bmr

bmr>FEATURE>NAO / 初来日公演を行ったネイオのインタビュー+ライブ・レポート

FEATURE

NAO / 初来日公演を行ったネイオのインタビュー+ライブ・レポート

ナイル・ロジャース&シック、ムラ・マサ、ディスクロージャーらとのコラボレーションでダンス方面で人気を得ながら、「ウォンキー・ファンク」と称したエレクトロニックなファンク~R&Bポップなサウンドに乗せた、キュートでソウルフルなハイトーンの歌声でも魅了するネイオ。プライベートで来日した際に訪れた某ソウルバーにちなんで名付けたLittle Tokyo Recordingsという自主レーベルを持つなど、日本とも縁のある彼女が、待望の初来日公演を行った。エラ・メイ、H.E.R.といった今のR&Bシーンを牽引するアーティストたちのひとりでもある、注目すべき存在、ネイオに迫る。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/Kana Muramatsu ライブ写真/Masanori Naruse

2014年に発表した『So Good』、そして2015年の『February 15』という2作のEPで注目され、ムラ・マサ“Firefly”やディスクロージャー『Caracal』への参加でその名を広めたネイオ(NAO)。

2016年にはデビュー・アルバム『For All We Know』を発表した彼女は、自身の音楽を「ウォンキー・ファンク」と呼ぶ。英国のエレクトロニック・シーンにおけるサブジャンルのひとつの呼称である「ウォンキー」とファンクを掛け合わせた表現で、ウォンキーとは……UKのクラブ・シーンは流行の移り変わりが激しく、呼び名もしょっちゅう変わるため改めて定義するのは難しいが、wonky=ヨロヨロしたビートとシンセ・サウンドが特徴的で、酩酊ビート/ドランクン・ビートとも呼ばれるJ・ディラからの影響も指摘されるサブジャンルだ。具体的に「ウォンキー・ファンク」をひも解いていくならば、ネイオが影響源や共感するアーティストとして挙げることの多い、ジェイムズ・ブレイクやブリアル、リトル・ドラゴンらのエレクトロニックなサウンドを、ソウル~ファンク~ジャズと掛け合わせたもの、と言えるだろう。

言葉の意味はともかく、先進的な(そしてトラディショナルなR&Bとはやや離れた)そのサウンドから「オルタナティヴR&B」と括られることの多いネイオだが、『For All We Know』からは80年代~90年代のファンクやR&Bの影響も感じられ、実際本人も「とてもノスタルジックなアルバム」と話していたりと、ネイオは、オールドスクールな部分とフューチャリスティックな部分を合わせもったアーティストだ。

新作『Saturn』には未収録に終わったが、その名も“Nostalgia”という2017年のシングルはまさに80年代のミネアポリス・ファンクを現代的にアップデートしたようなものだったし、映画『アンクル・ドリュー』のサントラでは故ティーナ・マリーの名曲“I Need Your Lovin’”の見事なカバーも聞かせた。bmrのインタビューで語った「オールドスクール・ガール」という発言も頷けるセンスだ。シックの26年ぶり新作『It’s About Time』への参加も、以前からネイオのファンだったというナイル・ロジャース直々の指名だったそうだが、ナイルは彼女のそうしたオールドスクールな面に反応したのかもしれない。

とは言え、今年10月に到着したセカンド・アルバム『Saturn』ではノスタルジー/オールドスクールに偏ることなく、グレイズ(GRADES)、ロックス(LOXE)ら盟友を軸に、ムラ・マサ(Mura Masa)、マレイ(Malay)、ジェフ・ギティ(Jeff Gitty)、ジョー・リトル(Joe Little)といった才能とも組み、彼女の「ウォンキー・ファンク」をさらに進化させた。

