昨年、the year 2017。それは、アメリカ史上初めてヒップホップ/R&Bがロックを抜き、「全米最強の人気ジャンル」となった年。フィジカルCDどころかアルバムのダウンロード購入すら減少する中、ストリーミングや楽曲単位セールスで勢いを見せつけるラッパーやシンガーが躍進した年でもあった。社会の変化とテクノロジーの進歩に伴って消費のありかたは変わっても、チェンジング・セイムな魅力を放ち続ける我らがジャンル。そんな2017年のシーンを振り返って、bmr編集部員、執筆陣、ゲストが、それぞれの観点からベスト10を選出した。
文責/bmr編集部
(⇒P4:「荘 治虫のベスト・オブ・2017」より)
金子穂積のベスト・オブ・2017
1. DJ Khaled 『Grateful』
2. Bryson Tiller 『True To Self』
3. SZA 『Ctrl』
4. Syd 『Fin』
5. Kelela 『Take Me Apart』
6. Stormzy 『Gang Signs & Prayer』
7. Fashawn 『Manna』
8. Earthgang 『Rags – EP』
9. Organized Noize 『Organized Noize』
10. FIRE BALL 『PROGRESS』
〈Essence Festival〉に昨年は久々に行くことが出来た。一番観たかったのは大トリのチャンス・ザ・ラッパー。DJキャレド『Grateful』に収録された“I Love You So Much”で、ステージのスクリーンいっぱいに映しだされたハート・マークが未だに脳裏から離れない。さて、そのキャレド作品は、リミックスやマッシュアップも含めて、雨後のタケノコのように曲が出てくる今のような時代にはDJやセレクターの存在が欠かせないと改めて知らしめてくれたので1位に(同作にも参加しているカルヴィン・ハリス『Funk Wav Bounces Vol.1』にもヤラれました)。
以降の順位はあまり意味ないですが、そのキャレドの作品でもフィーチャーされていたブライソン・ティラーの『True To Self』が、男性ヴォーカルものでは一番のツボであった。内省的な味わいやラップ寄りながらも歌心を感じさせるフロウが気になり、何度となく聴いてしまったアルバムだ。同じような聴き方をしたのがSZAとシドの歌姫ふたりの作品。
シドのアルバムには、いかにもアリーヤを意識したティンバランド的なビートの“Know”があり、アリーヤ・リヴァイバルの流れに乗った曲も最近多く耳にする。その流れで印象的だったのがケレラの『Take Me Apart』だ。ジャネット・ジャクソン的なマナーもあり、またサウンドも先鋭的でシビれた。
ラッパーでは、音も含めてカッコイイと思ったのがストームジーの『Gang Signs & Prayer』で、ラップのフロウ的に興奮したのがファショウンの『Manna』なのだけれども、アウトキャストに出会った時の未知との遭遇、と言ったら褒めすぎになってしまうが、そんな手応えを感じたのがアースギャングだ。摩訶不思議な魅了が、これからのATLを背負ってくれそうで楽しみ。
ATLといえばダンジョン・ファミリーの元締めオーガナイズド・ノイズの『Organized Noize』だ。Netflixのドキュメンタリーでは元気がなかった感じもしたけれども、今も現役でやっている感じが伝わってきて嬉しかったので、これはゴリ推し(笑)。
そして最後は、日本のFIRE BALL。ヴェテランながらも常に向上心を忘れない彼らの姿勢と結果に勇気付けられました。
(P6:「アメリカの中学生のベスト・ヒップホップ・ソング・オブ・2017 (presented by 堂本かおる)」へ ⇒)
金子穂積
ブラック・ミュージック好きのエンジニア。ほんとはランキングに入れるべきかかもしれないですが、ここ最近は毎日K・ミシェルの新作を聴いています。