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JAMILA WOODS / 初来日のジャミーラ・ウッズが語る、アーティストとしての姿勢とシカゴ・シーン

チャンス・ザ・ラッパーのサマソニでの初来日も決定し、昨年はノーネームがやはりソールドアウトした初来日ステージで沸かせた……と、シカゴの新しい風が日本にも届き始めた絶好のタイミングで、ジャミーラ・ウッズが来日。今年1月23日(火)の1日かぎりとなったが、貴重な初来日公演を行った。その公演前日に行った対面インタビューをお届けしたい。昨年には商業リリースもされた『HEAVN』から、アーティストとしての真摯な姿勢、シカゴのコミュニティやシーンの変化について、チャーミングな笑顔を浮かべながら語ってくれた。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr)

実はあのドネル・ジョーンズの曲は、私が嫌いな曲だったの(笑)

(⇒ P1より)
こうしてM&Oでの活動からソロに踏みだしたジャミーラ・ウッズが、2016年7月に、当初はフリーで発表したのが『HEAVN』だった。オッドカップル(oddCouple)やカーター・ラング(Carter Lang)、ソーシャル・エクスペリメント(The Social Experiment)のピーター・コットンテイル(Peter Cottontale)やネイト・フォックス(Nate Fox)らがプロデュースした同作は、前述の彼女の影響源からも分かるとおり、様々な要素がブレンドされたソウル作品となった。

M&O時代には「アドベンチャー・ソウル」という謳い文句があったが、では現在のソロの音楽性について、どういう言葉で表現するか。「クールなやつを考えなきゃ(笑)」、「いい言葉を考えとこう(笑)」とおどけながら話した、彼女の答えはこうだ。彼女のジャンルに対する考え方がよく分かる説明だろう。

M&Oの音楽はいろんなジャンルを融合していて。(アドベンチャー・)ソウルと呼んだのは、ソウル自体がゴスペルを取り入れて大衆的なものにした音楽だから。

私の音楽も色んな要素をブレンドしたソウル・ミュージックだと思う。オルタナティブな要素もあって。R&Bとも言ってるけど、黒人がやっているからR&Bだって呼んでるような人たちがいる印象もあるし、私にとってはソウルのほうが自由のある表現かな。それからヒップホップからの影響ももちろん大きくて、サンプリングをしたり引用したりってことを学んだのは、やっぱりヒップホップからだから

“ブレンド”と言えば『HEAVN』では、“Stellar”ではインキュバス、“Lonely”ではポーラ・コール、表題曲“HEAVN”ではザ・キュアーの楽曲のフレーズを引用する。クレジットには記載はないが、たとえば“Stellar”の途中にはジョン・デンバーの“Leave Me On A Jet Plane”の一節も飛び出すなど、こういうところはまさにヒップホップ世代らしさと言えるか。

“Holy”で、ゴスペルの“I Woke Up This Morning With My Mind Stayed On Jesus”――ジーザスをフリーダムに変えて、公民権運動時代にフリーダム・ソングとして歌われたことでも知られる――を引用した「Woke up this morning with my mind set on loving me…」というフレーズが歌われているのは、彼女の原点がゴスペルにあることも大きい。

私は教会のある環境で育って、クワイアに入る以前から祖母に連れられた教会で妹たちと歌っていたし、多くのゴスペル曲を習ったの。教会に行くのが好きだったのは、音楽があったから。ハーモニーを重ねるのが心地よくて。だからサンプリングしたのも、そういう心地よい気持ちを取り入れて、そこから新しいものを作りたかったの

この“I Woke Up This Morning”のフレーズは、カニエ・ウェストも“Family Business”で途中でフレーズを引用していて、“Family Business”と言えばチャンス・ザ・ラッパーがリメイクしたこともある。ひょっとしてそんなシカゴ・ヒップホップの歴史も踏まえた引用かと妄想したが、さすがにそこまでの意識はなかったようで、「きっと私みたいに、みんなおばあちゃんに教会に連れられて通ってて、それでじゃない?(笑)」と笑われてしまった。それはそうか。

“Way Up”の終盤では、後ろでロブ・ベース&DJ EZ・ロック “It Takes Two”の「I wanna rock right now…」を思わせるフレーズも出てくる。

元が誰の曲だったかは覚えていないんだけど(笑)。あの曲は月についての歌だから、I’m on the rock right nowと変えて歌っているの。だから意味が全然変わっちゃってるんだけどね(笑)

また、チャンス・ザ・ラッパーが参加した“LSD”ではドネル・ジョーンズを、ダニー・トランペット(ニコ・シーガル)が参加した“Breadcrumbs”ではステレオラブの楽曲もサンプリングしているが、“LSD”でサンプリングしたドネル・ジョーンズ(この人もシカゴの人だ)の“Where I Wanna Be”については意外なエピソードも。

両方の曲とも、(サンプリングは)プロデューサーのオッドカップルのアイディア。笑えるのは、実はあのドネル・ジョーンズの曲は、私が嫌いな曲だったの(笑)。あの曲が本気で好きじゃないとかそういうことではなくて、ある時、ボーイフレンドが私に別れ話を持ち出した時に流れていたのがあの曲だったから(笑)」(⇒ P3「ソロ・シンガーとしてやっていける声だと思ってなかった」に続く)