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NPG interview / ニュー・パワー・ジェネレーションの面々が語る

2017年3月31日から4月2日までビルボードライブで開催された〈ザ・ニュー・パワー・ジェネレーション tribute to プリンス〉公演。2016年4月に突然この世を去ったプリンスの音楽を支えてきたニュー・パワー・ジェネレーションの面々が日本で特別なトリビュート公演を行った。bmrでは、ミュージカル・ディレクターを務めたアンドリュー・グーシェイ、そして90年代からプリンスとの交流のあるベテラン、マーヴァ・キングを中心に、短いながらNPGに入った経緯、そしてプリンスとの思い出を聞いていた。

取材・文/末﨑裕之 hiroyukisuezaki 通訳/Kana Muramatsu Photo by Masanori Naruse

度重なるメンバーチェンジを経ながらプリンスを支えてきたNPG(ニュー・パワー・ジェネレーション)は、実力あるミュージシャンたちが若手・ベテラン問わず在籍したことでも知られるが、今回のトリビュート公演で来日したのは11名。当初予定していたカーク・ジョンソン(Kirk Johnson)の出演が――おそらく本国でのNPGリユニオンのため――キャンセルとなったが、そのほとんどは、晩年のプリンスと共演してきたNPGの“最後のラインナップ”だ。

ミュージカル・ディレクターを務めたのは、80年代からゴスペルを中心に、シェリル・リン、モンテル・ジョーダンといったR&Bから、ウォーレン・GやスヌープなどのGファンク、さらにジャズと幅広く演奏してきた大物ベーシストであり、NPG入りの前はチャカ・カーンのミュージカル・ディレクターを6年間務めアンドリュー・グーシェイ(Andrew Gouché)。

今回、まず彼にインタビューを申し込んだところ、(おそらく自分よりもプリンスとの共演歴が長いからと気を遣って)、マーヴァ・キング(Marva King)、カサンドラ・オニール(Cassandra O’Neal)との3人でのインタビューを逆提案された。80年代から活躍するベテラン・セッション・シンガーで、スティーヴィー・ワンダー率いるワンダーラヴの一員だったこともあり、90年代末に2年ほどNPGに在籍した後も2000年代後半から散発的に合流していたマーヴァ、そしてシーラ・Eとの女性グループ=COEDへの参加や、ピンク、メアリー・J.ブライジ、ベイビーフェイスなどで弾いたことでも知られるキーボーディストで、2009年頃から2014年頃までNPGで弾いていたキャシーが揃うのなら、願ってもない。

……とは言うものの、こういった取材は必ずしも予定どおりに進行するものでもなく、カサンドラ・オニールは体調不良ということで当日は欠席。しかし、やはり気を利かせてくれたのだろう、5名いたホーン隊からサックスのマーカス・アンダーソン(Marcus Anderson)、サックスのエイドリアン・クラッチフィールド(Adrian Crutchfield)、バリトン・サックスのBK・ジャクソン(Bernard “BK” Jackson)が代わりにやってきて、総勢5名でのインタビューに。時差ボケによるものか、最初は眠たげで静かだったマーヴァが、しかし徐々に雄弁になったこともあり、公演直前の限られた時間の中でできた質問は限られたが、彼らの発言をお届けしたい。

どの年代だったとか関係なく、プリンスの下で学んできたミュージシャンなら、集まって一緒にやればうまくいく ―― アンドリュー・グーシェイ

まずは今回のトリビュート公演の経緯について。チャカ・カーン(アンドリューが発音するところのシャカ・カーン)のミュージカル・ディレクターを長年務めていた関係で来日経験の豊富なアンドリュー・グーシェイに、NPGでのトリビュート・ショウについて相談があったことがきっかけだったという。

アンドリュー「プリンスのキャリアにおいて彼が抱えたミュージシャンは数々いるから、『NPGって具体的に誰?』って話になったわけだけど、『NPGとしては最後のNPGバンドだ』って答えたら、イエスという返事をもらって、こうしてやってきたわけだよ

カーク・ジョンソンの代わりとなったドラムのゴードン・キャンベル(2016年8月にブラジルで行われたNPGによるプリンス・トリビュート公演でアンドリュー、カサンドラらと共に参加していた)はともかく、当初からのラインナップにあるボーカルのTJ・ウィルキンス(T.J. Wilkins)は馴染みのない名前だが、昨年5月6日にロサンジェルスで行われた大々的なプリンス・トリビュート公演にバックコーラスとして参加していた人物なのだという。

アンドリュー「マーヴァと私、そしてTJはみんなLAに住んでいるんだけど。そして去年の5月、ロサンジェルスではスペシャルなプリンス・トリビュートが行われてね。いろんなアーティストが参加したんだ。スティーヴィー・ワンダー……

マーヴァ「フェイス・エヴァンス……

アンドリュー「アロー・ブラックに……

マーヴァ「エリック・ベネイ

アンドリュー「それで私は、音楽面において全面的に取り仕切ることになって。……マーヴァ、君には電話しなかったんだっけ

マーヴァ「気にしてないよ。……ああ、私は(LAのラジオ局の)KJLHからだったっけ(※KJLHによるステージがあった)」

アンドリュー「そうそう、KJLH、スティーヴィー・ワンダーのラジオ局だ。それで私はバックグラウンド・シンガーを何人か用意していて、TJはそのひとりだったんだ。私たちは有名なクラブでプリンスとのトリビュート・ステージを行ったんだけど、TJはまだまだ若いのに……25歳くらいだったかな? 若いのに、彼はプリンスの曲の歌詞はほとんど全部覚えてて、それで一緒にやったときにすごくうまくいったんだよ。

