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OMAR interview / オマーが語る新作、そしてリオン・ウェアとの最後の会話

英国ソウル界のレジェンド、オマーが今年1月に発表したおよそ3年半ぶりの新作『Love In Beats』には、ロバート・グラスパー、フロエトリーのナタリー“ザ・フロエシスト”ステュワートらから、アルバム発売の翌月に訃報が伝えられたリオン・ウェアまで、オマーだからこそ実現した豪華な顔ぶれが参加。コートニー・パインのスペシャル・ゲストという形で5月に来日した彼に、この新作について、そして、20年以上の付き合いだったリオン・ウェアについて、話を聞いた。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 通訳/Kana Muramatsu 取材協力・写真提供/COTTON CLUB  撮影/米田泰久

今年5月下旬、オマーが来日した。昨年デビュー30周年を迎えた英音楽界の大御所コートニー・パイン(Courtney Pine)がコットンクラブで行った来日公演にスペシャル・ゲストとして参加していたのだ。数年前から共演ステージを繰り返してきた彼らだが、コートニーは現在、オマーも所属するFreestyle Recordsから新作『Black Notes From The Deep』をリリース予定で、ここにオマーもゲスト参加している。当日の公演も、その新作からの曲が披露されるなど、ふたりのコラボレーションのお披露目的なステージとなった。

そのオマーは今年1月に、リオン・ウェア(Leon Ware)、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)や、フロエトリー(Floetry)のナタリー“ザ・フロエシスト”ステュワート(Natalie “The Floacist” Stewart)、元ジャミロクワイ(Jamiroquai)のスチュアート・ゼンダー(Stuart Zender)らが参加したニュー・アルバム『Love In Beats』(⇒ 全曲フル試聴可)を発表している。奇しくもその翌月に、リオン・ウェアは旅立ってしまった。あまりに偉大な存在であるリオンへの追悼も込めて、彼の参加曲“Gave My Heart”をシングルカットしたオマーに、会場で話を聞いた。

Courtney Pine & Omar (2017) 写真提供/COTTON CLUB  撮影/米田泰久

弟(スクラッチ・プロフェッサー)との曲が増えたのは、2年前に真ん中の弟を亡くなったことが大きいのかな

共にロンドンを拠点に20年以上も活動を続けてきたベテランだけあって、当然、コートニー・パインとは以前から知り合いだが、こうした全面的なコラボレーションを始めるようになったのは、2014年の〈Love Supreme Festival〉からだったという。コートニーの新作『Black Notes From The Deep』(年内発売予定)では4曲のフィーチャリング・ゲストにオマーの名前が見つかる。

実はコートニーからは9曲で参加してくれって言われてたんだけどね(笑)。結局、作詞と作曲とやったのは3曲。彼には以前、自分の曲にサックスで参加してもらったことがあって、ずっと一緒にやろうと話していたし、ちょうど一緒にスタジオに入る時間が取れたから、パーフェクトなタイミングで実現したよ

今回の共演ステージも、勝手知ったる仲ということで息のあったところを見せていたが、オマーも「気楽に」できたと振り返る。

「(ジャンルは関係なく)いつもどおりにやっただけだ。自分の音楽のルーツにはジャズもあるし、ソウル、ファンク、レゲエ、ラテン、クラシックもある。だから、求められるとおりにやることができるんだ。ファンキー・ハウスで歌ってと言われればそうするし、ジャズっぽくと言われたらそう歌う。今回のパフォーマンスはかなり気楽にできたね。自分がメインじゃなかったから、歌わないときはリラックスしてシェイカーを振ったり(笑)

その多彩なルーツは、彼のこれまでの作品からもに窺えるところだが、 今回の新作『Love In Beats』は、そのタイトルに表れているように「ビート」への意識がはっきりとある。

そうだね。今回はハードなビートが欲しいと思ったんだ。前作はもっとソウル色の強い作品だったからね。

ビートはもちろんこれまでにもあったわけだけど、今回は弟(スクラッチ・プロフェッサー)と作ってて、あいつはヒップホップ色の強いビートが得意だから、そのビートをもっと使いたいって思ったんだ。だから前作とは違う考え方で作られたアルバムだね。

タイトルもそういう経緯から、まず“ビーツ”という言葉が浮かんだんだ。それでどうしようと考え始めて。『Soul, Beats & Love』?……ラヴソングもあるからさ。『Love & Beats』?……いや『Love In Beats』はどうだろう?って感じでね。これまでにない感じだし。それでハッシュタグを調べてみたら、#LoveinBeatsっていうのは見当たらなかったから、よしこれだ、って思ったんだ

そう、今回はこれまで以上に実弟スクラッチ・プロフェッサー(Scratch Professor)がプロデュースに関わっている。そこには、「ハードなビート」を求めた以上の背景があった。

多分、2年前に真ん中の弟(オマーとスクラッチ・プロフェッサーの間の兄弟)が亡くなったことが大きいのかな。それで兄弟でもっと一緒にやろうという気分になったのだと思う。アルバムについては自分がエグゼクティヴ・プロデューサーで、何を収録するかを決めるかは自分だけど、結果的に弟との曲が増えたのは、さっきも話したビートのこともあるし、真ん中の弟が亡くなった影響もあったと思うよ

そして今回は、ゲスト・アーティストの多さも目に付く。いずれも以前から知っていたアーティストたちで、自然に実現したのだという。オマーは、「正しいタイミングで正しい人たちと生まれた」と表現する。

とてもオーガニックな形でこうなったんだ。たとえばリオン・ウェアはずいぶん昔から知っている。リオンが参加した曲は、リオンの曲で、自分が大好きな“Rockin’ You Eternally”が元になってるわけだけど、弟があの曲を使って最初にビートを作ったんだ。それでその上に曲を書いて、それから“Rockin’ You Eternally”を使わせてくれないかって話をしているうちにリオンが実際に参加してくれて、最高の出来になった。

(“De Ja Vu”に参加した)マイラ・アンドラーデ(※オマーはアンジェディと発音)は、前に一度一緒に曲を作ったことがあった。それで偶然パリで一緒になったものだから、一緒に料理をしながら音楽を作ったりっていう中で生まれたんだ。ジャン・ミシェル・ロタンとは、グアドループにツアーに行った時に知り合って、一緒にスタジオに入って“Destiny”を書いた。

フロエシストの場合は、彼女はうちの近所に住んでいて、彼女のいとこなんかは同じストリートなんだ。そういうわけで、これも自然と実現したね。

どの曲も、正しいタイミングで正しい人たちと生まれたものだ。アルバム自体も、プレイボタンを押したら、一度も止めずに最後までずっと聴いてほしいという想いがあって、それを考えてトラックリストを作ったから、曲の置かれた位置も含めて、今回のコラボレーションは全て起こるべくして起きたもので、あるべき場所にある曲順だと思ってるよ

その中でも、やはり触れずにいられないのがリオン・ウェア。リオンが参加した“Gave My Heart”は、リオンが1981年に発表した『Rockin’ You Eternally』の表題曲をサンプリングしているわけだが、実際にリオンが新しくボーカルを加えている。(⇒ P2 「リオンはレコーディングする直前に、胃の大半を切除した。それでも彼は歌ってくれたんだ」へ)