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JUDITH HILL interview / 「今目の前にある瞬間、今いる場所を大事にして生きていきたい」

マイケル・ジャクソンとプリンス、音楽史に名を刻むレジェンドがそれぞれ晩年に目をかけたジュディス・ヒル。2015年にプリンスの全面支援でデビュー・アルバム『Back In Time』を発表し、最後までプリンスを支えた彼女が、この5月に自身名義としては初の来日ステージを踏んだ。日本にもルーツを持つ彼女が、bmrのインタビューに答えてくれた。

取材・文/末﨑裕之 hiroyukisuezaki 通訳/Kana Muramatsu Photo by Ayaka Matsui

『Golden Child』というセカンド・アルバムはもう完成してる。2016年の1月と2月の2ヶ月で完成させたの

(→ P1より)
さて、そろそろ『Back In Time』について話を聞いてみる。幼少期の彼女の写真をアートワークに使った理由について、彼女はこう説明してくれた。

アルバムのタイトルが『Back In Time』だから、ピアノを始めた子供の頃の私の写真によって、私の“始まり”、原点というものを表現してみたの。若いジュディスが音楽を始めるっていう瞬間を捉えたスペシャルな写真。ジュディス・ヒルというアーティストを紹介する“始まり”の作品の写真という意味でもぴったりだったんじゃないかな

“My People”と“Beautiful Life”の2曲は元々、『Red Hook Summer (Songs from Original Motion Picture Soundtrack)』に収録されていたものだったゆえ、昔から温存していた曲も多かったのかと思ったが、「基本的にはこのアルバムのために新しく作った曲よ。確かに2曲はスパイク・リーの映画の曲だけど、アレンジは一新しているし、他の曲も含めて全て、このアルバムのためにレコーディングしたもの」と説明する。

とは言え、リード曲である“Cry, Cry, Cry”もまた、以前からあった曲のひとつだ。アリシア・キーズの初期を支えたケリー“クルーシャル”ブラザーズ(Kerry “Crucial” Brothers)や、ビヨンセ、リアーナ、ジェニファー・ロペスらのヒットに関わってきたマキーバ(・リディック)・ウッズ(Makeba Riddick-Woods)らの名前がこの曲のソングライターとして並ぶ。

私がソニーに所属していた時に、レーベルに勧められて彼らと一緒に曲を作ることになったの。この曲は最初、がんの治療中だった母の付き添いで車で一緒に病院まで向かっていたときにアイディアが浮かんで。その後にジャムセッションがあって、ケリー・ブラザーズやマキーバたちと一緒に書き上げたの。その後にプリンスがさらに彼のアイディアを加えたという感じで、いろんな人の手が入ることで完成したわけ

一方で、来日公演のステージでは『Back In Time』の楽曲だけでなく、新曲も披露された。すでにニュー・アルバムが準備されているという。

そう、新曲を何曲か入れてみたの、『Golden Child』というセカンド・アルバムからの曲。まだ発売日は決まってないけどね。アルバムはもう完成してるの。どういう方向性かって? クラシック・ソウル・ファンク。ストリングスのアイディアだったりオーケストラ的な要素も入れているけど、基本的にはこれまでの延長線上のファンク&ソウルね。ただ、すごく短期間で完成させてて、2016年の1月と2月で仕上げたの。そう、2ヶ月で。早いでしょ

セカンド・アルバムのコラボレーターは?と問うと、「私だけ」と簡潔な返答。しかし時期を考えれば、何らかの形でプリンスが関わっていても不思議ではない。

そのプリンスについて訊きたいことはもちろん多々あったが……実は今回のインタビューでは、基本的にプリンスについての質問はNGということになっていた。話の流れで名前が出てくるぶんには構わなかったのだが、おそらくプリンスの死後、彼女にプリンスのことを聞くためだけに取材を申し込むメディアが殺到したからだろう(今回の来日でも、その目的の取材は全て断られたという)。プリンスは亡くなるわずか6日前、プライベートジェットの中で意識不明となり、飛行機を緊急着陸させて病院に搬送された、ということがあったが、その時そばにいたのはジュディスだった。

ちょうど彼が亡くなってから1年が経つこの時のインタビューでも、プリンスについて口を開くのはとても辛いのだという。その心情は、こんなひと幕でも窺えた。“Turn Up”の曲中で「ミナサン、モリアガリマショウ、ジュンビシテクダサイ」と日本語で呼びかけたのは、誰のアイディアだったのか?という質問に、急に彼女は押し黙り、しばらくの沈黙の後にようやく「…………私。ちょっとやってみただけ」とだけ答えたのだ。きっと何か、思い出すエピソードがあったのだと思う。さきほど彼女が挙げたミッシー・エリオットにかけて、“Get Ur Freak On”を意識したんじゃ?と冗談を言うと、やっと「それはない(笑)」と返してくれたが、その笑顔はとても辛そうだった。

また、彼女はこんなことも言っていた。公演中、“Beaufiul Life”を「特別な曲」だと紹介していたことについて、「“Beaufiul Life”は自分の周りにある美しいものに目を向けようという力強いメッセージを持った曲なの。ただ美しいというだけでなく、そこには痛みもあるけれど、でも困難に立ち向かったとしても、立ち上がって、自分の周りにある美しいものを見て、それを祝福しようというストーリー」と説明した彼女に、ちょうど取材の翌日が33歳の誕生日だったこともあって、これからの1年をどうしたいか?と抱負を聞いてみたのだ。

日々を充実して生きていく。先のことばかり考えるのではなく、目の前にある瞬間、今いる場所を大事にして、精いっぱい生きていく。それを続けていきたい