ホーン隊は私がプリンスとやっていたときに一緒に演奏していたメンバーだし、マーヴァとは同じLAということもあって何年も前から知り合いだったわけだけど、今回のトリビュート・ショウをやるにあたって、誰か歌う男性シンガーが必要だってことになって、それでTJに連絡したんだよ。おかしいのが、実はこのメンバーで一緒に合わせたのは今回が初めてなんだ。みんなそれぞれ違うところに住んでいるし、大阪公演の前に4時間リハーサルしただけで。まぁ多くは一緒にやった経験がある人たちなわけだけど、(全員揃ったのが初めてだというのに)素晴らしい相性だったよ

ほとんどが(主に)プリンスを通して共演経験があるわけだが、しかし実際、前夜に観た彼らのライブにはファミリー感があり、全員で合わせたのがとても初めてとは思えなかった。

アンドリュー「そうなんだ。きっとそれは、我々みんながプリンスと共演してきたメンバーだからだろう。どの年代に一緒だったかとかは関係なく、プリンスのやり方というものがあって、プリンスと共演してきたミュージシャンはみんなそれを学んでいる。だから一緒にやってもすぐうまくいく。プリンスの下で学んできたミュージシャンなら、それがバラバラの時代であっても、集まって一緒にやればきっとうまくいくだろうね

アンドリューが言うように、それぞれがNPGにいた時代は異なる。NPG入りした経緯についてそれぞれに訊ねてみた。訊いてみるとカサンドラ・オニールが間に入っていることが多いようで、結果的にカサンドラが欠席となったのが少々残念だ。

エイドリアン「俺はキャシー、カサンドラ・オニールから連絡をもらったんだ。プリンスが、エネルギッシュで踊れるホーン隊を作ろうとしているって。それでホーン・セクションのメンバーを一緒に考えてほしいということになって、マーカスが頭に浮かんだんだ。マーカスとはずっと前から友達で。それでマーカスのほうから、一緒にやらないかという連絡が来たから、『無理だよ。今度プリンスのホーンをやるんだ』って言ったら、そのマーカスの話もプリンスのホーン・セクションの話だったっていう(笑)。それで、俺とマーカスでホーン・セクションを作り始めて。ちょうどアンディ・アローがプリンスと一緒にやっている時だね。その後にBKに連絡したんだ。彼はまだ学生だったけど、大学から連れ出してやったよ(笑)

BK「俺の場合は、マーカスと2008年に会って、それから友達で。〈Seabreeze Jazz Festival〉にそれぞれ別のバンドで出演していた時に、マーカスから、プリンスとやるかもしれないという話をこっそり聞いていたんだけど、その数週間後にマーカスから『お前もプリンスとやりたいか』って話をもらって、もちろん!と快諾して(笑)。それから、エイドリアンがホーン・セクションを取り仕切っていたから連絡を取るようになって。アンドリュー(・グーシェイ)のことは知っていたけど初体面だった。他のバンド・メンバーもほとんど初体面だったけど一緒にやるようになってから仲良くなったね

マーカス「俺はアンドリュー・グーシェイから連絡をもらったんだけど、アンドリューとどうやって知り合ったかというと、LAのフェスティバルで演奏するはずのアーティストが出られなくて、代わりに俺が出演したことがあって。同じ日に出演していたアンドリューが俺の演奏を聴いていて、誰かのバンドにいるのか?と訊かれて、いや今はソロでやってると答えたんだ。それで、今度一緒にやろう、と言われて番号を交換したんだけど、俺はそれがいわゆる“LAトーク”ってやつで、上辺だけで言っていて本気で誘っているわけじゃない、と思ったんだ。

それが日曜のことだったんだけど、水曜にアンドリューから電話がかかってきて。でもアンドリューが教えた番号はきっと嘘だと思って信じてなかったから、俺は何度も無視してた(笑)。するとある時、留守電メッセージが残ってて、『ヘイ、マーカス。グーシェイだ。プリンスが君のビデオを観てすごく気に入ってる。来てほしいって言ってるから、折り返しくれ』って。でも俺は自分の耳を疑って、本当にプリンスって言ってるのか電話に耳を近づけたり、友達に聞かせて、『確かに“プリンス”だって言ってるけど』って確認してもらったりして(笑)。そんな感じでなかなか信じられなかったけど(笑)、数ヵ月後には本当に一緒に演奏することができたよ。それがたぶん2012年の2月頃だったかな」(⇒ P2に続く)

来日メンバー:
Andrew Gouche (Bass, Vocals, MD)
Marva King (Vocals)
T.J. Wilkins (Vocals)
Gorden Campbell (Drums)
Cassandra O’Neal (Keyboards, Vocals)
Rick Marcel (Guitar, Vocals)
Marcus Anderson (Saxophone, Vocals)
Lynn Grissett (Trumpet)
Adrian Crutchfield (Saxophone, Vocals)
Joey Rayfield (Trombone)
Bernard “BK” Jackson (Baritone Saxophone, Vocals)