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映画『オール・アイズ・オン・ミー』特集パート2 / 2パック伝記映画を語り尽くせ!

没後20年以上が経っても語り継がれるラッバー、2パックことトゥパック・アマル・シャクールの伝記映画『オール・アイズ・オン・ミー』特集・第2弾。同作の日本公開を目前に控えた今回は特別座談会だ。映画界と音楽界を股にかける評論家の長谷川町蔵、アフリカ大陸各地での2パック人気をまざまざと目撃した金子穂積、同映画の字幕監修を担当した丸屋九兵衛が集結した。それぞれに2パックへの愛を語る彼らがたどり着いた「今この時代に彼の人生を見つめ直す意味」とは……

座談会:長谷川町蔵×金子穂積×丸屋九兵衛(bmr) 文責:bmr編集部

Suge Owns the Night

(⇒ P1より)
丸屋「映画の中でのドレーが良かったのは、シュグが通りかかった時に嫌な顔するでしょ。すでにあの時、仲が悪かったのだなと」

金子「有名どころが出てきて興奮したのは、2パックが自身のライヴでビギー(ノトーリアスB.I.G.)を、仲の良いアーティストとして紹介するシーン。後の東西抗争に至る前の美しいエピソードとしてグっときましたね」

丸屋「ビギーといえば、この映画ではパフィがどこに出てきたのか、よくわからなかった。たぶんあれがそうなんだろうっていう人はいましたが、微妙でしたね。逆にソックリだったのがダズです」

長谷川「確かに似てましたね」

丸屋「あれ、息子らしいです。ズルいですけど」

長谷川「じゃ、『ストレイト・アウタ・コンプトン』のアイス・キューブ状態だったんですね」

丸屋「そうなんですよ。さらに反則なのが、デジタル・アンダーグラウンドのマネー・B、アウトロウズのヤング・ノーブルとアミン。なんと本人が本人役で出ているんですよ。20年以上たっているのに!」

金子「あれは本人だったんですね」

丸屋「驚きですよね。それにしても今回の映画は、今までの中でもっとも2パックが2パックらしかったなと。顔の類似性では『ストレイト・アウタ・コンプトン』のマーク・ローズが上かもしれないですが、彼は身長が足りないようで、全編を通して使うのは難しい。あと、声も違う人が担当だったようなんですよ。で、『ストレイト・アウタ・コンプトン』の2パック声担当の人は今度、“ドッグ・パウンド物語”で2パック役をするらしい!」

長谷川&金子「ドッグ・パウンド物語!」

丸屋「進行中らしいですが、たぶん、ダズの息子がダズをやるんじゃないですか」

長谷川「で、またシュグがヒドイことするんでしょ。これで“シュグ・ヒドイこと三部作”完結ですね」

丸屋「でも、『オール・アイズ・オン・ミー』のシュグは最後に2パックを救おうとするシーンがあるじゃないですか」

長谷川「ちょっと義理人情がある感じですよね」

金子「あれ、ホントかな?と、ちょっと怪しい感じが……」

丸屋「たぶん、『ストレイト・アウタ・コンプトン』みたいに描くとシュグ本人がまた暴れると思って、極悪描写を控えたんじゃないですかね?」

金子「当時の状況って、特に日本だと情報が少なく錯綜していたので、こういう映画を観ればハッキリするのかなと思ったんですけど、やっぱりハッキリしなくて、真実は闇の奥というか」

丸屋「結局、犯人も真相もわからないから仕方ないですね。でも、東西抗争を西側から描いた珍しい例でもあるかもしれない

 

To Live & Die In L.A. ?

丸屋「ところで、似ていないという意味でのワースト・アクターは誰ですか?」

長谷川「やっぱりスヌープじゃないの?」

(一同爆笑)

丸屋「『ストレイト・アウタ・コンプトン』の時はモス・デフみたいな人だったしね。今回も、アフロにすればスヌープに見えると思ってるフシがある」

長谷川「2パックほどインパクトのある顔じゃないから難しいよね」

金子「フワッとした喋り方とか仕草は真似しやすいんでしょうけど」

丸屋「そうそう。2パックも喋ってる時に、全てに破裂音が入っているような話し方とか身体が大きく動くとか、あの感じはよく出てましたね。怒っているリリックをラップしてる時もニコニコした顔だったり、そういった感じはよく出てました。今回の2パック役、ディミートリアス・シップ・ジュニア、凄い縁ですよね。『The Don Killuminati: The 7 Day Theory』でプロデュースした人の息子という。なんだろう、この奇跡は」

