インタビュー [FEATURE]

ヒップホップ東京代表、DJ KEN-BO! ロングインタビュー第3弾

東京発、多彩な選曲と見事な流れを作ってみせるDJ。その力量で頭抜けた存在であり続けるDJ KEN-BOのロングインタビュー第3弾、彼にとってのヒップホップとは? クラブDJとしての才能を開花させた男がそこに到達した秘密とは? photo: Yoko Yamashita(SLANGinc)

ヒップホップ東京代表、DJ KEN-BO! ロングインタビュー第3弾

オレはいい意味で放っておかれたから、音楽を見つけられた。

bmr.jp:これまでお話してきたように、いろんな音楽を聴いていろんな曲をかけるわけですが、自分のことをヒップホップDJだと思いますか?

(即答して)思う。思うね。あの、「(ジャンルじゃなく)いい音楽をかけるDJ」っていう考え方にオレは超賛成なんだけど、が、しかし、やっぱりヒップホップだと思う。やっぱりオレはヒップホップのDJだと思うよ。普段は「オレはB-Boyじゃないからさー」とかも言うけど、やっぱりB-Boyだなーと思う、オレは。態度とか服装だけじゃないよ。なんでかというと、「ヒップホップ的な価値観とかかっこよさ、そういうのがあるから好きなんじゃん」っていう結論になるから。

アーバンなヒップホップっていうのはさ、カフェっぽいハウスとかさ、Naked MusicとかOm(※)みたいなものとすごく近いものだとオレは思ってるわけ。ネイティブ・タン、トライブとか後、ザ・ルーツ(the Roots)とかみたいのだったり。それってつながってることなんだけど。

※いずれもアメリカ西海岸をベースにするハウスミュージックを中心としたレーべル。

bmr.jp:感覚というか考え方というか…

そう、考え方とか方法論……、まあ文化とかって大それた言い方も違うっていうか、ま、文化なんだけど……。

bmr.jp:KRSワン(KRS-One)とかが言うような大上段から「ヒップホップはカルチャーだ!」みたいな言い方ではないってことですよね。

そう、オレの個人的な解釈では、B-BoyのBは"Be Myself"みたいな部分のBだと考えてる。自分らしくやる。ヒップホップって言う音楽がすごく好きで、ライフスタイルとかもすごく影響受けて。これだって定義する必要とかなくて、自由であっていいと思う。

さかのぼると、自分がヒップホップの仕事で食って行ってもいいなと思ったのは、やっっぱりネイティブ・タンが出たからなんだよな。オレはラップというものをグランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス5の"Message"っていう曲で、初めて聴いたわけ。小2、小3くらいの時だな。いいと思ったし、すげーかっけーと思ったけど、それが職業とかっていうことにはつながらなった。その後、小6、中1とかでDJっていうものに触れ出して、音楽に関わっていたいって思うようになってから、トライブとかが出てきて。「あ、オレもそういう仕事していいんだな」って思ったのね。それまで、パブリック・エネミー(Public Enemy)とかエリックB&ラキム(Eric B. & Rakim)LLクールJ(LL Cool J)、フーディニ(Whodini)とかいろいろいるけど、彼らみたいにゴールドチェーンとかするよりも、(ネイティブ・タンのように)レザーのメダリオンとかをしたいタイプ。それは今もやっぱ引き継いでて、高いアクセサリーとかジュエリーとか、欲しいとはいまだに思わないんだよね。でもB-Boyだと思うわけ。

持論としては、「なんでもつなげられる」ってことが大事だね。

よく言う例えだけど、いろんな音楽から派生して出てきてる音楽じゃん、ヒップホップってのは。だからそこから出てくる人もいろんなタイプがいていいと思う。ヒップホップにこだわってはいないけど、それでもヒップホップ的なところがあるものに魅かれてしまう。だからよく言うんだけど、シャーデー(Sade)トライブは俺の中ではヴァイブスがすごく似てるものなの。その似てるものがすごく好きなの。それが俺の中でのヒップホップ、夜の音楽。ダークな中にもキラキラしてたり、感覚的には夜空っぽいというか。だからやっぱり、オレは夜に聴くヒップホップが好きだな。だからどちらかと言うとウエストコーストよりもイーストコーストの音が好きなわけ。ウエストコーストももちろん好きな曲はあるけど、どっちかっていうと「昼」じゃない? で、海!、とかパームツリー!とか。それも気持ちいいし。LA行ったらそういう音楽聴きたくなるのも超わかる。実際オレもLA行って超納得したし。でもNYCのあの感じ、ちょっとごみごみしてて夜で、都会で……。

bmr.jp:ジャンル関係なく、そういうイメージで共通するものがあるってことですよね。だから、いろんなジャンルを越えてかけられる曲もあるし、いろんな人に刺さることがある。

