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FEATURE

NAO / 初来日公演を行ったネイオのインタビュー+ライブ・レポート

ナイル・ロジャース&シック、ムラ・マサ、ディスクロージャーらとのコラボレーションでダンス方面で人気を得ながら、「ウォンキー・ファンク」と称したエレクトロニックなファンク~R&Bポップなサウンドに乗せた、キュートでソウルフルなハイトーンの歌声でも魅了するネイオ。プライベートで来日した際に訪れた某ソウルバーにちなんで名付けたLittle Tokyo Recordingsという自主レーベルを持つなど、日本とも縁のある彼女が、待望の初来日公演を行った。エラ・メイ、H.E.R.といった今のR&Bシーンを牽引するアーティストたちのひとりでもある、注目すべき存在、ネイオに迫る。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/Kana Muramatsu ライブ写真/Masanori Naruse

(→ P1 ミニ・インタビューより)
さて、ここからは初来日公演の様子をレポートする。

NAO | live at WWW X, Tokyo, Dec 7 2018 | Photo by Masanori Naruse

一夜かぎりの単独公演、それも日本で初の公演ということもあって、想像以上に彼女を待つ熱気で溢れる会場。そこにサブベースが蠢き、サイレンのようなSEが鳴らされ、開幕を予告する。

そしてネイオとバンド・メンバーたちが登場。早速“Fool To Love”が始まり、歓声が上がる。『For All We Know』や『Saturn』にも参加しているアンディ・ヴィッカリーのギターが唸り、思った以上にロッキッシュなサウンドに、ネイオのエネルギーも弾ける。続けてブギー・ファンクなノリの“Get To Know Ya”へ移り、会場の温度はますます上昇。若くしてのデビューをあえて目指さず、長らく下積みを経験してきただけあって、クラップや合唱を求めたりといった観客とのコミュニケーションも手慣れたものだが、“Get To Know Ya”の中盤のパーカッシヴなブレイク・パートではダンスまで披露。ここまでエネルギー溢れるパフォーマンスをする人だとは少々意外だったが、彼女の熱量の増加に伴ってこちらの熱も増していくというもの。

ひとしきり盛り上げたところで少しテンポを落とし、最新作『Saturn』から“Make It Out Alive”へ。アートワークでも手にしている風船も手に持ち、『Saturn』の世界へと連れていく。そしてアルバムの曲順どおりに“If You Ever”へ。ムラ・マサが手がけたこの曲はダンス・ミュージックとしてフロアをひとつにし、合唱も巻き起こる。途中でスロウダウンするパートではネイオが先ほどの風船を観客に配っていった。思わず、ピーボ・ブライソンなどのベテラン・シンガーたちが客席で薔薇を配って回る……というソウル界の(ベタな)演出と重ねて見える。彼女がどこまで自覚的かはわからないが、オールドスクールな彼女なら案外、狙ってやっていたかもしれない。また彼女は、「こんにちは東京」、「みんな元気~?」、「ありがとうございます」など度々日本語も使い、観客との繋がりを強める。

NAO | live at WWW X, Tokyo, Dec 7 2018 | Photo by Masanori Naruse

“If You Ever”に続いては、“Another Lifetime”をじっくり聞かせる。ボン・イヴェールやジェイムズ・ブレイクあたりの影響も感じられるこの曲は、ネイオの言う“ウォンキー・ファンク”を明確に提示したような素晴らしいバラードだが、バンドであのサウンドとグルーヴが肉体化され、彼女の時にコケティッシュとも言えるハイトーンがソウルフルに響くのを生で聴くのは、実に格別だ。

そして、ギターとハイハットだけで始まるミニマル・ファンク“Gabriel”を経て、「アルバムでも好きな曲」という“Orbit”へ。ケンドリック・ラマーに影響されたという、声にエフェクトをかけたラップ調のヴァースもしっかり聞かせた。ここで一旦、『Saturn』の世界から離れ、“Girlfriend”へ。バンドによって再構築され、より肉体性を帯びた“Girlfriend”のパフォーマンスは、この夜の白眉と言えただろう。「To make us fly…」の部分は、まさに昇天するような快感があった。

この勢いに乗って“Drive and Disconnect”へ。アフロ・ビートの影響を受けたこの曲ではやはりと言うべきか、ダンスも披露。合唱も巻き起こる。続く“Adore You”では扇子を手にするなどキュートな一面を見せる。実際、ネイオのこの公演中は、度々彼女に対し「かわいい!」という声が上がっていた。そして新作の表題曲“Saturn”では、ゲストのクワブスが不在だから、ということでクワブスのパートも自ら再現してみせたが、愛嬌たっぷりにクラブスの低い声を出しつつも、一方で彼女の歌の巧さをしっかりと見せつけるパフォーマンスでもあった。

NAO | live at WWW X, Tokyo, Dec 7 2018 | Photo by Masanori Naruse

終盤に差し掛かり、アンディ・ヴィッカリーが、サンシャイン・アンダーソン“Heard It All Before”なフレーズを弾く。そう、“DYWM”だ。そして、マリンバ風のあの特徴的なイントロが聞こえ、観客からひと際大きな声が上がる。ネイオは前日に、ムラ・マサの東京公演にゲストとして参加していたが、ムラ・マサきっかけで彼女を知った人も多いのだろう。“Firefly”で会場の熱は最高潮となった。そして「ワンモア?」と訊ねたネイオは、“Bad Blood”へと突入。改めて彼女のファンクネスを我々の心に刻み、晴れやかな笑顔と共にネイオはステージを去っていった。

NAO | live at WWW X, Tokyo, Dec 7 2018 | Photo by Masanori Naruse

最後の“Bad Blood”がアンコール代わりということだったのだろうが、あっという間の1時間、まだまだ物足りないという観客がほとんどだったようだ。会場に流れ始めたケンドリック・ラマーの“Alright”で盛り上がり始め、観客がなかなか会場を出ないという珍しい事態に。本人がサインするということで当日会場で発売したCDも完売になってしまったそうだ。個人的にも2018年に観たライブの中でベスト5に入る素晴らしい夜だったが、終演後のこんなエピソードも彼女のライブがいかに最高だったかを物語っているだろう。次の来日があれば、さらに大きなステージで我々を魅了してくれるのは間違いない。

intro
1. Fool To Love
2. Get To Know Ya
3. Make It Out Alive
4. If You Ever
5. Another Lifetime
6. Gabriel
7. Orbit
8. Girlfriend
9. Drive and Disconnect
10. Adore You
11. Saturn
12. DYWM
13. Firefly
14. Bad Blood