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ROBERT GLASPER EXPERIMENT interview / いい音楽はいつだって生き残る

豪華ゲストを迎え、ジャズとR&Bとヒップホップを見事に融合した『Black Radio』で、今年グラミー賞ベストR&Bアルバムを獲得し、ジャズの新しい可能性を魅せつけたロバート・グラスパー・エクスペリメント。その前作よりさらなるビッグネーム――ブランディ、フェイス・エヴァンス、スヌープなど――を迎えた期待の続編『Black Radio 2』が、この10月23日にリリースされた。それに先立つ9月、ヤシーン・ベイ(モス・デフ)を引き連れた来日ライブの際に、ロバート・グラスパーが新作への想いを語ってくれた。

取材・文/塚田桂子 Keiko Tsukada

俺たちがグラミー賞を獲得したことで、オーガニック・ミュージックを作っている人たちに門戸が開かれていくと思う。そしてそういう音楽がまたクールだと思われるようになるだろう

(→ P1より)
――新作『Black Radio 2』で、そのレイラ・ハサウェイを迎えた“Jesus Children Of America”は、心に深く響く特別な曲ですね。

「元はスティーヴィ・ワンダーの曲なんだけど、ここではサンディフック小学校の事件(昨年12月にコネチカット州で20名の児童が死亡した銃乱射事件)を追憶しているんだ。俺の友達の娘があの事件で亡くなったから、個人的にもすごく衝撃を受けた。俺にも4才の息子がいるしね。俺は時々、スティーヴィのトリビュート・ライブをやるんだ、レイラ・ハサウェイ、ストークリー・ウィリアムス(ミント・コンディション)、エリック・ロバーソンと、俺のバンドとでね。最初のショウでこの曲をアレンジして演奏した日に、あの事件が起こった。まさに同じ日だよ。それで事件のトリビュート曲を作りたいと思ったんだ」


“Golden Lady” (Stevie Wonder cover / Robert Glasper with Derrick Hodge)

――コモンを迎えた“I Stand Alone”では、マイケル・エリック・ダイソン氏(学者、作家)が、「黒人の圧倒的な個性と、いかにそれが消え去ってしまったか」について語っています。このメッセージを通してあなたは何を伝えたかったのでしょうか?

「前述の”Gonna Be Alright”から出発した会話っていうか。みんなお互いをコピーし合っていて、誰も本当の自分とは何者なのか、どんな誠実な声を持っているのかってことを見つけようとしない。だから深さや意味のないサウンドが出来上がる。昔は実にいろんな人たち、アーティスト、アートが存在していたし、ビジネスや金より音楽が大事だった。クリエイティヴな黒人はどこに行っちまったんだ? 俺たちはものすごく創造的な人間なのに、何が起こっちまったんだ? だから、掘り起こして自分が何者かを見つけろ、フォロワーではなく先駆者になれ、ってことなんだ」


“I Stand Alone” ft. Common & Patrick Stump (lyric video)

――アンソニー・ハミルトンを迎えた“Yet To Find”では、あなたのピアノが彼の暖かい声に溶け入るように響きます。南部出身者同士の音楽的ケミストリーはどうでしたか?

「オー、メ~ン、素晴らしいよ! 彼はすごく思慮深く誠実で、素晴らしいスピリットを持ついい人なんだ。素晴らしい時間を過ごしたよ。彼は常に、“僕は何をすればいい? 僕に何をして欲しい? 何か追加しようか?”って感じで、すごくやりやすかった」

――ノラ・ジョーンズを迎えた“Let It Ride”は、他の曲とは異なるドラムン・ベース調で印象的ですよね。

「ノラはダラス出身(生まれはNYのブルックリン)で、俺はヒューストン出身なんだけど、俺たちは高校時代に一緒にノース・テキサス・ジャズ・キャンプに行ったんだよ。だから彼女のことは長年知っていて、これは彼女にやってもらうつもりで書いた曲なんだ。彼女が普段やらないような音楽にしたかったから、“Let It Ride”は完璧だった。これは、普段は冒険をしない女性が、とある男性と冒険してみる曲なんだ」


“Let It Ride” ft. Norah Jones (lyric video)

――最近のBlue Note Recordsは、ホセ・ジェイムズやマッドリブ、あなたのような、ジャズ以外のフレイヴァーを持つ新しい才能を迎え入れていますよね。でも別のジャンルを取り入れることは、逆にジャズの美しさを強調している気がします。

「そうさ、ジャズ・ミュージックに光を当てることになるからね。他の要素を取り入れることは、ジャズをより現代的、今日的にするために重要だと思うんだ。往々にして、ジャズは秘密のクラブみたいに扱われている。多くのジャズ・ミュージシャンは、自分のジャンル以外で何が起こっているかまったく意識していない。でも俺は、“ヘイ、他の音楽とファックしようぜ、スヌープとハングアウトしてあれもこれもやってみようぜ”って感じなのさ。それが音楽の精神だと俺は思うんだ。事実、今ある音楽はマジでジャズがあったから出来あがったんだぜ? ジャズから生まれたんだ。ヒップホップは紛れもなくジャズから来ている。そうだろう? みんな関連し合っているのに、なんで分け隔てなくちゃならないんだ?」


“Get Lucky” (Daft Punk cover, live at North Sea Jazz 2013)

――将来コラボしたいアーティストは?

「ボニー・レイット、ビリー・ジョエル、ブルース・スプリングスティーン、ホセ・ゴンザレス、ビョーク、それからアニタ・ベイカー、実際、彼女とは一緒に制作するかもしれないんだ。スティーヴィ・ワンダー、ハービー・ハンコック……」

――もう『Black Radio 3』が出来あがりそうですね!(笑)

「本当に! ははは!」

――最後に、ブラック・ミュージックの現状についてどう思いますか?

「苦難に陥っているよね(笑)。いろんなアーティストが日の目を浴びていない。でも俺たちがグラミー賞を獲得したことで、オーガニック・ミュージックを作っている人たちに門戸が開かれていくと思う。そしてそういう音楽がまたクールだと思われるようになるだろう。これから改善されていくんじゃないかと期待しているよ。そう繰り返し唱える、それが俺の役割なんじゃないかな。こういう音楽を作ってリスペクトを受けているひとりとして、俺にはそれができると思っている」


“Calls” ft. Jill Scott