この最新作『Saturn』は、ポップ・カルチャー系メディアのPAPERが発表した2018年の年間ベスト・アルバム・ランキングで9位(彼女のサウンドは前作よりもさらに大きくリッチになり、アレサのソウル、バウンシーで最先端のポップなフック、アトモスフェリックなエレクトロ、そしてヒップホップのアクセントを組み合わせたことによって“フューチャリスト”の称号を彼女は得た)となったほか、Dazedで年間14位となるなど高く評価されている。

そしてこのネイオが、2018年12月に満を持して来日。限られた時間で行われたインタビュー、そして大盛況となった初の単独公演の模様をお伝えしよう。

私は“オールドスクール・ガール”で、チャカ・カーン、ニーナ・シモン、アレサ・フランクリン……そういうオールドスクールなシンガーが大好き

公演前に行われたネイオとの対面インタビュー。繊細な性格、と聞いていたし、デビュー直後はあまり顔をはっきり見せていなかったこともあり、シャイな人物像をイメージしていたが、実際に顔を合わせたネイオは非常に明るく、テンション高くインタビューに応じてくれた。ハイトーンの歌声に反して喋り声は意外と低い、というのはよくある話だが、彼女は実際の喋り声もあのまま。15分と限られた時間だったが、和気あいあいとなったインタビューをまずはお届けする。

――プライベートでも来日しているとのことですが、これまで何度来られてたんでしょうか?

「来たのは2回目。でも1度目は1ヵ月くらい滞在していたの。だから今回日本に来て渋谷に着いた時は、『ただいま!』って感じで、慣れ親しんだ景色に感じた(笑)」

――昨夜ムラ・マサの公演で日本で初のステージを踏みました。言葉の壁もあったと思いますが、どうでしたか?

「とても素晴らしかった。他の国でやるときは、コミュニケーションが取れるよう少しだけでもその国の言葉を覚えて行くようにしていて、昨夜だったら『みんなー、ぎんこー!?』(“元気”と正されて)『みんな元気ー!?』って(笑)。ちょっとだけのフレーズでも覚えて行くようにしてるの。昨夜もみんなすごく反応がよかった。

それに英語で話す時もゆっくり喋るよう気を付けていたんだけど、しっかり通じていたと思う。みんな笑顔だったし、楽しんでくれていたみたいだったから」

――では今晩のライブも楽しくできそうですね。

「もちろん! もっと言葉を覚えなきゃ(笑)」

――最新作について訊きたいと思うのですが。今回の『Saturn』では前作以上にグレイズのクレジットが増えていて、メイン・プロデューサーだと言えると思いますが、あなたにとって彼はどういう存在ですか?

「グレイズはとても重要な存在。他にもたくさんのプロデューサーと会うんだけど、彼ほどクリエイティブの面で結びつくことができる人はなかなかいなくて。グレイズとはいつでも、いい音楽が作れるの。今回のアルバムでは、実際にグレイズと一緒に書いてプロデュースしたのは1~2曲で、あとは他のプロデューサーたちとやったんだけど、でも最終的には全曲をひとりの人にまとめてほしくて。ひとりじゃなかったけど、それをやってもらったのがグレイズ、そしてロックスというプロデューサーだった」

――あなた自身も彼らと共にプロデューサーのクレジットがあります。以前に、Logicとシンセサイザーを使ってプロデュースしていると話している記事を読んだことがあるのですが、具体的にはどういう形で進めているのでしょうか。たとえばあなたがデモを作って、それを渡すとか?

「私の場合……そうね、Logicは私の楽器(笑)。大体の場合、私がLogicでアイディアの骨格を作って、そう、それがデモっていうやつね。で、デモの出来が自分で気に入ったら、それをプロデューサーに送って、一緒にスタジオに入って完成させていく。シンセサイザーも使うけど、ライブ・ミュージシャンもたくさん使っていて、今回はフル・オーケストラも入れたし、ローズ、ドラム、ベース、ギター、ピアノ……あらゆる生楽器を使ったの。だから、最初はまず私のアイディアから始まる」

――いろんなプロデューサーとやるのが好きと仰ってましたが、去年、FADERのインタビューの中で、ジ・インターネットとコラボレーションしたと話していましたが、それって結局どうなったんでしょうか?

