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JUDITH HILL interview / 「今目の前にある瞬間、今いる場所を大事にして生きていきたい」

マイケル・ジャクソンとプリンス、音楽史に名を刻むレジェンドがそれぞれ晩年に目をかけたジュディス・ヒル。2015年にプリンスの全面支援でデビュー・アルバム『Back In Time』を発表し、最後までプリンスを支えた彼女が、この5月に自身名義としては初の来日ステージを踏んだ。日本にもルーツを持つ彼女が、bmrのインタビューに答えてくれた。

取材・文/末﨑裕之 hiroyukisuezaki 通訳/Kana Muramatsu Photo by Ayaka Matsui

マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)、そしてプリンス(Prince)に認められた日系女性シンガーのジュディス・ヒル。実現しなかったマイケル最後のツアー〈This Is It〉のコーラス・メンバーであり、マイケル・ジャクソンの追悼式典で“Heal The World”のリード・ボーカルという大役を務めたこと、そして『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』で“I Just Can’t Stop Loving You”でマイケルの相手役を務めたシーンがあったことで脚光を浴びた。

2012年には、『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『25時』などの監督で知られるスパイク・リーから「とんでもない才能の持ち主だ」と絶賛され、彼の映画『Red Hook Summer』の音楽で大々的にフィーチャー。彼女が歌うオリジナル曲10曲を収録した、実質上のファースト・アルバムと言えるサウンドトラック『Red Hook Summer (Songs from Original Motion Picture Soundtrack)』も発売された。また、オーディション番組『The Voice』の第4シーズンに出演するも途中で敗退するが、世界的な人気歌手ジョシュ・グローバン(Josh Groban)の北米ツアーに同行し、前座を務め、そうした経緯からバックコーラスに注目したドキュメンタリー映画『バックコーラスの歌姫〈ディーバ〉たち』(原題『20 Feet from Stardom』)に出演。翌年の第84回アカデミー賞で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなど映画は高く評価された。

そして、一時はソニー系レーベルのColumbia Recordsとのメジャー契約を獲得し、ジョン・レジェンド(John Legend)が2014年に行った英国ツアーの前座を務めるなどメジャー・デビューに備えていたが、プリンスから声をかけられ、プリンスの下でデビュー・アルバム『Back In Time』を制作……といった経緯は、すでに知っている人も多いかもしれない。しかし、ジュディス・ヒルという人はそもそも、どういう出自で出てきた人なのだろうか。

2010年に発表されたAIの「For my Sister」のゲストに迎えられたことから、AIのライブのゲストとしては来日経験があったが、「(来日)パフォーマンス自体は(AIとのライブで)経験があるけど、自分のバンドで、という意味だとこれが初めて。前にコラボレーションでパフォーマンスしたことがあるんだけど、自分のショウとしてはこれが初だからとても嬉しい」というジュディス・ヒル。ビルボードライブ東京の楽屋にて、彼女に音楽のルーツを訊ねてみる。

ファンキーなものであれば何でも好き。トラップだろうと何だろうと、自分がファンキーだと感じれば

両親が、ルーファス(Rufus)などで演奏してきたミュージシャン――父はベーシスト/プロデューサーのロバート“ピーウィー”ヒル(Robert “PeeWee” Hill)、母は東京出身の日本人ピアニスト、ミチコ・ヒル(Michiko Hill)(彼女も元はクラシック畑の人だったという)――という環境に育った彼女は、「私は母からピアノを教わって。母と父がよくジャムってて、弟もドラムを叩くし、家族で音楽を楽しんでた」という環境で自然と音楽に触れて育ってきた。自分では弾かないものの「ベースはすごく好き」というのはやはり父親の影響だろう。来日公演ではギターも披露していたが、「これまでとは違う表現をしたいと思って、つい最近始めた」のだそう。

教会で歌って育ったし、間違いなくゴスペルの影響はある。ゴスペル・シンガーはずっと大好き……クラーク・シスターズ(Clark Sisters)やヴァネッサ・ベル・アームストロング(Vanessa Bell Armstrong)にはインスパイアされた」という彼女に、さらに若い頃に影響を受けたアーティストは?と聞くと、さらに多くのアーティストの名前が挙がる。

とにかくシンガーはたくさん……アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)だったり、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)、ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)……。タタ・ヴェガ(Tata Vega)は友人でもあるけど、ボーカル面で色々教わったの。他にはダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)とか……。あと私はブラジル音楽も好きで、ジョビン(Tom Jobim)とかね。バンドだと、スライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly & The Family Stone)、ブラザーズ・ジョンソン(Brothers Johnson)とか。ファンクね。

それからショパンとかチャイコフスキーとか、クラシックも。クラシックの場合は、聴くというより勉強した、という感じ。子供の頃に聞いたいろんな音楽が今の自分の世界になっていると思う

そう、母からピアノを習っていた彼女は、LAのバイオラ大学で作曲を専攻したときも、母同様にクラシックを主に勉強していたのだ(「昔はフルートも吹いてたけど、今はもうやらない(笑)」そうだ)。

「(勉強していたのは)クラシックだった。ジャズやファンクは無し(笑)。……いやジャズは勉強したけど、でもメインはクラシックだった。

ソングライティングにおいてクラシックからインスパイアされることは多くて、和声やオーケストレーションだったり、ストリングスのスコアを書くのも大好きなの。私がクラシックを学ぼうと思ったのは、私の世界が広がったり、自分の世界がもっとマジカルなものになるから。学校を卒業して私はそのままポップの世界に飛び込んだけど、インスパイアされてきたのはクラシックなの。

それから、オーケストラとの共演で自分の曲をパフォーマンスする機会があって、そういう時にストリングスだったり自分でアレンジをして一緒にやれたのは楽しかった

とはいえ、先に多様なアーティストの名前を挙げていたように、クラシック漬けだったというわけじゃない。「学校で私は、24時間開いてた練習室でトゥパック(2Pac)だったりミッシー・エリオット(Missy Elliott)を聞いてたから、私が“クラシックの子”じゃないことは周りも知っていたと思う(笑)

そういえば、彼女のステージはコンセプトのある構成になっていて、曲と曲のあいだにはナレーションが挿まれたりしていたが、そうしたインタールードでは、トラップ調の音楽も流れた。

ファンキーなものであれば何でも好き。だからそれがトラップ・ビートだろうと何だろうと、ファンキーだと感じれば作っちゃうの

『Back In Time』の音楽性を考えると少々意外ではあったし、しかもあれは彼女自身のラップだったというから驚きだったが、なるほど、彼女にとってはそれもファンクなのだ。

コンセプチュアルなステージといえば、ステージ両脇に忍者が立っていたのも観客を驚かせた。彼らは“My People”の時にダンサーとして活躍する。

あの曲ではダンサーが欲しいと思っていて……あの曲に込めた想いというのは、みんなが一致団結して正義のために闘おうというもので、それを表現する時に、ニンジャだったりボディガードだったり、ストリートファイターでもいいんだけど、比喩として闘うという意志を見せたかった。ニンジャなら、強い印象を与えると思ったし、伝わるんじゃないかと思ったの」(→ P2に続く)