bmr

bmr>FEATURE>CRAIG DAVID / 二度目の黄金期を迎えるクレイグ・デイヴィッド

FEATURE

CRAIG DAVID / 二度目の黄金期を迎えるクレイグ・デイヴィッド

クレイグ・デイヴィッドの帰還。2016年に発表した6年半ぶりのアルバム『Following My Intuition』で、衝撃のデビュー『Born To Do It』の頃を彷彿とさせる往年のUKガラージや90s後半~00s前半のR&Bと今様のダンス・トラックやフローを融合させ、およそ16年ぶりに全英チャート1位を手にしたクレイグ・デイヴィッドは、今まさに第2の黄金期を迎えていると言っていい。この勢いに乗って、2月18日に渋谷TSUTAYA O-EASTにて一夜かぎりの来日公演が決定。来日自体およそ8年ぶりだが、日本での単独公演は実に、およそ13年ぶりだ。そしてこの久々の来日を記念して日本独自ベスト『Craig David Japan Collection』が1月30日に発売となった。往年のヒットから近年の代表曲、さらに最新リミックスまでを備えたこのベスト・アルバムと共に、改めてクレイグ・デイヴィッドのここ最近の活躍ぶりを振り返ってみよう。

文/林 剛

(⇒ P1より)

二度目の黄金期を迎えるクレイグ・デイヴィッド

デビュー作以来となる全英アルバム・チャート1位を獲得した『Following My Intuition』は、同作でソングライティングに関わったトレ・ジャン・マリーが初期のツアーでバック・コーラスを務めていたリンカーン・ジャン・マリーの息子というあたりも含め、まさに一周した、『Born To Do It Part II』とでも言える内容で、それはクレイグ本人が望むところであった。

bmrのインタヴューでは「ずっとあの頃のサウンドに戻りたい気持ちがあったんだ……R&Bがもっともエキサイティングだった頃のR&Bに」と発言。彼が言う“もっともエキサイティングだった頃”とは、“Fill Me In”で自身が世に出た当時、ティンバランド、ロドニー・ジャーキンズ、シェイクスピア、ネプチューンズらがUSを中心とするR&Bを裏方として牽引していた90年代後半~00年代前半のこと。この時代を彼はゴールデン・エイジとみなしている。

『Following My Intuition』に関与した若いミュージシャン(多くは90年代生まれ)もこの時代のR&Bを幼少期に聴いて育った世代で、例えばトレ・ジャン・マリーが制作した“Couldn’t Be Mine”がレイト90s R&B風だったり、メアリー・J.ブライジにも関わるケイトラナダが手掛けた“Got It Good”(ケイトラナダのアルバム『99.9%』にも収録)も初期のネプチューンズ風だったりと、クレイグが求める時代のサウンドを作り出していた。

もっとも、自分を含め90年代以前からR&Bを聴いていた者にとって、ティンバランドに代表される90年代後半~00年代前半が「R&Bがもっともエキサイティングだった時代」だと言われても正直ピンとこない。それは主に80年代~90年代に生まれたリスナーの価値観だから。ただ、彼らの世代になったつもりで“前史”をないものとして聴けば、90年代後半~00年代は、それ以前のR&B同様に起伏のあるメロディと力強く濃厚なヴォーカルが際立っていた、回顧するに値する良き時代である。当時ティンバランドのようなサウンドは以前のR&Bと比べると斬新で奇抜に映ったが、そこに気を奪われすぎていたのかもしれない。

例えばジニュワインの“Pony”(最近ラッキー・デイが新曲“Karma”でオマージュを捧げていた)をアンビエントだの何だのを経た今聴くと、こちらの慣れもあるのだろうが、ヴォーカルに力点を置いたメロディアスでオーセンティックなR&B曲であることに改めて気づく。それは2ステップ/UKガラージという文脈で語られたクレイグの“Fill Me In”に関しても同様で、メロディアスなサウンドの中で躍動する鋭くパーカッシヴなヴォーカルがあったからこそ良曲たりえたのだ、と。

15歳の時に、UKのボーイズR&Bグループ=ダメージのソングライティング・コンクールで優勝し、彼らのレコーディングに招かれてメロディを繰り返し歌うことでシンガーとしての自覚が芽生えたというクレイグのR&Bヴォーカルへのこだわりは、2ステップ/UKガラージというサウンド以上に彼の根幹をなすもので、拠り所であり続けている。もうひとつ加えるなら、若き日のクレイグはDJやMCをやりながらスパニッシュ・ギターを学んでいたのだが、そのせいか彼の曲にはスパニッシュ・ギターが多用され、その哀感のある音色がメロディアスな旋律や甘く切ない声を際立たせてもいる。“Fill Me In”と並ぶ初期のヒット“7 Days”はその代表曲と言っていいものだ。

そんなクレイグの初期作品でギターを弾き、ソングライティング/プロデュースに絡んでいたのがフレイザー・T・スミスで、『Following My Intuition』で復帰した勢いのままに放った2018年1月リリースのアルバム『The Time Is Now』(現時点での最新オリジナル・アルバム)では久々にフレイザー・Tとのコンビを復活。「初期の頃に戻ってやり直したかった」というクレイグにとって、これほど望んだ再会もなかっただろう。今では“アデルやサム・スミス、ストームジーを手掛ける”という肩書きを持つフレイザー・Tだが、それもこれもクレイグとの一連の共同作業を足掛かりに出世したことによるものだ。

