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SY SMITH interview / 「アンダーグラウンド・ソウルの女王」が語る新作、そして音楽業界の今

ホイットニー・ヒューストンのバックコーラスを経験し、アリ・シャヒード、クリス・デイヴ、フォーリン・エクスチェンジ、ミシェル・ンデゲオチェロ、シーラ・E、ブラン・ニュー・ヘヴィーズからクリス・ボッティに至るまであらゆるアーティストたちに愛されるミュージシャンズ・ミュージシャン。「アンダーグラウンド・ソウルの女王」とも謳われる才女が、6年ぶりの新作『Sometimes A Rose Will Grow In Concrete』をついに発表した。今回は初めて自ら全曲をプロデュースし、ジャズにも挑んだ意欲作。クリス・ボッティの公演でちょうど来日していた彼女をキャッチし、この新作について、そしてクリス・デイヴとの関係や、インディ・ソウル、女性ミュージシャンたちが置かれている状況についてたっぷりと語ってもらった。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/Kana Muramatsu

今回のアルバムは今までで一番、私がどういうアーティストかを的確に写し取ったポートレートになった

(⇒ P1より)

ジャズを歌うことについて、最初は戸惑いがあったか?という質問に対しては、彼女はおもしろい喩えをしながらやんわりと否定した。

いいえ。なぜなら私にとって同じ源流にあるものだから。ソウルはジャズから生まれたし。そうね……たとえて言うなら、家にいて、(ソウルという)寝室で寝るとする。でも別の日に、別の(ジャズという)寝室で寝る、っていう感じ。寝室は違うけど、同じ家なの。分かる? 家を離れるわけじゃなくて、ひとつの家の中で部屋を変えているだけってこと

そして、サイ・スミスという家にあるジャズの部屋の扉を開けたのが、本作『Sometimes A Rose Will Grow In Concrete』であるとも言える。 今回は、リード・シングルとなった“Now And Later (Pocketful Of Joy)”に代表されるように、ジャズの影響を強く感じさせる。クリス・ボッティとの共演経験がそうさせたのだろうか。

多分そうかな。でもクリスだけじゃなく、私自身が成長したからかな。成熟したの。そして私はいつも、自分が好きなものに挑戦したいと思っていて、これまでもエレクトロニックに挑んだり、アンダーグラウンドなソウルやヒップホップ色の強いものに足を踏み入れてみたり。だから今回は、昔から大好きだったジャズを探索してみたいってことだと思う

ジャズだけでなく、もちろんファンクやR&B、そしてアフリカンな要素まで詰まった『Sometimes A Rose Will Grow In Concrete』は、彼女が初めてアルバム全曲のプロデュースまでを自ら手がけた作品だ。

このアルバムは初めて全曲の作詞作曲からプロデュースまでをひとりでやったから、今回のアルバムは今までで一番、私がどういうアーティストかを的確に写し取ったポートレートになったと思ってる。やっぱり他のプロデューサーたちとやる時とは全然違った。(他のアーティストとやると)他人の声が入るからね。でも自分ひとりでプロデュースすれば、生まれたものはまさに自分自身になるわけだから

「2年……2年半前くらい」に表題曲となった“Sometimes A Rose Will Grow In Concrete”が出来たことがきっかけで本格的なアルバム作りが始まったとのことだが、しかし実はセルフ・プロデュース作品にしようという発想は、最初からあったものではなかったという。

実は最初は、あるプロデューサーと一緒に作りたくて、お願いしようとしていたの。でも“彼”から連絡が返ってこなくて。私は、書いた曲をレコーディングして、まぁデモみたいなのを作っていたわけだけど、しばらくしても連絡がないから、この曲は自分でプロデュースすればいいかなって考えて。でもその時はあくまで1曲のつもりだった。そしたら3ヶ月後にはもう1曲自分でやろうってなって、気が付くと5曲出来てて。なら、アルバム全部を自分でプロデュースすればいいかって

そんな意図せぬ“偶発性”は、本作を制作するにあたっての意識の変化とも通ずる。これまでにも収録曲のいくつかはセルフ・プロデュースしていたこともあるサイだが、初めてアルバム全体を自らプロデュースしてみて、プロデューサーの視点から何か変化はあったか?という問いに、彼女はこう答えた。

技術的な観点や音楽的な観点の話になるけど、偶発的に起こったミスを時にはそのままにしておくことができるようになった。そういう間違いによって、命が吹き込まれるというか、もっと人間的な味わいになるから。たとえば意図せずスネアを二度叩いてしまった時、昔ならやり直さなきゃって思ってたけど、今はそのままでいい、それもクールだって思えるようになった

この『Sometimes A Rose Will Grow In Concrete』の発売前には、制作過程を見せるビデオも公開されているが、その中でも、そうした彼女の“人間的”なレコーディング風景が写し出されている。

そう。今回、制作過程を見せたいなって思って。

それからどういうミュージシャンが参加しているか、ギターは誰が弾いているのか、とかもみんなに知ってもらいたかった。プロデューサーとしての大事な仕事は、ある役割を任せるのに適切な人間を選ぶ、というところにあると思うの。プロデューサーの中には全部自分で演奏してしまう人もいるけど、でも、時には誰かに任せることも必要。協力してくれる人を招き入れて、その人の力を信じ、最大限のものを出してもらうようにするのも大事な仕事だと思う

制作の様子を写したこのメイキングには、ビッグ・サイこと実父のサイ・O・スミスと一緒に歌う映像もある。リード曲“Now And Later”へと続くインタールード“doowop with dad (a prelude)”のレコーディング風景だ。

私が歌っているのは父さんのおかげ。父さんは素晴らしい“耳”の持ち主で、フランキー・ライモン&ザ・ティーンネイジャーズとかドゥワップをこよなく愛している人。よく一緒に聴いていて、それで私も大好きになったんだけど。だからずっと父さんとレコーディングしたいと思ってた。それである日、『LAに来れる? レコーディングに参加してくれない?』って電話したら、すごく喜んで来てくれて。完璧にうまくいった。父さんがどんな人か、私にとってどんな存在なのかを記録に残してみたかったの

(⇒ P3へ 「同じ時期にハワード大学にいたのは、クリス・デイヴ、エリック・ロバーソン、レイモンド・アングリー……」

1. Perspective
2. Can’t Get Over You
3. Camelot
4. We Were Never Free
5. Catastrophe
6. i’ll always come back to you (a prelude)
7. Closer Than You Know
8. doowop with dad (a prelude)
9. Now And Later (Pocketful Of Joy)
10. suri speaks (a prelude)
11. Sometimes A Rose Will Grow In Concrete
12. it’s all in my mind (a reprise)