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久保田利伸 special / デビュー以来30年にして初のライヴ・アルバム

久保田利伸がキャリアを歩み始めたのは1986年。昨年から展開されてきたデビュー30周年企画の一環としてリリースされたのが、ライヴ盤『3周まわって素でLive!~THE HOUSE PARTY!~』。意外なことに、長いキャリアで初めてのライヴ・アルバムだ。ツアーを目撃した林 剛が、その音盤に収められた久保田の想いを、あくまでbmr読者向けに読み解く。

文/林 剛

序盤、特に“Shake It Paradise”を歌う久保田……30年間あのテンションをキープしていることに驚く

(⇒ P1より
 バンド・メンバーは、前述のDJ DAISHIZENを含め大半が、DVD/Blu-ray化もされた2015年のツアー〈L.O.K. Supa Dupa〉の参加メンツとなる。キーボードの柿崎洋一郎とGakushi、ギターのオオニシユウスケ、ベースの森多聞、バック・ヴォーカルのYURIとタイ・スティーヴンス、ジェニーク・ニコル(ニッキー・J)。
 唯一前記ツアーと違うのはドラマーで、これまで久保田ライヴの常連だったラルフ・ロール(現シック)に代わって初起用となったのは、一部で“日本のクリス・デイヴ”とも言われるFUYU。NYの教会でメイン・ドラマーを務めたこともある彼は2000年代半ばにアルーアのミュージック・ディレクターも務めた才人で、強靭なグルーヴと超絶テクで魅せる、いわゆるゴスペル・チョップス系のドラマーとして知られる。これまで久保田のライヴではファンク、特にゴーゴーのビートを叩けるドラマーとしてラルフ・ロールが重用されてきたわけだが、ゴスペル、ジャズ、R&Bの現場経験が豊富なFUYUは、それを実にクールにこなす。今回のライヴでは終盤に“Go Go Old School Medley”という久保田の懐かしい名曲(6曲)をメドレーにしたパートがあり、そこでもFUYUのプレイがおおいに活きた。DVDで観ることができるアンコール開始のドラム・ソロでも、久保田はFUYUに活躍の場を与え、新たに加入した若き才能をファンに知らしめる。

 セットリストは賑やかなアップ・チューンから濃密なスロウ・ジャムまで“ベスト・オブ久保田利伸”的な趣でありながら、隠れ名曲や近年の好調ぶりを伝えるナンバーも用意。
 前述の“OPENING JAM”を経てデビュー・アルバムの表題曲“Shake It Paradise”からシームレスに“Funk It Up”へと繋いでいく序盤、特に“Shake It Paradise”を歌う久保田は30年ほど前に「ファンキーな兄ちゃんだなぁ」と感じた印象そのままで、30年間あのテンションをキープしていることに改めて驚く。久々にステージで披露したという“誓い”に続いては、NHK紅白歌合戦(90年)でのNYからの生中継も思い出されるアリソン・ウィリアムズとのバラード“Forever Yours”をバック・ヴォーカルのYURIとデュエット。当時紅白で久保田とアリソンのデュエットを見てからこの曲を歌い続けてきたというYURIがアリソンになりきり、まだ“ブラコン” “クワイエット・ストーム”という言葉が有効だった時代にリスナーを連れ戻す。
 また、ステージ後半には『THE BADDEST~Collaboration~』にて新曲として披露したミュージック・ソウルチャイルドとの“SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~”をタイ・スティーヴンスとメロウにデュエット。2000年代初頭にタイ・スティーヴンス&ロマンタシー名義で作品を出していた(近年はタイ・スティーヴンス&ソウルジャーズ名義で活動している)タイはミュージックと同じフィラデルフィア出身だが、ジェイムス・イングラムに近いハスキーで深みのある歌声はミュージックとは違う味わいがあり、その違いを聴き比べるのも一興だろう。こうしたデュエットで英語詞の曲を歌う姿には、アンジー・ストーンやジョナサン・リッチモンドと共作したネオ・ソウルなバラッド“SHADOWS OF YOUR LOVE”も含めて「TOSHI」としてUS R&Bシーンとコネクトした作品群も思い出され、勝手を言わせてもらえば、もう一枚海外R&B勢と組んだアルバムを作ってほしいとも思ってしまった。

 お約束の“LA・LA・LA LOVE SONG”では、バック・ヴォーカリストの3人がデルフォニックス“La La Means I Love You”のサビをハモってから歌い出すという粋な演出も。
 また、アルバムには未収録となったが、自分が観た大阪公演では“Tomorrow Waltz”の前にYURIたちにアリシア・キーズ“If I Ain’t Got You”を即興で歌わせる場面もあり、こうしたシーンからもジャム・セッションのようにラフで自由な雰囲気が感じられた。随所でバンド・メンバーに指示を出す久保田の所作はJB風、か。
 そして、今回のライヴで特に目立ったのがスティーヴィ・ワンダー曲の挿入。前述の“Go Go Old School Medley”の基調になっていたのは“Sir Duke”だし、“Bring me up!”では“I Wish”のベースラインをタイ・スティーヴンスの口真似も含めて織り込み、アンコールでは“Another Star”のカヴァーから同曲に影響を受けて作ったとされる自身の“You were mine”に繋げていく……といったように、歌手デビュー前からデモ・テープなどでスティーヴィの曲を歌っていた久保田のワンダーラヴァーぶりを随所で発揮していた。

 また、アルバムでは省かれたが、衣装替えのため久保田がステージオフした際には、昨年から今年にかけて亡くなった3人のソウル・グレイツへのトリビュートがバンド・メンバーたちによって行われた。モーリス・ホワイト追悼としてタイ・スティーヴンスがアース・ウィンド&ファイア“Getaway”を歌い、DJ DAISHIZENのプレイによるプリンス“Kiss”(とインクレディブル・ボンゴ・バンド“Apache”とのミックス)を挿んで、ジェニーク・ニコルがリオン・ウェア追悼としてリオン作のマイケル・ジャクソン“I Wanna Be Where You Are”をエモーショナルに歌い上げたメドレーは、久保田も出演した「ソウル・トレイン」的なエンターテインぶりでもあったと思う。(⇒ P3に続く

[CD]
1. OPENING JAM
2. Shake It Paradise
3. Funk It Up
4. 誓い
5. Forever Yours (with YURI)
6. Tomorrow Waltz
7. Upside Down
8. Free Style
9. LA・LA・LA LOVE SONG
10. SOUL BANGIN’~B.LEAGUE EARLY CUP VERSION~
11. Bring me up !
12. SHADOWS OF YOUR LOVE
13. Go Go Old School Medley
14. SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~ (with Ty Stephens)
15. LOVE RAIN~恋の雨~

[特典DVD] *初回限定生産盤のみ
~THE HOUSE PARTY~ “Eyes from The Back Door”
1. ENCORE JAM
2. Another Star~You were mine
3. Cymbals