していた方向性なのだろうか?

確かにそう言われてみると、いくつかの曲はそんな感じがする。6~7年前に書いた曲もいくつか入っているからね。“Piece of Me”や“Love Sucks”、“Unsophisticated”なんかは、“Forbidden Fruit”とかあのEPに入っていた曲と同じ頃に書かれたものだし。これで意味、通ってるかなあ? これ、初めて話す事実だからね(笑)

そして本作におけるもっとも古い曲は、実の父ケネス“スキャット”スプリングス(Scat Springs)とのデュエットとなる“Simple Things”。アレサ・フランクリンやチャカ・カーン、マイケル・マクドナルド、フェイス・ヒルなど様々な著名アーティストのコーラスも務めてきたセッション・シンガーである彼は、ロバータ・フラックやシャーデー、ニーナ・シモン、エラ・フィッツジェラルド、ルーサー・ヴァンドロスなどを教え、キャンディスに多大な影響を与えた存在。

“Simple Things”は元々は、彼女がまだデビュー前、17歳の時に父とレコーディングした未発表アルバムにあった音源だ。『Indigo』本編を飾るこの曲は、脳卒中で倒れてしまい、以来歌えなくなった父親に捧げるもので、当時の音源からルーサーを思わせる彼の歌声を抽出し、新たにアレンジを施した。

父が私をプッシュしてくれたおかげで、私はアーティストになれたの。あらゆる意味で、彼がいなければ私は存在しなかったってこと(笑)。彼のおかげで私はエラやニーナを聴くようになり、こうしたアーティストから影響を受けて曲を書くようになった。16歳か17歳の頃にこの曲を書きはじめた時、父から『一緒にアルバムを作ろう』って言われたの。リリースはされていないアルバムだけど、そのうちリリースしたいと心から思ってる。これについてはドン・ウォズともう少し話さないと。

それでも、“Simple Things”を今回入れることができたのは、すごい嬉しい。父とレコーディングした当時は、ビートみたいなテンポが入ってたから、父はテンポよく歌ってるでしょ。You can give a girl diamond ring, you can give her all the world can bring♪ってね(歌いだす)。一方、私はテンポに合わせることなく自由に歌っている。

それから、当時の父のボーカルを使ったのは、父が数年前、脳卒中で倒れたからなの。そうでなければ、実際にスタジオで歌ってもらったんだけど。だから、彼のボーカルを当時のレコーディングから抜き出して、こうしてみんなに父の声、トーン、テクスチャーを聴いてもらえることに、ちょっとグッと来ちゃう。父のおかげで、私はこうやって今、音楽をやってるわけだし。父は回復しようと、毎日頑張ってる

未発表、と言えば。前回のbmrのインタビューでは、あの[Paisley Park Studios]で、プリンスが亡くなる3ヵ月前、2016年1月に「3曲ほど」レコーディングしたと話してくれていたが、あれはどうなったのだろうか?

うん、(レコーディングは)したした(笑)。でも、分かるでしょ~、プリンスのエステートがいかに厳しいか(笑)。レコーディングした曲は、私が持ってる。個人的な持ち物として、自分の音楽の中に入っているんだけど、ほんの数人に聴かせただけなの。プリンスにも聴かせたはず。でも、彼(プリンス)も私と同様、曲の一部を所有してるわけだから、誰にも渡してはいない。法的な問題があるからね。でも、この曲を発表できたら本当に嬉しいな。たくさんの人が聴きたいと思うだろうし

ところで、表題曲となるインタールード“Indigo (Pt. 1)”、“Indigo (Pt. 2)”には、アリシア・キーズやアンソニー・ハミルトンからエミネムまでを手がけるマーク・バトソン(Mark Batson)が関わっている。

