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滴草由実 interview / 「ザ・ウィーケンドやジェネイ・アイコにハマってるんです」

2004年に発表したセカンド・アルバム『Yumi Shizukusa II』で、フージーズのワイクリフをフィーチャーした曲「I'm in love」を歌ったことでも知られる滴草由実(Yumi Shizukusa)。ここ数年、アルバムの発表はなかったが、デビュー10周年となる今年もあと少しというタイミングで、フル・アルバムとしては実に5年ぶりとなる第5作『A woman’s heart』を完成させ、表舞台に戻ってきた。

取材・文/金子穂積

1曲目の「I don’t love you」は、浮遊感、ゆれる気持ちが漂う感じにしたくて

以前からローリン・ヒル(Lauryn Hill)やマクスウェル(Maxwell)が好きと公言してきた滴草由実だが、最近はドレイク(Drake)やジェネイ・アイコ(Jhene Aiko)などもお気に入りらしく、そういった嗜好が新作にも滲み出ている。また明らかに、これまでとはひと味もふた味も違う、オリジナリティ溢れるキャラクターとなった滴草由実に出会うことが出来るアルバムとなっているのが一番の特徴だ。アーティストとして新たなスタートとなる作品、と言って間違いないだろう。新生・滴草由実はどのように生まれたのであろうか?

イライジャ・ブレイク(Elijah Blake)が好き、とも日記で書いていたりする彼女だが、アルバム冒頭を飾る「I don’t love you」は、ドレイク以降のサウンドを感じさせ、また自身の声の多様性を活かした、凝ったヴォーカル・ワークにも驚きかされる作品となっている。

ドレイクも好きです。イライジャ・ブレイクは、サウンドや雰囲気も好きです。ザ・ウィーケンド(The Weeknd)やジェネイ・アイコなどに数年前からハマっているんですけれど、ああいう浮遊感や声の感じに癒されますね。1曲目の“I don’t love you”は、浮遊感、ゆれる気持ちが漂う感じにしたくて。基本的なメロディを最初に作ったんですけど、トラックの音に自然と引き寄せられて、コーラスやウィスパーを入れるのが凄く楽しくなっちゃって。この曲が出来た時に、アルバムの全体像が見え、また自分の新しいオリジナルというのは“これかも”と思いました。だから絶対一番最初に持ってきたかったんです

そして、1曲目と同様な味わいを感じさせる続く2曲目「A woman’s heart」を、アルバム・タイトルに冠した理由をこう語ってくれた。

自分の経験や身近で起こった事について感じたことや伝えたいメッセージを、今回は、現代社会を生きている色々な立場にいる女性を意識して作ったんです。それで、他のタイトルも考えたんですけど、響き的にも意味的にも、これが一番ハマり、今の私の等身大のアルバムだな、と思ったのでこれにしました

自信たっぷりに力強く、「私の等身大の」と話してくれたのが印象的だった。アルバム完成までに今回は長い時間がかかってしまったが、休んでいた訳ではなく、絶え間なく、自分のスタイルを見つけるのに邁進していたようだ。

水面下では、常にものづくりをしたり、音楽以外のことも学んでみたりもしていました。そんな中、ちょうど4年ぐらい前に、自分のヴォーカル・スタイルや声を、ゼロからもう一回改めて考えてみようかなというキッカケがあって。徐々にだったんですけど、自分の表現したいような歌い方にならなくなってしまって。で、声が出なくなった時期があったんですね。それをキッカケに、これから歌い続ける上で必要なことかもと思い、声の出し方を一回ゼロから見つめ直し、ヴォイス・トレーナーを変えたりした結果、今の声になるまで3年ぐらいかかってしまって。その間は修行のような大変な時間だったんですけど、その時間があったからこそ今回のアルバムが出来たと思っています。自分にとって歌や音楽はなければならないもので必要なものだと再確認出来たので、とても苦しい時期だったけど、必要な時間だったのかなと思っています

そして、自分の作品を作ることにおいてブレイクスルーが訪れたという。

実はこのアルバムの前に、一枚別に作っていたんです。1年半ぐらいかけて作っていたんですけど、全体像が見えてきた時に、これって本当に自分が納得いくものかなと思ってしまって。その頃は、“自分はこう歌わなければいけない”といった固定観念に捕われ、それに凝り固まっていたんだと思います。そんな時に、新作に収録された“Feel”のトラックをもらって、“1回、試しに自由に作ってみない?”ということになったんです。それで家に戻って、改めて“自分が聴き手だったら、今どんな音楽や歌が聴きたいかな”とイメージしたら、自然にメロディが出てきて、すぐにコーラスや歌詞も浮かんできて。部屋に宅録出来るスペースがあるので、トラックをもらって一日で曲全体がパッと出来ちゃったんです。その時に、“あれ? この感じ、今までのと違う”となり、そこから、今回のアルバムの世界観や方向性が生まれたんですよね

トラックが先にあり、自分で考えてメロディと歌詞を付けるというスタイルは、現在のR&Bの主流。今回、初めてそのスタイルを取り入れたというのは意外だった。「以前は、プロデュースしてくれる方がいて、全部作曲もその方がしてくれて、そこに私が詞を乗せて歌うという感じで作っていました」とのことだが、宅録する機材をすでに持ち、ローリンやマクスウェルをリスペクトするアーティストなのだから、メロディも自分で作るのはある意味、自然なことだったに違いない。「自分でも本当に新鮮で、サウンドからインスパイアされて、メロディや歌詞の内容とかが出来、また遊び心を持ちつつ作れましたね」と話してくれた際の楽しそうな表情は、実に生き生きとしていた。 (→ P2に続く)


「i don’t cry」