長谷川「そんな近くにいたんだと」

金子「運命を感じますね。ところで、ドレーなんかは今でも現役で絶好調な状況ですけど、2パックって、今の若い子はどう思っているんですかね? この映画をどう観るのか、興味ありますね」

長谷川「ジミ・ヘンドリックスみたいな、ある意味、シンボルなんでしょうね。それをケンドリック・ラマーなんかが、より強めている」

丸屋「ケンドリックは、子供の時に“California Love”のPV撮影の現場を見て、ラップを志したらしいですよ」

長谷川「2パックが生きていたら、サウスの流行り方ももっと遅かったんじゃないかな。ヒップホップって集団のアートなんで、誰かが欠けてもそんなにシーンが変わるものではないんですよ。でも2パックの死後、確実に西は衰退した。乱暴な言い方すると、ケンドリックが出るまで西海岸はオワコンと言われ続けた。不在があれだけ影響したっていう人も、今のところ彼だけなんじゃないかな」

金子「それはあるかもしれないですね。とはいえ、さっきも言いましたけど、“ウェッサイの2パック”として活躍した期間は、実は極めて短いんですよね」

丸屋「彼がLAの住人だったのは最後の1年だけじゃないかな。95年10月に出所して、96年9月に亡くなっているから」

長谷川「映画撮影が多いから割と滞在はしていたんだろうけど。“To Live & Die In L.A.”を聴くと、ずーっと住んでいたかのように思ってしまいますが」

金子「死ぬと伝説化されやすいので、その死んだタイミングがウェッサイのDeath Row時代だった、ということかも」

 

Too Fast Too Furious

金子「映画では、真面目なシェイクスピア青年から、ラッパーになり、どんどんと過激になっていきますよね。で、後半になればなるほど急展開が多く、気がつくと殺されちゃうという。そのスピードがあまりに速いんですけど、実際に彼の生き様はあのような感じで展開していたと思うと、伝記映画としてはふさわしい構成だったのかなと。あと、過激な一方で、人間的な温かい部分も描かれていたのも良かったですね」

丸屋「最期のほうで、キダーダと会話し、出かけるかどうかを逡巡する2パックのシーンがあるじゃないですか。実際にあんな逡巡したとは思わないんだけど、我々はその後に何が起きるかを知っているから、行くな!って思いますよね。あれは映画として上手いです」

金子「あの悩む2パックは、破天荒なイメージとは真逆ですよね」

丸屋「2パックの少年時代、近所のドラッグ・ディーラーが自分には優しいけど、未払いのヤツはボコボコにしたり、刑務所の中で2パックを気遣い人生を諭してくれるような人が、よりによって人を殺してしまったり。彼本人を含めて、人間の二面性を強調した映画になっていると思うんですよね」

金子「本当に、一般の人が想像しえないほどの壮絶かつ濃密な人生を送ったのだなと」

長谷川「キャリアわずか4~5年、25歳で死んだ人のわりには、とてつもなく長く生きた人のような人生。それを無理やり2時間ほどに収めたのがある意味スゴいですよね」

金子「ですよね。ブラック・パンサーのお母さんが裁判を勝ち取った時から始まるのも普通じゃないかなと」

長谷川「2パックは胎児の状態で出演ですからね。そういった意味で、彼の出自をハッキリと描いた映画ということが面白いと思います。この映画の日本公開が2017年12月末で、その約1ヶ月後に『デトロイト』が公開されますよね。で、デトロイトの事件がブラック・パンサーを産み、ブラック・パンサーが2パックを産んでいるんです。そんな出自のせいか、彼は割と微罪で逮捕されているでしょ。そういうことは今にも繋がっているかなと。黒人史の中に置かれた2パックっていうのが面白い」

金子「白人警官による黒人射殺の事件は、今でも変わっていないですもんね」

丸屋「その意味では、ますますひどくなっている感もある今現在だからこそ、映画『オール・アイズ・オン・ミー』を観る意味がありますね」

 

映画『オール・アイズ・オン・ミー
2017年12月29日(金)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー