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ERIC ROBERSON special / 知る人ぞ知るカリスマ、エリック・ロバーソンを振り返る

いよいよ11月に、およそ10年ぶりにエリック・ロバーソンが来日する。その名前は至るところで見かけるとは言っても、その才能に見合った評価が本国においてもなされていない……というのが実情だろう。しかし、90年代から現在に至るまで、ミュージック・ソウルチャイルド、ヴィヴィアン・グリーン、ジル・スコット、DJジャジー・ジェフ、J・ディラ、ジェイムズ・ポイザー、マーシャ・アンブロージアス、レイラ・ハサウェイ、DJスピナ、フォーリン・エクスチェンジ、ロバート・グラスパー、KING……と数々のコラボレーションを積み重ねてきた「ミュージシャンズ・ミュージシャン」であり、インディR&B~ソウル界の王とも言える実力者だ。来日公演を前に、改めてエリック・ロバーソンというアーティストについて振り返ってみよう。

文/林 剛

今ではネオ・ソウルを中心としたR&Bの世界に必要不可欠な人材に

(⇒ P2より)
同時にネオ・ソウル・リヴァイヴァルに火をつけたロバート・グラスパー・エクスペリメントの2013年作『Black Radio 2』(のデラックス盤)に招聘されたのも、かつてジル・スコットやミュージック・ソウルチャイルドと組んでいたエリックだけに頷けるところだ。そのグラスパーが監修したジェフ・ブラッドショウの豪華ゲスト招聘ライヴ盤『Home:One Special Night At The Kimmel Center』(2015年)でも、ライヴ・ヴァージョンとスタジオ・ヴァージョンの2種類が用意されたグラスパーとトゥイートとの共演曲“All Time Love”で歌声を披露。ジェフはエリック同様ATOJ周辺でジル・スコットの作品などに参加していたフィリーのトロンボーン奏者だが、昨年から今年に初めに大腸憩室炎で入院したジェフのベネフィット・コンサート(2017年1月20日)のホストを務めたのもエリックだった。

また、かつてはジル・スコット、最近ではジャネット・ジャクソンのツアーに参加していたフィリーの名ドラマー、リル・ジョン・ロバーツの2014年作『The Heartbeat』の冒頭曲“Space”にも、“若者以上おじさん未満”の誠実なR&Bを歌う旗手として、アンソニー・デイヴィッド、ストークリー(ミント・コンディション)、ミュージック・ソウルチャイルドと並んでフィーチャーされていたことも記憶に新しい。


Jeff Bradshaw feat. Robert Glasper, Eric Roberson & Tweet – All Time Love [2015]


Lil John Roberts feat. Eric Roberson, Anthony David, Stokley Williams & Musiq Soulchild – Space [2014]

一方で、コンテンポラリー・ゴスペルの世界にも、フィリー時代の友人であるタイ・トリベットのグループ(タイ・トリベット&G.A.)などに関わってきたエリック。2013年にはフレッド・ハモンドが仕切るテナー・ヴォイス四人衆ユニット=ユナイテッド・テナーズに、フレッド、デイヴ・ホリスター、ブライアン・コートニー・ウィルソンとともに参加し、久々にメジャー・アーティストの一員としての姿を見せてくれた。エリックが多くのことを学んだというフレッドの古巣ゴスペル・グループ=コミッションドを彷彿させながら90s R&Bヴォーカル・グループの如き濃密さで迫るアルバムからは、94年にワーナーから出した“The Moon”にも通じるヴォーカルの熱さを感じ取ったものだ。


United Tenors (Fred Hammond, Dave Hollister, Eric Roberson & Brian Courtney Wilson) – Here In Our Praise [2013]

ユナイテッド・テナーズで顔を合わせたデイヴ・ホリスターとはエリックの2014年作『The Box』でもデュエットしているが、このアルバムではファロア・モンチやトレイシー・リーといった東海岸のヴェテラン・ラッパーに加え、当時まだデビュー・アルバムを出していなかったキングとも共演。キングとの“Just Imagine”は『We Are KING』(2016年)に通じる爽快かつドリーミィな曲で、プロデュースはその数年前にLAのメキシコ料理店でエリックに「一緒に写真を撮ってくれませんか?」と声を掛けてきた(キングの)パリス・ストローザーが手掛けているのだが、パリスがアイドル視するほどエリックの存在はR&B界において大きいものなのだろう。


Eric Roberson feat. KING – Just Imagine [2014]

今ではネオ・ソウルを中心としたR&Bの世界に必要不可欠な人材となったエリックは、DJジャジー・ジェフによる音楽道場的なプロジェクト「The PLAYlist」の一環として制作されたアルバム『Chasing Goosebumps』(2017年)にもソングライター/バック・ヴォーカリストとして参加している。グレン・ルイスが全曲を歌うアルバムで、ATOJ一派を含む旧ネオ・フィリーの裏方や現行の気鋭クリエイターらと腕を競い合っているのだが、2017年にはエリック本人もEP3部作として『Earth』『Wind』『Fire』の3枚を順次リリース。

