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FEATURE

ERIC ROBERSON special / 知る人ぞ知るカリスマ、エリック・ロバーソンを振り返る

いよいよ11月に、およそ10年ぶりにエリック・ロバーソンが来日する。その名前は至るところで見かけるとは言っても、その才能に見合った評価が本国においてもなされていない……というのが実情だろう。しかし、90年代から現在に至るまで、ミュージック・ソウルチャイルド、ヴィヴィアン・グリーン、ジル・スコット、DJジャジー・ジェフ、J・ディラ、ジェイムズ・ポイザー、マーシャ・アンブロージアス、レイラ・ハサウェイ、DJスピナ、フォーリン・エクスチェンジ、ロバート・グラスパー、KING……と数々のコラボレーションを積み重ねてきた「ミュージシャンズ・ミュージシャン」であり、インディR&B~ソウル界の王とも言える実力者だ。来日公演を前に、改めてエリック・ロバーソンというアーティストについて振り返ってみよう。

文/林 剛

インディペンデントでの活動を誇りながらオーヴァーグラウンドとの接点も見出していく

(⇒ P1より)
こうして説明すると、フィラデルフィア出身と思われるかもしれないが、エリックはニュージャージー州ラーウェイ出身。活動拠点もニュージャージー州で、同州フランクリンパークに[Blue Room]というスタジオを構えて音楽を創り続けている。フランクリンパークはNYとフィラデルフィアの間にある街だが、地元ニュージャージーを中心に、フィラデルフィア、そして学生時代を過ごしたワシントンDCという東海岸一帯が広い意味での彼の音楽的拠点と言えるのかもしれない。むろん、一緒に音楽を作る仲間やコラボするアーティストも必然的にその地域の人たちが中心となる。

フィリーにて主に裏方として活躍していた時代のエリックは当時、シンガーとしてのアルバムも自主レーベルのBlue Erro Soulからひっそりとリリースしていた。まず、2001年に出したのがデビュー・アルバムとなる『The Esoteric Movement』。オリジナルが入手困難だったため後に『Esoteric…』として2曲を追加して再発されたこれには、オシュンラデやレッドヘッド・キングピンのほか、当時ネオ・フィリーのシーンを支えていたサディアス・トリベット(b)、フランク・ロマーノ(g)、パリス・ボウエンス(key)もプロデュースに関与。大ファンだったというモブ・ディープにインスパイアされた“Crazy”や以前112に提供した“Funny Feelings”のセルフ・カヴァーを含む同作でシンガーとして再出発を果たしている。

また、2003年には『The Vault, Vol. 1』を500枚限定でリリース。ジル・スコットとの“One Time”のほか、ドゥウェレに提供した“Hold On”やカール・トーマスに歌われる“Rebound”の自演ヴァージョンを収めた同作は、アルバムの表題が示唆するように、過去に書いたり歌った曲などを蔵出し的な感覚で集めたアルバムだった。プロデュースには、前作にも関わった面々の一部に加えて、ATOJに属していたMCのケヴ・ブラウン、同じくATOJ組のヴィダル・デイヴィス、ハワード大学時代からの音楽パートナーで後にジャーメイン・ハードソウル名義でエリックとのコラボ曲も出すジャーメイン・モブリー、そしてジェイムズ・ポイザーとジェイ・ディー(J・ディラ)らが関与。

さらに、翌2004年には大幅に楽曲を入れ替えた続編的な『The Vault, Vol. 1.5』を発表。以前Erro名義でオシュンラデ主宰のYoruba Recordsから出していた“Change For Me”や当時フロエトリーとして世に飛び立ったばかりのマーシャ・アンブロージアスを招いた“She Ought To Know”などの収録でも話題を呼んだ。


Eric Roberson – When Love Calls (prod. by James Poyser & Jay Dee) [2003]


Eric Roberson feat. Marsha Ambrosius – She Ought To Know [2004]

続いてリリースされたのが前述した“前菜盤”こと『The Appetizer』で、フィリーやDC時代の仲間との共同作業を中心とした、新曲を含むこの未発表/レア音源集は、前記3作と同じく裏方としてのキャリア・アピールも兼ねた作品にして次作『…Left』へのプロローグだった。

