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KENDRICK LAMAR interview / 西海岸ヒップホップの新王者、語る

ケンドリック・ラマーは、現時点のウェストコーストを代表する最高のラッパーだ。bmrでは、雑誌時代の2011年8月号(いわゆる「ニュー・ウェスト」をメインとした号だった)でインタビューを掲載しており、メジャー・デビュー前から注目していたことになる。そんな彼の初メジャー作『good kid, m.A.A.d city』のリリース前後から追い続けて半年以上、やっと実現したインタビュー。西海岸のニュー・キングにして「コンプトンのグッド・キッド」の発言録だ。〈FUJI ROCK FESTIVAL〉での来日にあわせて読むべし。

取材・文/塚田桂子 Text by Keiko Tsukada

[Kendrick Lamar interview p.1]

外界の状況と一生関わらず、「コンプトン=全世界」という価値観の中で生きている人がたくさんいる。そういう環境だと、ギャングバンギンにどれだけ身を投じたかで判断されてしまう

スヌープ、ドクター・ドレー、ザ・ゲームという西のドンたちから「ニュー・キング・オブ・ウェストコースト・ラップ」に指名され、MTVの2012年度「最もホットなラッパー」でも1位に選ばれ、若くしてヒップホップ界を担う重要人物のひとりとなったケンドリック・ラマー。
ヨーロッパ~オーストラリア・ツアーから帰国後も、全米ツアーやラジオ、TV出演、MV撮影と休む間もなく走り回っている彼は、この日も全米放映のトーク・ライブTV番組『Jimmy Kimmel Live』への出演を翌日に控え、LAのとあるスタジオでライブ・バンドを従えてみっちりリハーサルを行なっていた。オーケストラの指揮者のように楽器演奏に指示を下したり、ステージでマイクを握って自分の動作を確認したり、時には内輪ジョークでスタッフを爆笑させたりしながら、キングの貫禄と20代半ばの素朴な素顔(柴犬の子犬のようなつぶらな瞳!)の間を行ったり来たりしていた。そんなケンドリックに話を聞いた。

2009年リリースの『Kendrick Lamar EP』は、『good kid, m.A.A.d city』の土台となるヴィジョンが既に散りばめられているEPだ。その中の“Jason Keaton & Uncle Bobby”という曲のヴィデオの最後で、「コンプトンというマッド・シティ(m.A.A.d city:思春期の屈折した感情やドラッグの誘惑等が詰まったコンプトンを指す造語)のキッズの半分はグッド・キッズ。俺はそのひとりであり、俺たちは素晴らしい道を歩もうとしている」とケンドリックは語っている。マッド・シティとグッド・キッズという対比は、やはり長い間暖めてきたヴィジョンだったようだ。

間違いなく、既に考えていたアイディアだ。俺の出身地についての事実を語りたかったし、自分のコミュニティに対してだけじゃなく、マッド・シティのグッド・キッドたちのストーリーが、世界中にインパクトを与えることは分かっていた


“Jason Keaton & Uncle Bobby”

このアルバム『good kid, m.A.A.d city』内の“Real”という曲には、「でも自分を愛してなかったら“愛”に何の意味があるんだ?」というラインがある。これは、物質主義的な価値観、刹那的な欲望、フッドやストリートなどへの執着に似た愛情を持つ、ケンドリックの身近な登場人物たちに対する問いかけだ。このメッセージは、ケンドリックが生まれ育った街の人間にとって、どんな意味を持つのだろうか。

俺たちの出身地コンプトンでは、外界の状況や流れと一生関わらずに、自分が知る現実の中だけ、“コンプトン=全世界”という価値観の中で生きている人がたくさんいるんだ。そういう環境で生まれ育つと、ストリートライフやギャングバンギンにどれだけ身を投じたかによって、人となりを判断されてしまう。でも俺たちも皆と同じように日々葛藤する普通のリアルな人間なんだということ、俺たちが何を信じて生きているかっていうことの根本を伝えたかった

ボーナス・トラック“Black Boy Fly”は、コンプトンから世界へ飛び立ったザ・ゲームなどのスーパースターたちへの羨望と嫉妬、心の葛藤を歌った、隠れた名曲だ。
ケンドリックが自分を信じ、「自分も飛んでいける(ゲットーから脱出できる)」と確信できるようになったのは、いつ、どんなタイミングだったのか。

そう、ザ・ゲームはまさに自分の世代に一番近いラッパーとしてコンプトンから現れた存在だ。俺も、ティーンエイジャーの後半から20代にさしかかろうとしている頃に、ラップこそが自分の進む道だと確信した。ラッパーとして自分が成長していく中で、自信が持てるようになったんだ」 (→ P2へ)