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KANDACE SPRINGS interview / 「カリーム・リギンスはオールド・ソウルな感覚を持ちつつ、ニュー・スクールなこともできる」

晩年のプリンスから「雪をも溶かす(ほどの温かい)歌声」と称賛され、名門Blue Note Recordsからデビューを飾ったシンガー・ソングライター、キャンディス・スプリングス。彼女が届ける2作目のフル・アルバム『Indigo』は、なんとカリーム・リギンス全面プロデュース作。ロイ・ハーグローヴやクリス・デイヴ、エレーナ・ピンダーヒューズらも参加した同作を9月7日にリリース、11月には来日公演も控えるキャンディスが、この注目の新作、そして以前のインタビューで明かしていた「ペイズリー・パークで録音した」音源の行方などについて語る。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/押野素子 Motoko Oshino Matthews

ジョニ・ミッチェルなどを手がけたことで知られる名匠ラリー・クラインのプロデュースによる2016年のデビュー・アルバム『Soul Eyes』がモノクロームの持つシンプルな美しさを表現したような作品だとしたら、2年ぶりの新作『Indigo』はまさに色鮮やか。前作の彼女のイメージを踏襲する部分もあるが、彼女の新たな一面も輝くアルバムだ。

この『Indigo』のメイン・プロデューサーを担ったのは、カリーム・リギンス(Karriem Riggins)。90年代後半からコモン、スラム・ヴィレッジ、ザ・ルーツ、タリブ・クウェリ、エリカ・バドゥらの作品を手がけてきたのはヒップホップ・プロデューサーであり、ポール・マッカートニーやダイアナ・クラールからも声がかかる売れっ子ベテラン・ドラマーでもある。しかし特に近年、カニエ・ウェスト『The Life Of Pablo』やケイトラナダ『99.9%』への参加、そしてロバート・グラスパーと共同プロデュースしたコモンの2016年作『Black America Again』、このコモン、ロバート・グラスパーとの3者でオーガスト・グリーンを結成するなど、活躍が目覚ましい存在だ。

今、ノリにノっているカリーム・リギンスが全面プロデュースを手がけるキャンディス・スプリングスの新作『Indigo』が9月7日に発売される。来週にはプロモーション来日を行い、11月に来日公演も控える中、彼女がbmrのインタビューに応じてくれた。2年前の初来日時、関係者が多いコンベンション・ライブでも「いつもポジティブに、楽しむように心がけている」と緊張を見せることなく、その時行ったインタビューでは豪快に笑い声を上げる姿も見せた、快活でフランクな彼女の笑顔が浮かぶようなキャンディスの発言をお届けする。

カリームは、オールド・ソウルな感覚もきちんと持ちながら、それと同時にニュー・スクールなこともできる。あらゆることができる万能なプロデューサー

まずは、メイン・プロデューサーとなったカリーム・リギンスについて。

エヴァン・ロジャースとカール・スターケンが彼のことを知っていて、彼らに紹介されたの。Blue Note Recordsのドン・ウォズも彼のことを知っていたし。彼を選んだ理由は、ええと、何て言えばいいかな? 彼は幅広いカラーを持ってるでしょ? ジャズもできれば、ヒップホップ、ソウル、ゴスペル、ブルースもできる。

それに、私が大好きなダイアナ・クラールのドラムをやってたことも大きいかな。プロデュースの実績も素晴らしいし。実際に会ってみたらウマも合ったし、彼もこのプロジェクトに乗り気だったから、メイン・プロデューサーに選んだの

キャンディス・スプリングスを発掘した(リアーナやハヴィエアーを発掘したことでも知られる)ロジャース&スターケン(Evan Rogers & Carl Sturken)は、R&Bやポップスのプロデュースで知られるコンビだが、彼らのルーツがジャズにあるのは以前のインタビューでカール・スターケンが語ってくれたとおり。

そのインタビューでも触れた、ロジャース&スターケンが手がけたハヴィエアーの美しいジャズ・バラード“October Sky”(2003年のデビュー作『Javier』収録)でドラムを叩いていたのは他ならぬカリーム・リギンスだった……ということを思い出させる。そしてそこでトランペットを吹いていたのは、同じく『Indigo』に参加しているロイ・ハーグローヴである。

キャンディスが実際にカリーム・リギンスと顔を合わせたのは、去年の夏だという。その初対面の場は、ダイアナ・クラールのコンサートだった。

カリームが、私とプロデューサー(ロジャース&スターケン)をロサンゼルスの[Hollywood Bowl]に招待してくれて、バックステージで彼女に会わせてくれたの。ダイアナがオーケストラと一緒に歌って、カリームがダイアナと一緒にステージで演奏しているのを見て、『ああ、もう彼で決まり!』って思った(笑)。私としてはとにかく、彼がダイアナ・クラールと仕事をしたって事実だけで充分だった(笑)。私は彼女のことが大好きで、彼女の音楽を聴いて育ったから

カリーム・リギンスに求めた役割は?という質問にキャンディスはこう答える。

前作は素晴らしかったし、私たち(キャンディスとロジャース&スターケン)もすごく気に入っていたし、あれが当時の私を表現していたと思う。でも、さらにレベルを上げる必要があったの。ええと、もう少しポップにするっていうか。うまい表現の仕方が分からないけど、もう少々インパクトをつけるというか。

