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ROBERT GLASPER EXPERIMENT interview / いい音楽はいつだって生き残る

豪華ゲストを迎え、ジャズとR&Bとヒップホップを見事に融合した『Black Radio』で、今年グラミー賞ベストR&Bアルバムを獲得し、ジャズの新しい可能性を魅せつけたロバート・グラスパー・エクスペリメント。その前作よりさらなるビッグネーム――ブランディ、フェイス・エヴァンス、スヌープなど――を迎えた期待の続編『Black Radio 2』が、この10月23日にリリースされた。それに先立つ9月、ヤシーン・ベイ(モス・デフ)を引き連れた来日ライブの際に、ロバート・グラスパーが新作への想いを語ってくれた。

取材・文/塚田桂子 Keiko Tsukada

最近のオーディエンスの注意力持続時間はすごく短い。一方、ジャズ・ミュージシャンは、「若者が自分たちの音楽を聴きに来ない」と嘆いているけど、それは時代の流れに合う音楽を演奏していないから

――前作『Black Radio』で初めてあなたの音楽を聴いたというリスナーのためにも、そもそも「ブラック・ラジオ」にはどんな意味があるのか教えてください。

「アルバムのタイトル曲“Black Radio”は、俺とモス・デフ a.k.a. ヤシーン・ベイが書いた。飛行機が事故を起こした時に情報を保管しておく飛行機のブラックボックス(フライト・データ・レコーダーの通称)に関する曲なんだ。ブラックボックス、またはブラックラジオといって、飛行機が壊れても、その装置に接続すれば、録音された通信会話から何が起こったかわかる。衝突でも火事でも、その装置はサヴァイブするんだ。だからアルバムも『Black Radio』にした。音楽界に何が起こっても、いい音楽はいつだって生き残るからね。この“Black Radio”自体は、4、5年前に作った古い曲なんだよ」


“Black Radio” ft. Yasiin Bey (lyric video) (前作『Black Radio』より)

――『Black Radio』では、デイヴ・シャペルが大好きなミュージシャンを集めて実現させた『ブロック・パーティー』のような親近感を感じました。『Black Radio 2』ではより大御所ゲストを迎えていますが、今回はどのように客演を選んだのですか?

「前作『Black Radio』で客演したのは全員、俺が知っている、以前一緒に仕事したことのあるアーティストばかりだった。今作のアーティストの半分は、今まで仕事したことのない人たちだ。そうすることで俺にとっても今までと違う作品ができるからね。同じアルバムを2度も作りたくはなかったから、今作はさらにR&B、ソウル、ヒップホップ寄りなアルバムにしたんだ。前作はジャズをヒップホップとR&Bにミックスした、自由な作品だった。今回はより作り込んだ、より曲に集中した作品なんだ。事実、作詞家に依頼して書いてもらったものもある。1作目はもっとカヴァーソングもあったんだけど、今作はより制作や作詞にフォーカスした」

――レデシーを迎えた前作の“Gonna Be Alright”の中で、「最近は作品の良し悪しが分からない人が多い。ラジオでかかる音楽の99%はダサい」という会話が繰り広げられています。その会話はスパイク・リーの名作『Mo’ Better Blues』での象徴的な会話を思い起こさせます。デンゼル・ワシントン扮するブリーク(トランペット奏者)が「同胞が俺たちの伝統や文化を理解できないのが頭にくる」と激怒するのに対し、ウェズリー・スナイプス扮するシャドウ(サックス奏者)が「ヤツらが好きなシットを演奏すれば人は来る。簡単なことさ」と返して。それに対するあなたの見解は?

「マジでそう! で、デンゼルが、“彼らは〈俺の〉声を聴きに来ているんだ、〈俺の〉声をな”ってね。でも俺はふたりの立場のどちらも理解できるよ。実際、最近のオーディエンスの注意力持続時間はすごく短い。一方、ジャズ・ミュージシャンは、“若者が自分たちの音楽を聴きに来ない”と嘆いているけど、それは彼らがここ10年の流れに合う音楽を演奏していないから。ジャズの歴史を振り返れば、すべての音楽はそれぞれの時代に合っていた。30年代、40年代、50年代は当時の社会を反映した音楽だった。今、ジャズはその性質を失ってしまってるんだ。今のジャズ・ミュージシャンと若者の間には繋がりがないんだよ。俺たちは若者が理解し、知っているものを演奏するから、若者との繋がりがある。同時に年配の人たちが知っている音楽でもある。すべてのミクスチャーだよ。でも、それはオーディエンスが欲しかったらの話。オーディエンスが欲しくなければ自分を貫けばいいさ」

――それじゃマスターベーションですよね。

「その通り! マジで! うははははは!!!(爆笑) マジで間違いないよね。音楽的なマスターベーションだ」

――昨年LAで行われた『Black Radio』リリースのコンサートで、レイラ・ハサウェイが特別ゲストとして登場して、非常に盛り上がりました。『Black Radio 2』でもまた彼女が客演しています。あなたにとって彼女はとても特別な存在のようですね。

「レイラは今の時代で最も素晴らしい歌声を持つひとりだ。時代を超えた声がある。明らかに彼女の父親(ダニー)からの贈り物だけど、彼女独自の才能もある。音域もアイディアも素晴らしい。1度彼女のヴォーカルを経験してしまったら、もう彼女なしで制作したくないもんね(笑)。だって彼女みたいな声を持つ人は他にいないんだから。それに俺にとっては個性が大事なんだ。独自の声を持つ人を集めるのも『Black Radio』の目的だった。独自の声を持ち、他人やトレンディになろうとしない、オーガニックで自分らしい人たちだ。それは俺のバンドのメンバーも同じことさ」 (→ P2へ)


“Cherish The Day” ft. Lalah Hathaway (live)