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GOLDLINK interview / 「金、ジュエリー、車、女に囲まれて、本当にそれでハッピーか?」

DMVエリアから登場した気鋭ラッパー、ゴールドリンクが今年6月に初来日。サプライズで駆けつけたマセーゴの助力も得、渋谷のライヴ&サウンド・スペース SOUND MUSEUM VISIONのフロアを熱狂の渦に巻き込んだ。bmrは、そのライブ直前にゴールドリンクをキャッチ。ステージでの熱い姿とは一転、普段はレイドバックした様子の彼に、メジャー・デビュー・アルバム『At What Cost』を中心に、短いながら話を聞いた。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/Kana Muramatsu

自らの音楽を「フューチャー・バウンス」と称し、ケイトラナダ(KAYTRANADA)やタ・ク(Ta-ku)、サンゴ(Sango)、チェット・フェイカー(Chet Faker)ら気鋭のクリエイターたちによるフューチャリスティックなダンス・ビートに乗って自在にフロウを操る姿で鮮烈な印象を与えたゴールドリンク。

リック・ルービン(Rick Rubin)にも一目置かれた彼が、今年3月についに待望のメジャー・デビュー・アルバム『At What Cost』を発表した。盟友ともいえるケイトラナダを始め、ジ・インターネット(The Internet)の最年少メンバーであるスティーヴ・レイシー(Steve Lacy)や、同じくジ・インターネットのマット・マーシャンズ(Matt Martians)、サー・ラー(Sa-Ra)のタズ・アーノルド(Taz Arnold)、またドレイク(Drake)らを手がけるセヴン・トーマス(Sevn Thomas)らを制作陣に迎え、ジャズミン・サリヴァン(Jazmine Sullivan)やマイア(Mya)、ワーレイ(Wale)がゲスト参加と、力の入った作品。先月にはComplexが発表した「現時点での2017年ベスト・アルバム50」で12位に選出された同作は、今週7月14日にヴァイナルでも発売される(※アルバムは記事下段で全曲フル試聴可)。

9月からはこのアルバムを引っさげた米国内ツアーも控える彼が、6月に初来日。限られたスケジュールの中で、bmrのインタビューを受けてくれた。「昨日はずっと出かけてたよ。今朝も5時から13時ぐらいまで出かけてた。その後ぶっ倒れたけど。この街が大好きだと確信を持っていえるぐらいは見て回れたよ」と話す彼は、しかし時差と遊び疲れなのか(猫カフェにも行ったのだそう)、相当に眠そうで、ところどころ頭が回っていない様子を見せるなど取材は少々苦戦したが、一方で、取材の予定時間よりはるかに早く、しかもマネージャーも伴わずにひとりでふらっと姿を見せるなど真面目(天然?)な姿勢も、彼の発言から感じられた。

新作は、とても面白い方法でゴーゴー・カルチャーを継承した、という感じ

まずは「フューチャー・バウンス」という表現について改めて訊いてみる。

そうだな……正直言うと、その言葉に深い意味はないんだよ。俺の音楽をある種のジャンルとして定義することによって、みんなが理解しやすくなるから付けただけで。(その「ある種のジャンル」をどう説明するかとしたら)“新しいサウンドでありながら、タイムレスな音楽を聴いてる時に感じるような、ノスタルジックな、懐かしい感覚を覚える音楽”、だね

ビートを選ぶ基準については、このように説明する。

ビートの中に、ヴォイス(ヴォーカル)を入れられるだけの空間や“ポケット”があるかどうか。そしてビートは、それだけですでに伝染しやすい(強烈な印象を残す)ものであること

巧みにフロウを操って様々なビートを乗りこなしているゴールドリンクだが、マンブル・ラップなどのトレンドについてはあまり好意的ではないようだ。多くの若手ラッパーが同じようなフロウになっている状況について、「レイジーだね、怠けてるよ」と短く切り捨てる。

そして話は、『At What Cost』へ。発売前のFADERのインタビューでは、「フューチャリスティックな部分を保つと同時に、ミニマルにもしたいと思った。それから、トライバルな観点を加えたかったから、ヘヴィなドラムや、素敵な管弦が聞こえるだろう。ミニマルにしたかったのは、俺がどんなメッセージを伝えようとしているか、言葉に耳を傾けてもらうため。エレクトロニックな音楽の要素はありつつ、メッセージが伝わるようにしたかったんだ。『The God Complex』ではオールドスクールなサンプリングを使って、ノスタルジックな感じになって……音楽的要素に依存しちゃってたから」と説明していたが、改めて『At What Cost』の音楽性について、このように説明する。

表現するとすれば……うーん……そうだな、とても面白い方法でゴーゴー・カルチャーを継承してみたという感じ

ゴーゴーの影響だけでなく、ワーレイ、シャイ・グリジー(Shy Glizzy)や、マイア、コカイ(Kokayi)、エイプリル・ジョーンズ(April Jones)などDMVエリアのアーティストも多く参加している。しかし、これは特に意図的ではなく「自然にそうなっただけ」だという。中でも驚かされたマイアの参加も、「共通の友達に紹介されてね。それから仲良くしてるんだ。彼女は最高だよ」と、自然にコラボレーションが実現したと語る。

ただ、同じ都市出身とはいえ、育ったエリアや環境、経験が違うことで、(街や人生などに対して)自分とは違う見解を持っているはずだから、そこを表現してもらいたいと思うような人たちを最初に選び始めたことは事実だな

音楽を通して色々な視点から語るストーリー、という意味では、ヘアー・スクエッド(Hare Squead)の同名曲にラップを加えた形となる“Herside Story”も興味深い。ここでゴールドリンクは、自分のもとを去った女性が前作を聞いて怒っている、と触れており、『And After That, We Didn’t Talk』とのつながりを感じさせる。

前作は失恋を表現した作品。ある特定の人物への思いや回想録のようなもので、俺が別れてから数年間どういうことをしていたのかをその人に伝えるようなものだったんだ。一方で新作は、時系列としては(続きではなく)同時進行になっていて、俺が街で何をしていたかとかそういうことを表現している。『At What Cost』の全体を通して、(前作で表現されていた)俺がどうしてあんな風に感じていたか、どうしてあんな風に反応したか、なぜ怒っていたか、なぜ向こう見ずになってたか、なぜドラッグを売ってたか、失恋したことに対して俺がどうリアクションしたか……ということを表現している。ある特定の出来事(失恋)を通して、2015年にどう感じていたか、その当時の自分の見解と、それから自分がどういう見解を持つようになって、どういう行動をするようになったかということが新作では表現されているから、2作は連続性があると同時に、共存している作品といえるかな

失恋を表現した『And After That, We Didn’t Talk』のタイトルは分かりやすいが、では今回の『At What Cost』に込めた想いとは?

部屋の中で大勢の友達とこのアルバムについて話してたとき、ここ(この街、DC)で生き残るためにどれだけの犠牲を払ってきたか、って話になったんだ。ゴーゴー(文化)を排除するのは、町にとっては治安を守るための選択だったとはいえ、その代償は? 例えばそういうこと。それを失うことで、俺たちは自分たちの感受性やアイデンティティ、そして自由になるためのアウトレットを失った。自分たちを表現する方法をね。だから、『At What Cost』は、犠牲(になったもの)という意味。全てのものに代価(犠牲)がかかるものだろ?

その上で今回のアートワークを眺めてると面白い。デビュー当初はなかなかはっきりとした顔を見せず、ミステリアスな印象だったゴールドリンクは、これまでのアルバム/ミックステープでは一貫してイラストレーションをアートワークに起用している。最後に、このアートワークについて彼自身に解説してもらおう。

例えば、『The God Complex』では、カラフルなマスクの男が、たくさんのマスクの男の中から抜きん出てトップに立つ、というような意味合いだった。“選ばれた男”という意味だ。『And After That, We Didn’t Talk』では、女性なのか男性なのかイエスなのか誰だかわからない、抽象的な感じ。これは、“自分の望むように誰にでもなりうる”という意味。そして今回のはもっと複雑なんだよね……。面白いのが、正面のこの男は、金、ジュエリー、車、女の子たちに囲まれてるけれど、背後で炎が燃えている。つまり、“本当にそれでハッピーか?という疑問を投げかけているような感じなんだ

 

 

1. Opening Credit

2. Same Clothes As Yesterday (feat. Ciscero) [prod. by Darth Olympian & Everett Ray / add'l prod. by Louie Lastic]

3. Have You Seen That Girl? [prod. by KAYTRANADA]

4. Hands On Your Knees (feat. Kokayi) [prod. by KAYTRANADA]

5. Meditation (feat. Jazmine Sullivan & KAYTRANADA) [prod. by KAYTRANADA]

6. Herside Story (with Hare Squead) [prod. by Felix Joseph & Hare Squead]

7. Summatime (feat. Wale & Radiant Children) [prod. by Radiant Children]

8. Roll Call (feat. Mya) [prod. by Louie Lastic]

9. The Parable Of The Rich Man (feat. April George) [prod. by Matt Martians / outro prod. by Taz Arnold / add'l prod. by Bill Pettaway]

10. Crew (feat. Brent Faiyaz & Shy Glizzy) [prod. by Teddy Walton]

11. We Will Never Die (feat. Lil Dude) [prod. by Sevn Thomas]

12. Kokamoe Freestyle [prod. by Swindail]

13. Some Girl (feat. Steve Lacy) [prod. by Steven Lacy / “U in a Circle” prod. by Taz Arnold]

14. Pray Everyday (Survivor’s Guilt) [prod. by Sevn Thomas, SykSense, Axl Folie]