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DUCKWRTH interview / 「アンドレ3000とファレルの間に生まれた私生児」が語る

ダックワース。まだ知名度はそれほど高くないが、キックドラムスとのコラボ作『Nowhere』や、2016年のソロ作『I’M UUGLY』などで評価を高め、アンダーソン・パークの北米ツアーの前座を務めた彼は、サブリナ・クラウディオが参加した“I’M DEAD”がSpotifyを中心にヒットを記録。Republic Recordsとのメジャー契約を手にした男だ。自身を「アンドレ3000とファレルの間に生まれた私生児」と表現するなどファンクに根差したヒップホップで注目を集める彼が、この5月に初来日。彼の日本愛、そしてジェンダー観が伝わるインタビューをお届けする。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr)

男はこうあるべき、女はこうあるべきっていう考え方はつまらないし、色んなものがダメになる

(⇒ P1より)
ところで、サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート大学でグラフィック・デザインを学んだ彼は、自らアートワークも手がける。もちろん、昨年10月にリリースされた『an XTRA UUGLY Mixtape』にも彼の手が施されている。

あれは写真は友人のメンシー・ギャント(Mancy Gant)が撮影したもので、俺はアレンジしたって感じかな。フォントだったり色調だったり、あとはロゴのデザインだったり。俺はフォントやロゴ、色調をやることが多いかな。写真(を使うアートワーク)についてはそういったアレンジだね。

全面グラフィックのものについては、たとえばミックステープの『TAXFREE』のアートワークなんかは自分で全てやったよ(自身のデザイン会社BLUUDRAGON名義)。シングルも多くは自分でやってる

DUCKWRTH - an XTRA UUGLY Mixtape

『an XTRA UUGLY Mixtape』のアートワークでは、彼がヘルメットを被っているのも印象的だ。“TAMAGOTCHI”のビデオでもヘルメット姿を見せるが、そこにも彼のセンスが生きている。

さっきの歴史的な東京と先進的な東京って話にも通じることなんだけど。ヘルメットは未来的に見えるし、でも古くも感じる……70年代っぽいというか、それがクールだと思うんだよね。古いものと新しいものをミックスするのが好きなんだ。新品のものでもユーズドっぽい部分が欲しくて。色あせてたりとか。

それから、何かを壊すときにヘルメットを被るんだよね(笑)。ミックステープのバックカバーでは大きな瓶を破壊してて。破片が腹を切って血が出たけど、頭は守れたよ(笑)

DUCKWRTH - an XTRA UUGLY Mixtape backcover

an XTRA UUGLY Mixtape』で個人的にもっとも印象に残ったのは、“BOY”だった。「Let’s meet between the gender, now wouldn’t that be awesome?」(ジェンダーの狭間で会おうよ、そしたらヤバくない?)というラインも興味深いが、囚われのダックワースを、坊主の女性が乗り込んで行って救出するというジェンダー逆転のアクション・ストーリーとなったミュージック・ビデオがまた、面白い。その着想源を訊ねると、彼の生まれ育った環境があった。

「(アイディアの元になったのは)自分だね。自分を理解しようとしていく中で生まれた。黒人であり、LAのフッド育ちで、父親が不在の中で母や姉といった女性に囲まれて育ってきた。……ずっと自分の人生には、女性のエナジーがそばにあったんだ。でもその女性のエナジーというのは、男の自分には分からないものだった。

そうして理解できないでいると、どんどんと色んな疑問が浮かんでくるんだ。自分自身とは何か、自分のセクシュアリティは何なのか……なにもかもに対して疑問を抱くようになる。男はこうあるべき、女はこうあるべきっていう考え方はつまらないし、色んなものがダメになると思う。そして大人になるにつれ、女性のエナジーを持った男性、男性のエナジーを持った女性がいることに気付いた。それは自然なことなんだ。フットボールやバスケットボールが得意な女性は俺のまわりにもたくさんいるしね。性を決めつけるということは、社会におけるスタンスを縛りつけるようなもの。

男性が女性に対して共感ができないのは、相手の立場に立とうとしないから。だから、「meet between the gender」というのは、相手の視点で物事を見る、ということでもある。相手の立場に立って考えることができれば、もっと平等な世界になるんじゃないかな。だからビデオでは、俺が“囚われの姫君”を演じて、俺の友人がヒーローを演じたんだ。役割をスイッチするという簡単なやり方で新しいストーリーを生むことができたと思う。俺と彼女、それぞれの視点で観てほしい

彼はスカートを履く男でもある。それもこうしたジェンダー観の表現なのだろうか?

多少はそういう面もあるけど。ただ自分がスカートが似合うと思って、アハハ(笑)。

でも、これはどういう自分をイメージするかって話であって、誰しもがスカートを履く必要はないわけで。あくまでこれが俺のスタイルということ。それに、物理的にスカートを履く必要もないと思ってて、心の中で履いている姿をイメージしてもいいんじゃないかな

スカートを履くマインド……深い。ちなみに彼は自身のクロージング・ラインも持っており、「UUGLY」をデザインしたTシャツやキャップだったり、最近では「XTRA UUGLY」のTシャツが販売されているが、「大量生産のマーチャンダイズのブランドというよりは、限定数で展開していきたいかな。たとえば3点限定のクルーネックとか」だそうだ。

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質問も限られたので、最後に彼に「アグリーとは?」を訊く。本来「見苦しい、醜い」といった意味を持つ「ugly」だが、『I’M UUGLY』、『an XTRA UUGLY Mixtape』など、彼が多用する「uugly」とは、彼にとってどういう意味を持つのか。

フィーリングかな。たとえばめちゃくちゃいい音楽を聞いたら、感じ入ってこう顔をしかめて(頷きながら)入り込むことあるでしょ? それがアグリー・フィーリング。

それから、透明性――正直な人間性ということでもある。落ち込んだりしていても、恐れずそれを隠さないこと。なんでもないって顔したり、常にハッピーな風に装う人がいるけど、でもそれって本当じゃないから

それは、人間らしさ、と言い換えることもできるかもしれない。最高の音楽に出会って相好が崩れるのも、辛いことがあって表情が歪むのも、リアルな人間の姿。ダックワースはそんな人間臭い音楽を歌い続けていくことだろう。

s**t kingz & Duckwrth