それと同時に、私自身にも誠実なアルバムを作らなきゃと思ってた。ギミックっぽいサウンドじゃなくて、楽器をきちんと使ってね。あ、もちろんギミックっぽいサウンドが悪いって言ってるわけじゃなくて、私自身が、エラ・フィッツジェラルドとかニーナ・シモンとか聴いて育ってるオールド・ソウルだから! カリームは、こうしたオールド・ソウルな感覚もきちんと持ちながら、それと同時にニュー・スクールなこともできるでしょ? あらゆることができる万能なプロデューサーだからね。

私も彼も、ミュージシャンも、みんなすごい良い雰囲気で仕事ができた。参加してるミュージシャンもすごいでしょ。例えばロバート・ハースト。彼はダイアナとも仕事をしていたベーシスト。それから、ロバート・グラスパーとの仕事で知られているバーニス(・トラヴィス)。それからギターでは、アンソニー・ウィルソンとジェシー・ハリスね

また、キャンディス同様にロジャース&スターケン率いるSRP所属でもあるエレーナ・ピンダーヒューズ(Elena Pinderhughes)の参加について、彼女は熱く語る。

あと、エレーナ・ピンダーヒューズっていう、将来有望なすごい才能の女性も参加してくれたの。彼女に会ったことある? 会ったほうがいいからね!! ハービー・ハンコックのツアーでフルートを吹いたって言えば、才能があるって分かるでしょ? “6 8”でフルートを吹いているの。ええとそれから、“Black Orchid”では少しだけバックグラウンドで歌ってくれてる

“6 8”と言えば、ニューヨークの鬼才ガブリエル・ガルソン・モンターノの出世曲のリメイク。オリジナルは、ドレイクが2015年の大ヒット作『If You’re Reading This It’s Too Late』に収録された“Jungle”でサンプリングしたことで有名になった曲だ。

誰のアイディアか知ってる? これこそ、カリーム・リギンスのアイディアよ! 彼がデモを持ってきてくれて。もう曲は揃っていて、アルバムはほぼ完成って感じだったんだけど、彼が『BAM!!!』ってこの曲を持ってきたの(笑)。聴いてみてくれってね。エヴァンが曲を聴いて、私に『オー・マイ・ガー。いいから聴いてみろ』って言うから、『オーケー、はいはい』なんて言いながら私も聴いてみたら、『オー・マイ・ガー!』(笑)

そして、私たちはスタジオに入った。ベースにバーニス、フルートにエレーナ……彼女ほんとに凄いからね(笑)、そしてドラムにカリーム、ピアノに私って布陣で、ガッツリ演奏したわよ(笑)。私はこの曲を知らなかったから、私はコードを覚えて弾きはじめ、カリームはずっとテープを回しっぱなしにしていたの。そしてそれを素晴らしい楽曲に仕上げてくれた。大好きな1曲。この曲のビデオも作ったから、もうすぐ出るからね(※取材が行われたのは8月下旬)」
P2「“Piece Of Me”ではシャーデーっぽい雰囲気を狙った」へ⇒)

★プロモーション来日決定!
『Indigo』発売記念イベント(ミニ・ライブ&サイン会)
日時:2018年9月13日(木)19時~
場所:タワーレコード渋谷 7Fイベント・スペース

VOGUE FASHION’S NIGHT OUT 2018 TOKYO スペシャル・ライブ
日時:2018年9月15日(土)12時~
場所:表参道ヒルズ 本館B3F スペース オー

11月に来日公演決定!
■ 東京公演
日時:2018年11月27日(火)18:30 open/19:00 start
会場:東京国際フォーラム ホールC
価格:¥8,500([全席指定]/税込)

■ 大阪公演
日時:2018年11月28日(水)18:30 open/19:00 start
会場:サンケイホールブリーゼ
価格:¥8,500([全席指定]/税込)※入場時にドリンク代別途必要

Kandace Springs - Indigo
『Indigo』tracklisting:
1. Don’t Need The Real Thing [prod. by Karriem Riggins & Jimmy Harry]
2. Breakdown [prod. by Jamie Hartman]
3. Fix Me [prod. by Karriem Riggins]
4. Indigo, Pt. 1 [prod. by Karriem Riggins]
5. Piece Of Me [prod. by Karriem Riggins]
6. 6 8 [prod. by Karriem Riggins]
7. Indigo, Pt. 2 [prod. by Karriem Riggins]
8. People Make The World Go ‘Round [prod. by Karriem Riggins]
9. Unsophisticated (feat. Roy Hargrove) [prod. by Karriem Riggins]
10. Black Orchid [prod. by Karriem Riggins]
11. Love Sucks [prod. by Evan Rogers & Carl Sturken / co-prod. by Jimmy Hogarth]
12. The First Time Ever I Saw Your Face [prod. by Karriem Riggins]
13. Simple Things (feat. Scat Springs) [prod. by Evan Rogers & Carl Sturken]

[Japanese bonus track]
14. Cold Summer [prod. by Karriem Riggins]