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久保田利伸 special / デビュー以来30年にして初のライヴ・アルバム

久保田利伸がキャリアを歩み始めたのは1986年。昨年から展開されてきたデビュー30周年企画の一環としてリリースされたのが、ライヴ盤『3周まわって素でLive!~THE HOUSE PARTY!~』。意外なことに、長いキャリアで初めてのライヴ・アルバムだ。ツアーを目撃した林 剛が、その音盤に収められた久保田の想いを、あくまでbmr読者向けに読み解く。

文/林 剛

30周年を迎え、もう一度デビュー前後の無邪気な自分を思い出して自由にライヴを

 86年に“失意のダウンタウン”でデビューしてから30年が過ぎた久保田利伸。昨年から今年にかけてデビュー30周年にちなんだ企画が進んできたが、その締め括りとして出されるのが直近のツアーを収めたライヴ・アルバムだ。

 過去にはいくつかのコンサート映像がDVDなどの形で出ていたものの、ライヴ・アルバムは今回が初めて。長年彼の音楽を聴いてきたファンにとっても意外に感じられただろうが、ここにきて音声だけが勝負のライヴ音源をパッケージした作品を出すというのは、ライヴの重要性を再認識する(させる)ということでもあるのかもしれないし、30年経っても変わらない声を出せるという自信の表れなのかもしれない。そうした意味で、“ファンキー”を謳いながら50代になっても20代の頃の勢いと艶をキープしていた故プリンスと久保田は(髪型が頻繁に変化するあたりも含めて)どことなく印象がダブる。

 『3周まわって素でLive!~THE HOUSE PARTY!~』と題されたライヴ・アルバムは、東京[豊洲PIT]を皮切りに、大阪[Zepp Namba OSAKA]、北海道[Zepp Sapporo]、宮城[チームスマイル・仙台PIT]、愛知[Zepp Nagoya]まで、今年6月から9月にかけて5都市10公演が行われた同名ツアーの様子をパッケージしたもの。

 タイトルを噛み砕いて説明すると、「30周年を迎えて、もう一度デビュー前後の無邪気な自分を思い出して自由にライヴをやりましょう。親密な空間に皆さんを招待して」ということ。普段はアリーナ・クラスの会場やコンサート・ホールでのショウがメインとなる久保田だが、今回は小規模なライヴ・ハウスでのショウ。ゆえに〈THE HOUSE PARTY!〉。
 “ハウス・パーティー”とはブラック・ミュージック/カルチャーにおいて親しみのある言葉で、例えば、久保田も愛するジェイムス・ブラウン~Pファンク一派のトロンボーン奏者であったフレッド・ウェズリーが80年にCurtomから出したアルバム(およびシングル)のタイトルが『House Party』なら、ニュー・ジャック・スウィング全盛期にキドゥン・プレイが主演したコメディ映画(90年)も同名のタイトル。また、久保田がTOSHI名義で発表したUS第3弾アルバム『TIME TO SHARE』(2004年)収録のモス・デフ客演曲“LIVING FOR TODAY”のネタであるウィリー・ハッチ“I Can Sho’ Give You Love”を収録したアルバムのタイトルは『Havin’ A House Party』(77年)だったりする。久保田はライヴでお客さんたちのことを「パーティー・ピーポー(Party People)」と呼ぶが、〈THE HOUSE PARTY!〉と銘打った今回のツアーに集った観客にこそ、その呼び名は相応しい。自分が観た8月9日(水)の大阪公演では、「儲かりまっか?」「ぼちぼちでんな~」というお約束のご当地コール&レスポンスもあったが、このやりとりはライヴ・ハウスだとさらに親密度を増す。

 タイトルにある“素”とは、久保田の場合、ソウル/R&Bを聴いてきた自分の趣味を曝け出すということでもあるのだろう。これまでのステージでもソウルやファンクの小ネタを挿んできた久保田が、今回はそのテの仕掛けをふんだんに盛り込んできた。
 いよいよ幕が開けるその時、客電が落ちると同時にDJ DAISHIZENによってプレイされたのはリトル・ビーヴァーの名曲“Party Down”。夏の夕暮れを連想させる、あのマイアミ・ソウルのレイドバックしたグルーヴが真夏の夜の会場に響き、これをBGMにバンド・メンバーが定位置に着くという演出からして心憎い。もっとも今回のライヴ・アルバムではこの部分はオミットされているのだが、“OPENING JAM”と題されたスターティング・チューンは、ブーツィーズ・ラバー・バンド“Stretchin’ Out”のフレーズを奏でながらブライズ・オブ・ファンケンシュタイン“Disco To Go”のイントロ風ブレイクも交えつつ、フリーダム“Get Up And Dance”のフレーズも織り交ぜ、ロジャー・トラウトマンばりのトークボックスまで繰り出す、やんちゃなファンク・ジャム。Pファンクやオールドスクール・ヒップホップ好きの久保田ワールド全開で、昨年コラボ・ベスト『THE BADDEST~Collaboration~』をリリースした際にbmrのインタヴューにて披露してくれたあの遠慮なしのソウル・トークを序盤から再現したような……とでも言いたくなる幕開けだ。

 その“OPENING JAM”を筆頭に、アルバムでは実際のライヴ通り全ての曲が演奏順に並べられている(→曲目参照)。もちろん全公演の中からベスト・テイクが選ばれているのだろうし、曲間のMCもほぼ省かれてはいるが、初回生産限定盤のみに付されたDVDにはアンコールで披露した楽曲(のパフォーマンス)も収録されており、今ツアーのステージを忠実に再現したアルバムと言って差し支えない。ライヴ・アルバムを作ることを念頭に置いて行われたツアーということもあり、久保田を含むバンドにはスタジオ・レコーディングにも似たある種の緊張感があったと思うのだが、それに伴う堅苦しさがほとんど感じられなかったのは、メンバーへの無茶振りも含めて、いつも以上に久保田が自由奔放に振舞っていたせいもあるのかもしれない。(⇒ P2に続く

[CD]
1. OPENING JAM
2. Shake It Paradise
3. Funk It Up
4. 誓い
5. Forever Yours (with YURI)
6. Tomorrow Waltz
7. Upside Down
8. Free Style
9. LA・LA・LA LOVE SONG
10. SOUL BANGIN’~B.LEAGUE EARLY CUP VERSION~
11. Bring me up !
12. SHADOWS OF YOUR LOVE
13. Go Go Old School Medley
14. SUKIYAKI~Ue wo muite arukou~ (with Ty Stephens)
15. LOVE RAIN~恋の雨~

[特典DVD] *初回限定生産盤のみ
~THE HOUSE PARTY~ “Eyes from The Back Door”
1. ENCORE JAM
2. Another Star~You were mine
3. Cymbals