スタジオで曲を書いていた時、私がラフマニコフかなにかを弾いてたら、プロデューサーのマーク・バトソンが、『ニーナ・シモンみたいにクラシック弾いてて、すごいクールだな』って言ってきて、『俺がクールなビートをそこに入れてやる』って、私のピアノをチョップアップして、すごくクールなものにしてくれたの。すごくクールなヴァイブがあったから、私がフリースタイルで『インディゴ、インディゴ』って言いながら、You are my high when I’m lost in a shade of indigo♪って歌いだしたら、マークに『いいぞ、その調子だ』って言われて。こうして、曲になっていったの

このアルバム・タイトルになった『Indigo』は「エキゾチックな花」としてのインディゴを表すという(天然藍=インド藍のことだろう)。

タイトルにはいくつか理由があるんだけど、インディゴってエキゾチックな花で、美しい色をしてるでしょ。

それから、私は生まれも育ちもナッシュビルなんだけど、ナッシュビルにインディゴってクラブがあって。20代前半の頃、フルタイムで音楽活動をやるべきか、ちょっと迷ってた時があって……ちょっと壁につき当たってたというか。その時、インディゴで歌ってみなよって友達に言われて、そこで歌ってみたら、すごくインスパイアされて、人々の愛も感じることができて、音楽をフルタイムで頑張ろうって思えたのね。こうした理由から、アルバムのタイトルを『Indigo』にしたの

自身に最大の影響を与えた父とのデュエット曲を本編最後に置き、アルバム・タイトルには転機となった場所を冠する……“Don’t Need The Real Thing”がリード曲だったこともあって、クロスオーバーに転換した印象を与える『Indigo』だが、キャンディス・スプリングスは変わらず地に足のついた女性だということが分かる。

そして最後に、11月に控える来日公演への意気込みを語ってもらった。彼女にとっては日本で初となるホール・ツアーとなる。

もちろんクラブもいいけど、ホールとなるとさらに多くのお客さんに向けてショウをやり、サウンドも良くなるはず。ホールには、そういうマジックがあるの。来日公演をする頃には、お客さんが新曲に馴染んでくれてるといいなあ。日本のお客さんの応援には、心から感謝してる。みんなのことが大好き! 好きな場所はどこ?って訊かれた時は、日本!って答えてるし

★プロモーション来日決定!
『Indigo』発売記念イベント(ミニ・ライブ&サイン会)
日時:2018年9月13日(木)19時~
場所:タワーレコード渋谷 7Fイベント・スペース

VOGUE FASHION’S NIGHT OUT 2018 TOKYO スペシャル・ライブ
日時:2018年9月15日(土)12時~
場所:表参道ヒルズ 本館B3F スペース オー

11月に来日公演決定!
■ 東京公演
日時:2018年11月27日(火)18:30 open/19:00 start
会場:東京国際フォーラム ホールC
価格:¥8,500([全席指定]/税込)

■ 大阪公演
日時:2018年11月28日(水)18:30 open/19:00 start
会場:サンケイホールブリーゼ
価格:¥8,500([全席指定]/税込)※入場時にドリンク代別途必要

Kandace Springs - Indigo
『Indigo』tracklisting:
1. Don’t Need The Real Thing [prod. by Karriem Riggins & Jimmy Harry]
2. Breakdown [prod. by Jamie Hartman]
3. Fix Me [prod. by Karriem Riggins]
4. Indigo, Pt. 1 [prod. by Karriem Riggins]
5. Piece Of Me [prod. by Karriem Riggins]
6. 6 8 [prod. by Karriem Riggins]
7. Indigo, Pt. 2 [prod. by Karriem Riggins]
8. People Make The World Go ‘Round [prod. by Karriem Riggins]
9. Unsophisticated (feat. Roy Hargrove) [prod. by Karriem Riggins]
10. Black Orchid [prod. by Karriem Riggins]
11. Love Sucks [prod. by Evan Rogers & Carl Sturken / co-prod. by Jimmy Hogarth]
12. The First Time Ever I Saw Your Face [prod. by Karriem Riggins]
13. Simple Things (feat. Scat Springs) [prod. by Evan Rogers & Carl Sturken]

[Japanese bonus track]
14. Cold Summer [prod. by Karriem Riggins]