『Earth』は創造の源となるインスピレーション、『Wind』は風のように自分ではコントロールできない愛、『Fire』は未来に向かおうとする情熱がテーマだそうで、3作合わせて「自分にとってのマーヴィン・ゲイ『What’s Going On』的な作品だ」と彼は言う。現在のアメリカが抱える諸問題を1年間にわたってリスナーと共有して考えていきたいそうで、ゆえに3枚のEPを約3ヵ月おきにリリースすることにしたのだそうだ。ダニエル・クロフォード、カイディ・テイタム、ジェイムズ・ポイザー、ヴィダル・デイヴィスらが制作陣に名を連ねるこれらは『Chasing Goosebumps』の副産物とも言えるシリーズで、ネオ・ソウル、ビート・ミュージック、ゴスペルを繋ぐような内容は「最近フューチャリスティックなソウルに関心がある」というエリックの気概が感じ取れるようで頼もしい。とりわけ、TIGALLERROのアルバムにも関与していたダニエル・クロフォードとは密に交流を図っているようで、今後の展開も期待させる。


Eric Roberson – Love Her (prod. by Daniel Crawford) [2017]


Eric Roberson feat. Will Downing – Lyrics Of Pleasure (prod. by Kaidi Tatham) [2017]

 

そんなエリックが、EP3部作の完結編となる『Fire』(10月20日リリース)を出してから1ヵ月後に〈かわさきジャズ 2017〉のため来日することが決定した。〈Nao Yoshioka with special guest Eric Roberson〉として、11月18日(土)に[ミューザ川崎シンフォニーホール]で行われるライヴがそれで、エリックが日本で歌を披露するのは今回で3度目となる。

初来日公演は、アメール・ラリュー、Tina(彼女はフィリーでの〈Black Lily〉に初めて出演した日本のシンガーでもある)との3人で行った2003年のツアー。2回目の来日公演は2007年に[コットンクラブ]で行ったアンソニー・デイヴィッドとのジョイント・ライヴ。そして3回目となる今回はUSにて同じPurposeに籍を置いたNao Yoshiokaとの共演ライヴとなる(現在エリックはPurposeとの関係が切れているようだ)。エリックとNaoは、アメリカ国内で偶然同じ飛行機に乗り合わせ、到着地の空港でNaoのスタッフがエリックに声を掛けたところ、Naoがエリックのライヴに飛び入りで参加することになったという経緯があり、つい先日の〈Capital Jazz Cruise 2017〉でも同じ船に乗ってジャム・セッションを行ったという。「彼女とは出会うべくして出会った」と話すエリック。既に息はピッタリと言ってよさそうだ。

今回の公演でバックを務めるミュージシャンも腕利き揃いだ。リズム・セクションは、フィラデルフィア在住の売れっ子ギタリストでNaoの国内外の公演でバンマスも務めた我らが宮崎大(Dai Miyazaki)をはじめ、エリックやラヒーム・デヴォーンの作品に参加していたキーボードのアーロン・ハーディン(Aaron Hardin)、ベースのジェイムズ・ブラッテン(James Bratten)、ドラムスのブランドン・マクリン(Brandon Maclin)の4人。そしてバック・ヴォーカルとして、RC&ザ・グリッツのクラウディア・メルトンとの男女デュオ=デュオ・シティとして活動するD・モーリス(D Maurice)が同行。D・モーリスはエリックが参加したソロ・アルバム『Mosaic』を2016年に出しており、エリックがダニエル・クロフォードと出会って意気投合したのも同アルバムのセッションにおいてだったという。とにかく今回は、ネオ・ソウル好きにはたまらないメンツが脇を固めるといった具合だ。

エリックのステージがどんな雰囲気なのか……来日前に確かめておきたいという方には、ワシントンDCでの公演を収めたライヴDVD+CD『Erro Live Vol: DC』(2006年)をお薦めしておきたい。御婦人たちを笑わせながら誠実な歌を聴かせるショウは、チタリン・サーキットのネオ・ソウル版とでも言いたくなるもので、彼の音楽に対する熱い思いとジェントルな人柄が伝わってくる。2012年と2015年に〈Essence(Music)Festival〉に出演した時の印象も同じで、超満員のスーパーラウンジ(ドーム内にある小ステージ)で“Couldn’t Hear Me”をエモーショナルに歌い込めば、ア・トライブ・コールド・クエストの名曲メドレーでヒップホップ育ちのルーツも開陳。そんなエリックの3度目となる来日公演。bmr読者であれば間違いなく共感できるステージになることを保証するとともに、Naoとステージに立つことで両者それぞれに新しい可能性が生まれることを期待したい。


Nao Yoshioka with special guest Eric Roberson
日時:2017年11月18日(土)開場15:00 / 開演16:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
価格:SS席6,000円 / S席5,000円 / A席4,000円 / B席3,000円
出演者:Nao Yoshioka, Eric Roberson 他 ※フロントアクト m.s.t.