チェイス&ステイタス主導の曲として先に披露された“Reload”を含む『The Time Is Now』も、前作よろしく初期のクレイグに影響を受けた若手ミュージシャンたちが“クレイグらしさ”の表出に手を貸していた。トロピカル・ハウス通過のポップネスが光るジョナス・ブルー制作曲“Heartline”、そのジョナス・ブルー“Perfect Strangers”で歌っていたJP・クーパーがデュエット相手を務める“Get Involved”、AJ・トレイシーを迎えた“Somebody Like Me”、そしてクレイグの大ファンを公言しているバスティルの客演曲“I Know You”(全英チャート5位) など、クレイグをアイドルとする人たちによって現在のUK的なトレンドが組み込まれた結果、そこには『Born To Do It』的な作法と勢いが前作にも増して感じられた。

R&Bという点にフォーカスするなら、トレ・ジャン・マリーがペンを交え、続投となるケイトラナダのプロデュースでゴールドリンクがラップするミッド・ダンサー“Live In The Moment”、そして“Talk To Me”に続いてその続編としてアルバムのラストを飾ったエラ・メイとのデュエット“Talk To Me, Pt. II”が筆頭にあがるだろう。

特に“Boo’d Up”でブレイクする直前にエラ・メイを迎えたトレ・ジャン・マリーら制作の“Talk To Me, Pt. II”は、クレイグが愛着を示す90年代後半~00年代前半のR&B然としたミッド・スロウで、ビヨンセが抑制して歌った時(例えばデスティニーズ・チャイルド“No, No, No Part 1”)のようなエラ・メイの声も当時の空気を運び込む。同じく90年代後期~00年代前半のムードで覆われていたエラのデビュー・アルバムに入っていても馴染んだであろうこの曲でクレイグは、自分にとってのゴールデン・エイジであり出発点を丁寧なヴォーカリゼーションでもって改めて示していた。

『The Time Is Now』は全英アルバム・チャートで2位を記録。前作での復活が一時的なお祭り騒ぎでなかったことを証明した。思えば2018年には、ナイル・ロジャース&シックの復活作『It’s About Time』収録の“Sober”にてUKの女性MCステフロン・ドンとニュー・ジャック・スウィングなビートに乗り、クリーン・バンディット“We Were Just Kids”でカーステン・ジョイとデュエット、そして『The Greatest Showman: Reimagined』にボーナス収録された“Come Alive”で甘い歌声を放つクレイグにも出会えた。ここにきて話題作への参加が目立つクレイグは、“Fill Me In”が再評価されるような時代の追い風も受けて、旬な新人よろしく二度目の黄金期を迎えている。

そんなクレイグの黄金期にフォーカスしたベストも発売される。来たる来日公演を記念して日本独自企画盤として編纂された『Craig David Japan Collection』がそれで、収録されたのは、デビュー作『Born To Do It』と復活以降の近作『Following My Intuition』&『Time Is Now』からの楽曲が大半(リミックスも含む)。カッティング・エッジなクレイグだけが飛び出してくる究極のベストだ。そして、約8年ぶりとされる2月18日の来日公演(渋谷 TSUTAYA O-EAST)は、〈クレイグ・デイヴィッド プレゼンツ TS5〉と銘打たれているように、前述したプール・パーティー〈TS5〉にちなんだスタイルでのステージとなる。外はまだ寒いが、イビザ島に行くような気分でライヴに臨みたい。

Craig David Japan Collection

1. Ain’t Giving Up (w/ Sigala)
2. Heartline ☆☆
3. Fill Me In
4. 16
5. Magic ☆☆
6. One More Time
7. Insomnia ★★
8. Love Me Like It’s Yesterday ☆☆
9. Live In The Moment (feat. GoldLink) ☆☆
10. When The Bassline Drops (w/ Big Narstie)
11. I Know You (feat. Bastille) ☆☆
12. For The Gram ☆☆
13. 7 Days
14. No Holding Back (w/ Hardwell)
15. Brand New ☆☆
16. Talk To Me, Pt. II (feat. Ella Mai) ☆☆
17. Rewind ★
18. Going On ☆☆
19. Focus ☆☆
20. Change My Love
21. Magic (feat. Yxng Bane)
22. I Know You (feat. Bastille) [Vigiland Remix]
23. Ain’t Giving Up (Tone R&B Mix)

★……2000年作『Born To Do It』収録
★★……2008年作『Greatest Hits』収録
☆……2016年作『Following My Intuition』収録
☆☆……2018年作『The Time Is Now』収録

 

クレイグ・デイヴィッド来日公演
日時:2019年2月18日(月)OPEN 18:30 / START: 19:30
会場:渋谷TSUTAYA O-EAST
価格:オールスタンディング 6,500円(税込・別途1Drink代) ※未就学児入場不可