そうだね。だからオレは家で曲順決めてセット組んできて、その通りやろうっていうDJがまず嫌いなのね。さっきも言ったとおり、毎週毎週やってれば、「あ、この曲来たら次、あの曲に対するフラグだ」みたいのもあるんだけど、それをあえてやってたりもするんだよね。例えば「そろそろニーヨ来そうだな」とか思わせる。去年だと"We Will Rock You"をかけたら"Party Lik A Rockstar"をかけるとか。お決まりの流れになってしまえばそれまでなんだけれども、そういうもの楽しい。で、自分のなかでそれを初めてやる時は直感的というか。オレは「うーん」って考えてやるわけではなくて、「これやったらどうだろう?」っていうのをその場で「やってみよう」ってやっちゃう方が多いくらい。

bmr.jp:それでできちゃうっていうのは、機材を使いこなすスキルっていうものがしっかりあるからできることですけどね。

うん、あとは、オレの方法論というか、やり方として、頭ん中で一回曲をつないじゃうんだよね。あとはやっぱBPMがずいぶん違う曲つないだりってこともやるんだけど、初めてやるときはけっこう「アッ」とかってこともあるのね。それでもそのつなぎが良ければ、2回目やる時はそれよりいいつなぎがあるんじゃないかな、っていうのは毎回覚えてて。毎回DJしてて「あそこはこういうほうが良かったな、ああいうのは良かったな」とかはあるけど。

だからオレの持論としては、「なんでもつなげられる」ってことが大事だね。もちろんいきなりサウスからハウスにはつなげないよ。でもそういうことじゃなくて、ある程度の時間をもらえれば、回してる流れの中で持っていくとはできると。例えば、強引なツナギとかはしてないんだけど、回し始めたときBPM70くらいだったのが終わるときには130くらいになってるとか。つなぎを全部ミックス(クロスフェード)してたら難しいけど、その曲ごとのブレイクだったりカットインのポイントを自分の中でちゃんと見極める、聴き極めるっていうのかな? そうすると前後の曲でピッチ変わるし、いきなりパッと来るけど、お客さん的には全然違和感がない……とかね。

でも、親父がいたら、まったく違う人生だったかもしれない。

bmr.jp:そういう具体的なレベルで音楽のつながりを感じ取れるのもセンスだと思うし、ジャンル関係なくいい音楽を感じ取る力っていうのもセンスですよね、それって後から身につけられるものでしょうか?

生まれ持ったものっていうのもあると思う。だから自分がこの仕事できてるんだとも思うし。センスは一番大事だと思うけど、それは天性のものじゃん? 鍛えてよくなる場合もあるけど。俺の場合、家族がそういう音楽を好きだったわけではないけど、環境的なものはあった。オレは生まれた時から親父がいなくて、母さんが働いてて、昔で言う鍵っ子だったし。それで1人っ子だったから、帰ってくるとやっぱり外に楽しいことを見つけようってなって。で、音楽が好きだからそれがあるところに行く。そこにいる人たちは、自分は小学生だからさ、年上が多くなっちゃうわけ。そういう中で音楽を聴けたし、それが糧になって、人生のおおまかな枠組みっていうか、こうなって行きたいな、っていうのは決めてたはず。

親父がいなかったら、いろんな面で、悲しいっていうか、ネガティブと思われるでしょ? でもそんなことないっていうか。家に居たらこういう音楽は聴けてないわけじゃん。貸しレコ屋さんでオレは"Got to be Real"とかを初めて聴いたの。それか、近所のステーキ屋さんかな。そこの店主がスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)とかQuestレーベルの人たち、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)とかジェイムス・イングラム(James Ingram)とかパティ・オースティン(Patti Austin)、ブラザース・ジョンスン(Brothers Johnson)とか好きな人だったから。そこによくゴハン食べに行ってたからね、(スティーヴィーの)"Master Blaster"とか"Sir Duke"とか、その辺が小学校2、3年には耳に入ってて、「ああ、こういう音楽はなんとなくいいな」っていうのは思ってた。

でも、親父がいたら、親に言われるがままだったかもしれないわけ。オレはいい意味で放っておかれたから、音楽を見つけられた。人生って面白いよね。

REGULAR PARTY

Finest @ HARLEMwww.harlem.co.jp (東京 渋谷)

HARLEM にとってもKEN-BOにとっても看板イベントと言っていい毎週金曜日のレギュラーパーティ。DJ WATARAIとの2本立てに、今年は若手注目株のDJ HALも加わって、週末ならではのパーティサウンドを提供している。1時、2時台の新譜攻勢、5時以降のメローな選曲、いずれも素晴らしい空間が楽しめる。

Scandalous @ shibuyaNUTSwww.clubnuts.net (東京 渋谷)

DJ KOYA、DJ KANGOの3人でプレイする第3、第4土曜日のレギュラーパーティ。こちらも週末ならではの楽しさだが、少し年齢層高めの客層に合わせて、より突っ込んだプレイが展開されることも。NUTSでは不定期ながら、DJ MASAKOらとTIME MACHINEという旧譜にこだわったパーティも開催している。


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