かくして2007年にリリースされた『…Left』は、過去作に関わったミュージシャンと組みながらツアー・ディレクターでもあったギタリストの親友カート・チェンバースを影のブレーンとして起用(当時エリックとカートはスモーク・シグナルズなるユニットを組んでいた)。アルジェブラとの共演、ハワード大学時代の友人でエイメリーやビヨンセを手掛けて売れっ子となっていたリッチ・ハリソンとの共作など、インディペンデントでの活動を誇りながらオーヴァーグラウンドとの接点も見出していく。“Been In Love”では当時リトル・ブラザーにいたフォンテがラップを披露しているが、「フォンテが突然電話をしてきて、双子だと思うくらい意気投合した」ことが後のフォーリン・エクスチェンジ一派との交流へと発展し、フォンテと一緒にTIGALLERROを名乗ってデュオ・アルバム(2016年)を作るまでになったのだろう。ラップするように歌うエリックと、歌うようにラップするフォンテ。今やフォンテはラッパーというよりはシンガーだが、ふたりはそれぞれ別の山道を登りながら同じ頂点を目指した兄弟と言えるのかもしれない。


Eric Roberson feat. Phonte – Been In Love [2007]

レイラ・ハサウェイやスラム・ヴレッジのT3との共演も話題を呼んだ2009年作『Music Fan First』ではさらにゲストが増え、“Howard Girls”なる曲ではブランドン・ハインズ、ジーノ・ヤング、アーロン・アバナシーというハワード大学時代の友人アーティストたちと同大の女の子たちについて歌い、他にも同じくハワード出身のサイ・スミス、そしてW・エリントン・フェルトン(ウェス・フェルトン)やウェイナを招くなど、ワシントンDCコネクションをアピール。この頃、ラヒーム・デヴォーンのブレイクもあってDCのシーンが密かに注目を集めていたが、DC関係者を中心としたインディ・アーティストに光を当てた同作はラヒームの“レフト”をいくようなプログレッシヴな内容でもあった。アルバム・ジャケットに写るルイス・テイラーの96年作『Lewis Taylor』もそんなイメージを増幅させる。

そして収録曲の“A Tale Of Two”と“Still”は、それぞれ第52回/第53回のグラミー賞で最優秀アーバン/オルタナティヴ・パフォーマンス部門にノミネートされるという快挙も果たしている。


Eric Roberson feat. Brandon Hines, Geno Young & Aaron Abernathy – Howard Girls [2009]


Eric Roberson – Still [2009]

グラミー・ノミネートを経ての2011年作『Mister Nice Guy』は、Purpose Music Groupと契約し、配給がeOne Musicということもあってか、限りなくメジャーに近づいたという印象を受けたが、そう感じたのはジョージ・ベンソン“Give Me The Night”使いでチャブ・ロックを招いた“Summertime Anthem”がエリック史上最もキャッチーなアップ・チューンだったせいもあるのだろう。フォンテをはじめ、元ジャネイのジーン・ベイラー、フィリー時代からの旧縁と思われるヘゼカイアらとの共演も上々。そして2010年代以降のエリックは、まさに“共演”がキーワードのひとつになってくる。


Eric Roberson feat. Chubb Rock – Summertime Anthem [2011]

そうした共演の一部は後に『B-Sides, Features & Heartaches』(2014年)という編集盤にまとめられ、ウェス・フェルトン、コレット、レ・ヌビアン、DJケミットらとのコラボ曲が、2010年以前のアンジェラ・ジョンソンやDJスピナ、M-Swiftなどとの共演曲と合わせて収録。収録曲以外でも、ロンダ・トーマスのクリスマス盤、南アフリカのグレッグ・ディーンによる世界進出アルバム、盟友ゴードン・チェンバースの最新作、そしてフォーリン・エクスチェンジやロバート・グラスパー周辺まで、「いつも違う帽子をかぶっていたい(=いつも違う現場で仕事をしたい)」と言うように、様々な方面からエリックの甘くテンダーなヴォーカルが聞こえてきた。

とりわけフォンテがニコレイと組むフォーリン・エクスチェンジ(FE)とは、かつてATOJ周辺として活動していた状況と似た関係性があり、FEの2013年作『Love In Flying Colors』では“Better”を歌い、FE一派の鍵盤奏者であるゾー!のアルバムには2011年作『SunStorm』以降毎回参加。ゾー!の2013年作『ManMade』にてフォンテと一緒に客演した“We Are On The Move”はウィスパーズ“Keep On Lovin’ Me”へのオマージュとも言える曲で、ディスコ・ブギー・ブームに対する彼らなりの回答を見せてくれたという気がしなくもない。そしてFEでは、フォンテとのデュオ=TIGALLERROにまで発展していく。(⇒ P3「今ではネオ・ソウルを中心としたR&Bの世界に必要不可欠な人材に」に続く


Zo! feat. Eric Roberson & Phonte – We Are On The Move


The Whispers – Keep On Lovin’ Me [1987]

 


Nao Yoshioka with special guest Eric Roberson
日時:2017年11月18日(土)開場15:00 / 開演16:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
価格:SS席6,000円 / S席5,000円 / A席4,000円 / B席3,000円
出演者:Nao Yoshioka, Eric Roberson 他 ※フロントアクト m.s.t.