「いい質問ね(笑)。確かにジ・インターネットのシドと曲を一緒に書いたの。ジ・インターネットは素晴らしいバンドだし、一緒にやった曲は最高なものにしたかったんだけど、でも一緒にスタジオに入ることのできる時間が1日しかなくて。スペシャルなコラボレーションに仕上げたかったから、満足のいく出来にするには時間が足りなかったのね。また彼女と一緒にやれる時があればいいなと思ってる」

――今回『Saturn』は、プロデューサーだけでなくソングライターも前回より顔ぶれが増えた印象です。あまり時間がないのでひとりだけ伺いたいのですが、タイトル・トラックの“Saturn”でダニエル・シーザーが参加していますよね。これはどういう風に生まれたコラボレーションでしょうか?

「私は常に自分で自分の曲を書いていて、それが重要だと思っていて。今回は実際には外部ソングライターはひとりとかふたりとか……一緒にやったのはそれくらいで、後の名前は友人なの。友人がスタジオにやってくるんだけど、そうすると、同じアイディアの繰り返しになっていた時に指摘してもらえて助かるのね。数人の親友をクレジットに記載しているのは、彼らからアイディアをもらったから。同じようなメロディや歌詞を使い回すようなことはしたくないの。

ダニエル・シーザーについては、スペシャルな時間を過ごした。彼がロンドンでショウをやった時に観に行ったんだけど、その時に一緒にスタジオに入らないって誘って、それで一緒に曲を書いて。とても素敵な曲になった」

――『Saturn』は、R&B、ソウル、エレクトロ、ヒップホップ、ジャズ、アフロ・ビートといったあなたの好きな音楽が前作よりもさらにうまく混ざり合い、ひとつにになったような作品になったという印象を受けたのですが――

「(日本語で)ありがとう」

――制作するにあたって、「こうしたい」といった、目指していたものはありましたか?

「私がやってきたファンキー・サウンド……私はウォンキー・ファンクと呼んでるけど、私のこの音楽性については変えずに続けていきたいと思って。

それと同時に、これまでのファンは失わないようにしつつ、新しい面、成長を見せたいと思ったの。アフロ・ビートは大好きだしね。トロピカル・ハウスも好きで、“If You Ever”を聞けばそれが分かってもらえると思うし、“Drive and Disconnect”にはアフロ・ビートの要素があったり。エレクトロも好きで、ジェイムズ・ブレイクあたりにインスパイアされていて。“A Life Like This”だったり“Curiosity”だったりでそれが分かると思う」

――もう時間が無いので、最後に、ちょっと全然違う質問に飛んでしまいますが。『アンクル・ドリュー』のサウンドトラックでティーナ・マリーの“I Need You Lovin’”のカバーをしていて、ファンクが好きなあなたにとてもハマっていたと思うのですが、あれはどういう経緯でカバーすることになったのでしょうか? あなたが生まれる前にリリースされた楽曲ですが、この曲のことは知っていましたか?

「ティーナ・マリーのことはもちろん知っていたけど、実はあの曲については、なんとなくは知っていたけど、そこまで馴染みのある曲ではなかったの。でも私は“オールドスクール・ガール”で、チャカ・カーンだったりニーナ・シモンだったりアレサ・フランクリンだったり、ダニー・ハサウェイやマーヴィン・ゲイ……そういうオールドスクールなシンガーが大好きで。ティーナ・マリーもそういうアーティストのひとりで、素晴らしいシンガー。

あのカバーについては映画の製作側にソニー・ミュージックが入っていて、彼らがあの曲のカバーに合う歌手はいないかって探していたのね。それで私が選ばれたの。光栄だった」

――なるほど、ありがとうございました。

「(日本語で)ありがとう~~」(⇒ P2 ライブ・レポートへ)