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映画『オール・アイズ・オン・ミー』特集パート2 / 2パック伝記映画を語り尽くせ!

没後20年以上が経っても語り継がれるラッバー、2パックことトゥパック・アマル・シャクールの伝記映画『オール・アイズ・オン・ミー』特集・第2弾。同作の日本公開を目前に控えた今回は特別座談会だ。映画界と音楽界を股にかける評論家の長谷川町蔵、アフリカ大陸各地での2パック人気をまざまざと目撃した金子穂積、同映画の字幕監修を担当した丸屋九兵衛が集結した。それぞれに2パックへの愛を語る彼らがたどり着いた「今この時代に彼の人生を見つめ直す意味」とは……

座談会:長谷川町蔵×金子穂積×丸屋九兵衛(bmr) 文責:bmr編集部

Poetic Juice

丸屋「映画『オール・アイズ・オン・ミー』は、ラッパー、2パックの伝記映画。ですが、彼は映画俳優としても名を残していますよね」

長谷川「初めて俳優として起用された『ジュース』で彼を知ったんですけど、もう最初から演技が上手くって、誰だコイツは?と思ったのを覚えていますね」

丸屋「ソロ・デビュー作『2Pacalypse Now』が91年11月リリースで、明けて92年1月17日に『ジュース』は全米公開だったんですよ」

長谷川「だからソロも出していない時期に映画のオーディションに受かって起用されたというのが、もの凄いことですよね」

金子「どんなオーディションだったのかを、映画『オール・アイズ・オン・ミー』でも再現して欲しかったなと。でも、そのソロ・デビュー前のタイミングで、Interscope Recordsに“Brenda’s Got A Baby”を売り込みに行くシーンがありますよね。最初は否定されても、あの話しっぷりで、お偉方を味方につけるという。ああいう人のハートを掴むスキルの高さが、映画のオーディションに受かった時にも発揮されたんでしょうね」

丸屋「ああ、確かに。ベイエリア時代の2パックをケアした詩の先生、レイラ・スタインバーグが登場しますよね。2パックの詩集『ゲットーに咲くバラ』で彼女が書いた序文に、2パックが詩のワークショップに参加した時のエピソードがあるんです。“初日にして彼が場を仕切るようになった”と。だから、オーディションでも、審査されるよりも自分の話に巻き込むタイプだったのかも」

長谷川「取っ付きの良さというのは、キダーダ(・ジョーンズ)と知り合った時にも描かれてますよね。父のクインシー・ジョーンズのことをディスっていたのに、そこから挽回してマイナスを無理やりプラスに転じるシーン。ああいうところに人間力を感じるなと」

丸屋&金子「あれは凄い」

長谷川「できれば、クインシーもパパとして登場するシーンが欲しかったですね。大豪邸に緊張しながら会いに行く2パックを見たかった」

 

MC New York in tha House!

丸屋「最初の話題に戻ると、演技ができるのは、やはり、ラッパーの前に役者だったからですよね」

長谷川「そうですね。まず俳優なんですよね」

丸屋「最初は、シェイクスピア俳優を目指していた青年だったと」

金子「東海岸を離れてベイエリアに向かう時に、ジェイダ・ピンケットに別れの詩を披露するシーンもありますしね。この映画については、ジェイダ本人が2パックとの関係の描かれ方が違うとブチまけてはいますが……」

 

丸屋「それを言い出したら、『ストレイト・アウタ・コンプトン』だってウソだらけですから。とにかく、ベイエリアに移住して、レイラ・スタインバーグを通じてデジタル・アンダーグラウンド入りすると」

金子「それにしても最初のMCネームが、なんで“MCニューヨーク”になってしまったんでしょうかね? 言わんとするところは分かりますけど、かなり恥ずかしい」

長谷川「当時、ヒップホップを志す地方の若者にとっては、NY出身というのは“スゴイやつがきた”ってことだったんでしょうね」

丸屋「映画を観ると分かるんですけど、西海岸に行く前、ボルティモアにいた頃から、やたらNYって書かれている服を着ているんですよね。しかも手書きっぽい」

長谷川「その頃からめっちゃアピールしていたわけだ」

金子「NY生まれということは彼にとって、アイデンティティの大きな部分を占めていたのかもしれないですね。今だと、LAの2パックと言われるのが普通かと思いますし、実際この映画のタイトルも、Death Row時代のアルバム『All Eyez On Me』(1996年発売)から取られてます。でも、そのアルバムのリリース当時、2パックがウェッサイの顔、LA代表みたいに言われるようになったことに、僕は結構、違和感があったんですよね」

長谷川「日本人にとって、ベイエリアとLAが違うっていう意識がないじゃないですか。だからその前のデジタル・アンダーグラウンド時代はオークランドなのに、やっぱ西でしょ、みたいな。実際は、北カリフォルニアと南カリフォルニアはかなり違うんだけど」

 

California Love/Hate

丸屋「デビュー作『2Pacalypse Now』や続く『Strictly 4 My N.I.G.G.A.Z…』は、デジタル・アンダーグラウンドの面々にサポートされつつも、音はパブリック・エネミーっぽくもあった。私が一番好きな3作目『Me Against The World』に至っては、タイトル曲を手がけたのはソウルショック&カーリンでしたね。もうアメリカを超えちゃって」

長谷川「北欧産(笑)」

金子「そうそう。なので、3作目までは“ウェッサイ”とか“Gファンク”いう流れとは異なっていたのかなと。映画の中でも、ベイエリアを拠点としつつもNYで活動するシーンも多いですし。なので、個人的に一番好きな作品は、ソロではなくて、グループ名義の『Thug Life : Volume 1』だったりしますね。ベイエリアの仲間たちもいて、プロデューサーにNYのイージー・モー・ビーもいたりして」

長谷川「本当の2パックって、そのアルバムとやっぱり『Me Against The World』なのかなって思うんですよ。素顔が見えるというか。最初の2枚は兄貴分たちの色が強いし、それより後はDeath Rowのシュグ色が強いというか」

金子「同感です。ちなみに、長谷川さんの一番好きなアルバムはどれですか?」

長谷川「僕は悪びれずに『All Eyez On Me』ですね」

丸屋「なんで、“悪びれずに”なんですか(笑)」

長谷川「それが招いた負の側面などを見てしまうとね。でも、ベタですがこのアルバムを挙げておかないと本人も浮かばれないかなと。ヒップホップ史上初の2枚組ですし」

丸屋「あの作品は圧倒的なインパクトがあるんですけど、玉もあるけど石もあるという印象が私には強い。でも、ディスク2の方がずっと良い気がしている。サグ・ライフ/アウトロウズの面々が入っているんですよね」

長谷川「こっちが普段着なんでしょうね」

丸屋「たぶん、ディスク1が表の顔なんだな。スヌープ、ダズ、コラプトやK-Ci&ジョジョがいて」

金子「極め付きの“California Love”でドクター・ドレーとロジャーですね」

長谷川「ホントにお祭りですね。ドレーは、シュグが2パックを連れてきたのをどう思っていたんですかね」

丸屋「とっておきの“California Love”を奪われたので……あ、でも、そのPV撮影風景ではニコニコしているので、そんなに嫌っていなかったんじゃないかな。それにしても、2パックがドレーに言った、『どうせ、すぐアルバムを出すわけじゃないでしょ』というセリフが、ドレーという人を言い当ててます」

長谷川「図星だ。ほっといたら、あんなヒット・ポテンシャルのある曲を何年も寝かしてダメにしてしまっていたでしょうね」(⇒ P2に続く)

 

映画『オール・アイズ・オン・ミー
2017年12月29日(金)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー