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OMAR interview / オマーが語る新作、そしてリオン・ウェアとの最後の会話

英国ソウル界のレジェンド、オマーが今年1月に発表したおよそ3年半ぶりの新作『Love In Beats』には、ロバート・グラスパー、フロエトリーのナタリー“ザ・フロエシスト”ステュワートらから、アルバム発売の翌月に訃報が伝えられたリオン・ウェアまで、オマーだからこそ実現した豪華な顔ぶれが参加。コートニー・パインのスペシャル・ゲストという形で5月に来日した彼に、この新作について、そして、20年以上の付き合いだったリオン・ウェアについて、話を聞いた。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/Kana Muramatsu 取材協力・写真提供/COTTON CLUB  撮影/米田泰久

ロバート・グラスパーはマスター・ミュージシャンだ

(→ P2より)

思わぬ縁が導いたジャジー・ジェフ・リミックスだが、ロバート・グラスパーとはさらに奇妙な縁があった。オマーとグラスパーと言えば、ラスベガスのヒップホップ・アーティスト、アヌ・サン(Anu~Sun)の“Mr. Las Vegas”という曲にはオマー、グラスパー、そしてクリス・デイヴ(Chris Dave)がフィーチャーされている。彼の2010年作『The Adventures Of Mr. Las Vegas』に収録されているものだが、「自分がロバートと同じ曲に参加してるなんて気づかなかったよ(笑)」と、筆者が指摘するまで知らなかったという。

ロバートとはずっと会ったことがないと思ってたんだ。当時(売れる前は)でっかいブレイズをロックしてたから。でもある時〈North Sea Jazz Festival〉でロバートから、自分とロバート、ビラルの3人で写った写真を見せられて、『あ、あれお前だったのか!』って。それからは、ステージで共演したこともあった。

今回、(“Vicky’s Tune”で)ロバートに弾いてくれよってお願いしたんだけど、実際に曲を送ってくれるまでに1年かかって。それがアヌ・サンのスタジオで録音されたものだったんだ。なんだ、お前もアヌ・サンを知ってるの?っていう。クレイジー。音楽業界は狭いよね(笑)。すごく妙な話で、自分とアヌ・サンはニューヨークで知り合ったんだけど、彼がロバートと知り合いだなんてそれまで知らなかったんだ(笑)

そのロバート・グラスパーと、ラッパーのタイ(Ty)が参加した“Vicky’s Tune”は、「曲を書き始めたのは2003年。自分のスタジオを作ったときから書き始めたんだよ。その間に2枚もアルバムが出てしまったけど」という。オマーが2015年にシングルカットした“Simplify”には、「1994年に録音された」という未発表曲“Get Away”も収録されていたが、それにもこんな奇妙な事情があった。

“Get Away”はレコーディングもミックスも1994年にやったもの。一方で、“Vicky’s Tune”は2003年に作り始めたんだけど、実はオリジナルの音源を無くしてしまったんだ。ベースやドラム、鍵盤を入れたベーシックは残っていたし、簡単なメロディは覚えていたから、2006年に最初から再レコーディングしたんだけど、出来に納得がいかなくて、しばらく置いておいたんだ。そして今回、タイとグラスパーが参加して完成したという感じ。フロエシストが参加した“Feeds My Mind”も同じような感じで、これも作り始めたのは2007年で、完成までに10年かかってしまった。

そうやって未完成のものを時間をかけて完成させるものもあれば、中には“Get Away”みたいに完成済みだった曲もある。コートニーとの“Give or Take A Few”という曲があって、これも完成していたんだけど、マシーンが壊れてしまって、音源が入ったDATを探したんだ。するとそのDATの中に忘れていた“Get Away”の音源を見つけて(笑)、それでリリースしたんだよ。“Get Away”はまったく手を加えていない

そのロバート・グラスパーについては、こう賛辞を述べる。

彼はマスター・ミュージシャンだよ。ロバート・グラスパー・トリオのステージも観たことがあるし、ロバート・グラスパー・エクスペリメントも観たことがあるけど、まったく違うプロジェクトだけど、素晴らしいよね。ジャズでもジャジー・ヒップホップでも、きちんとミュージシャンとして表現できているんだから

Courtney Pine & Omar (2017) 写真提供/COTTON CLUB  撮影/米田泰久

最後に、ジュニア(Junior Giscombe)、ドン・E(Don-E)、ノエル・マッコイ(Noel McKoy)、リー・ジョン(Leee John)らと共に結成したブリティッシュ・コレクティヴ(The British Collective)について話を聞いた。ドン・Eの2013年作『Little Star』に収録されている“Spiritual”に、ジュニア、オマー、ノエル・マッコイ、リー・ジョンらに、元ルース・エンズ(Lose Ends)のカール・マッキントッシュ(Carl McIntosh)といった英国ソウル・スターたちをゲストに迎えたのが始まりとされるこのプロジェクトは、昨年デビュー・アルバム『Vol 1: The Renaissance Begins… 』をリリースしている。

元々は友人のドン・Eがアルバムを作る時に、80s~90sのソウル・ガイが集まって1曲で歌ったことがきっかけなんだ。それがブリティッシュ・コレクティヴのメンバーと、他に5~6人いたんだけど、それでグループを始めるべきだ!と言われるようになって、そこから始まったんだ。

ようやくアルバムは出せたけど、でも自分たちはボーイ・バンドじゃないし、それぞれにキャリアがあって自分の活動があるから、すごく大変だった。続けていきたいとは思うけど、自分にも自分の活動があるし、スケジュール次第かな。でも面白いのが、一緒に歌ったら素晴らしいハーモニーが作ることができて。それはとても満足しているよ