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DUCKWRTH interview / 「アンドレ3000とファレルの間に生まれた私生児」が語る

ダックワース。まだ知名度はそれほど高くないが、キックドラムスとのコラボ作『Nowhere』や、2016年のソロ作『I’M UUGLY』などで評価を高め、アンダーソン・パークの北米ツアーの前座を務めた彼は、サブリナ・クラウディオが参加した“I’M DEAD”がSpotifyを中心にヒットを記録。Republic Recordsとのメジャー契約を手にした男だ。自身を「アンドレ3000とファレルの間に生まれた私生児」と表現するなどファンクに根差したヒップホップで注目を集める彼が、この5月に初来日。彼の日本愛、そしてジェンダー観が伝わるインタビューをお届けする。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr)

bmrでは2016年に発表した『I’M UUGLY』の頃から紹介してきたダックワース。80年代のザ・システムのような“Get Uugly”(プロデュースはライク)におけるアンドレ3000のような佇まい、時折のぞかせるネプチューンズ愛が印象的だったが、実際にアンドレ3000~アウトキャスト、ファレル~ネプチューンズからの影響を公言し、自らの音楽を「ファンクウェーヴ」と表現する男だ(ちなみにダックワースがSNSでよく使う「Stankyou」はアンドレ3000が“Prototype”で使っていた表現で、Thank youのファンク的な言い換えである)。

アンダーソン・パーク、そしてリッチ・ブライアンのツアーでオープニング・アクトを務め、Republic Recordsとのメジャー契約を獲得するなど活躍の場を徐々に広げてきた彼が、つい先日、初来日を果たした。これは5月28日(金)にNOS EBISUで開催された一夜限りのスペシャル・イベント〈Music Library〉への出演のためのもの。この〈Music Library〉は、ダンスでストーリーを表現する「無言芝居」で公演を重ねてきたs**t kingzの新作公演となる〈The Library〉の全国ツアー開催を記念したイベントで、〈The Library〉のためにスターロー(starRo)とダックワースがコラボレーションしてオリジナル楽曲を提供したという経緯があり、スターローとダックワースも出演した。

知名度を考えると、どうなるだろうか……などという懸念は杞憂に終わり、当夜、スターローがDJに付いたダックワースのステージも大盛況。“TAMAGOTCHI”などでは合唱も起こり、オーディエンスの声援の大きさに思わず笑いがこぼれ、「ずっと東京に来たかった」と感謝を述べるダックワース。あまりの熱気からか、ファッショナブルなアウターは2曲目で早くも脱ぎ捨てられ、中盤からは上半身裸になってエナジーに満ちたパフォーマンスで最後まで盛り上げた。ライブで観ると、よりアンドレ3000感が印象に残る。次の来日の機会があれば、もっと広いステージで日本のファンを魅了することだろう。

その来日ステージの前に、彼にインタビューする機会を得た。限られた時間ではあったが、彼の人間性をより身近に感じられる取材になったと思う。

Duckwrth
Duckwrth & starRo

日本のカルチャーはめちゃくちゃ好き。ひらがなとカタカナを勉強してたこともある

今回の来日のきっかけとなったのは、スターローとのコラボレーション。来日前には、韓国でも共にステージに立った。〈Music Library〉でのs**t kingz×スターロー×ダックワースで披露したステージも最高だったが、スターローとのコラボはどのように生まれたのだろうか。

マネージャーから連絡があって、スターローと一緒にやらないかって話がある、って言われたんだ。それでスターローから送られてきたビートが、もうヤバくて。でもすぐには曲を書かなくて、ちょっと置いてたんだけど、ある時テキサスでスタジオ・セッションをやってたら、マネージャーに『今すぐやれ、今だ! 曲を作れ!』って言われて(笑)、それで曲を作って送り返したら、気に入ってもらえたよ。後はご存じのとおり

今回が初めての来日となるダックワースだが、彼はずっと日本に行きたいと思っていたという。“TAMAGOTCHI”だけでなく、過去には“Naruto”という曲もあったし、かつて組んでいたグループ名もTOKYO 24だった。

日本のカルチャーはとても好きだよ。もうめちゃくちゃ好き。昔、アメリカの部屋にひとりでいると、日本、東京に行きたいな、アメリカはもういい、なんて思って感傷的になってたぐらい(笑)。

最初に惹かれたのは東京の現代的……テクノロジー主導なところ。どんどん前進して新しいテクノロジーを生んでいる感じがいいなって。自分もクリエイターでありイノヴェーターであると思ってるから、東京の先進的な姿勢に惹かれたんだ。テクノロジーとイノヴェーション、東京のそういう最先端な感じにハマって。

それにもちろん、食べ物や服も魅力的。昔はファッションデザイナーをやっていて、日本のアパレルにもインスパイアされてきたんだ。でも今は、東京の別な面を知りたいと思ってる。昔ながらの東京……文化的な面をもっと知りたいね。ひらがなとカタカナを勉強してたこともあるから今後は漢字をもっと知りたい。漢字はすごい数あるってのは知ってるけど(笑)

ひらがなとカタカナは、「もう全部忘れちゃった(笑)」そうだが、本を読んで独学で勉強したとか。よほど日本の文化に惹きつけられていたと見える。

Been a long time coming. Finally made it| : @starro

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しかし、彼にとって身近なのは日本だけではない。母親が韓国人であるアンダーソン・パーク、インドネシア出身のリッチ・ブライアンと、彼はなにかとアジアと縁深い。

アジア系のアーティストが周りになぜかたくさんいるんだよね。“MICHUUL.”のプロデューサーはアレクサンダー・スピット(Alexander Spit)って言うんだけど、フィリピンだったかな。“LOWRIDR”とか色々やってくれたルー・アーユー(Ru AREYOU)もフィリピン系。スターロー(starRo)は日本人でしょ。なんでかは分からないけど、昔から常にアジア文化が身近にあったんだよね。たとえば子供の頃、家には母が中国製の食器なんかを持っていて。漢字がいっぱい書かれているような。それから、俺は88年生まれで辰年っていうのも自分のアイデンティティに大きく影響してるんだよね

そうした環境に加え、ダックワースの本名がジャレッド・リー(Jared Lee)であること、イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(辰年)生まれだと話すことなどから、ひょっとして中国系なのか?と筆者は推測したことはあったが、どうやらそれは違うらしい。

でも子供の頃、自分も中国系だと信じ込んでたよ。ラストネームがリーだから。家族から『そうだよ、中国系だよ』って言われていたけど、何の根拠もなかった(笑)

ちなみにTOKYO 24の仲間でもあったマイロ・ヒロシマ(Milo Hiroshima)も別に日系というわけではないらしい。そういうツッコミを受けることが普段ないのか、妙に爆笑されてしまった。
(⇒ P2:「男はこうあるべき、女はこうあるべきっていう考え方はつまらないし、色んなものがダメになる」へ)