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SYD interview / 「ジ・インターネットでの私の役割は、サメのヒレ(fin)みたいだってこと」

オッド・フューチャーの枠を超え、新たなソウル~ヒップホップを切り拓いていくバンドとして活躍するジ・インターネット。デュオとしてのスタートから、ライブ・ツアーを経てバンド体制に移行した『Feel Good』を経て、ジャミール・ブルーナーとスティーヴ・レイシーを迎えた新体制における2015年の3作目『Ego Death』において、バンドとしてさらなる成熟を見せた。年内にはニュー・アルバムも予定しているという彼らだが、2017年は各人のソロ・リリースから始動。bmrでは、マット・マーシャンズに続いてソロ・デビュー・アルバム『Fin』を発表したシドをキャッチ。あくまでもジ・インターネットのレベルアップを目的としているというソロ活動について話を聞いた。

編集・独自質問・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr)

”Insecurities”ではロバート・グラスパーがティーナ・マリーのローズ・ピアノを弾いてる

(⇒ P1より)
ここからは、bmrからの質問に答えてもらおう。『Fin』がアナウンスされた際に気になったことのひとつが、発売元のThe Internetというレーベル表記だった。他のメンバーと比べ、シドは(現時点で)唯一、Columbia Recordsというメジャー・レーベルを通しての発売となるが、マットやスティーヴ・レイシーら他のメンバーもそれぞれ自身のレーベルから自身の音源をリリースしている。オッド・フューチャーのホッジー(Hodgy)が昨年末に発表したソロ・デビュー作『Fireplace: TheNotTheOtherSide』はOdd Future Recordsからの発売だったが、シドたちはもうOdd Futureからは離れているのだろうか?

実はなんでそういう表記(The Internet/Columbia)になったかは分からないんだ。アルバムは、Columbiaと新たにソロ契約を結んでリリースされたんだよ。今でも私はOdd Future Recordsの1/6の所有権を持ってる

また、今回のアルバムでは先述の“Know”を始め、アリーヤを意識したように感じさせる瞬間も少なくない。初来日時のbmrのインタビューでは、「私はそんなに強い声の持ち主じゃなくて。ファースト・アルバム(『Purple Naked Ladies』)まで歌ったことがなかった」と話してくれたシドだが、ゲスト・ボーカル仕事が増えていることからも分かるとおり、歌手として自信が付いてきたようだ。

私は、もっといいシンガーになろうと常に努力しているよ。“シンガー”としてのキャリアをスタートさせてからは、いつも周りのシンガーたちに追いつかなきゃという気持ちでやってきた。当初は、始めるのが遅すぎたって思って、少し怖気づいていたけど、でも次第に自分のスタイルを確立して自信をつけていったんだ。それが今の私のカラーと作曲スタイルに繋がっている。一時は自分に無いものを求めて試行錯誤はしてみたけど、結局うまくいかなかったね。やっぱり自分の素の歌声が一番しっくり来たんだ

そしてこれは前回の初来日時インタビューでは時間が足りず訊けなかった質問。『Feel Good』発売前、故ティーナ・マリー(Teena Marie)の娘アリア・ローズ(Alia Rose)と共に共同でスタジオを立ち上げたという話だ。その際に、ティーナ・マリーが使用していた機材なども譲り受けたということだが、どうやらこのスタジオは閉ざしてしまった模様。だが、シドはそのまま機材を受け継ぎ、今回のレコーディングでも使用されたという。

「(今回、大半がレコーディングされた)[The Loft]は私の自宅スタジオのこと。確かに、かつてアリアとは一緒にレコーディング・スタジオをオープンしたね。彼女の母親が遺した機材がたくさんあって、レコーディング・スタジオを閉鎖させる時、アリアは私に大半の機材を譲ってくれた。”Insecurities”ではロバート・グラスパー(Robert Glasper)がティーナのローズ・ピアノを弾いてるよ

いろんな外部プロデューサーが参加している一方で、ゲスト・アーティストについては、”Dollar Bills”に参加するスティーヴ・レイシー(「ブリッジで歌っているのも彼」)を除けば、6LACK(ブラック)のみとシンプル。ザ・ウィークエンド(The Weeknd)の〈Starboy Legend Of The Fall Tour〉への帯同も決定し、先日のLA公演にはそのザ・ウィークエンドがサプライズ出演するなどの話題を振りまく注目株だが、まだまだ知名度は低い。シドならフランク・オーシャンだって呼べるだろう……と思い、6LACKを迎えた意図を訊ねた。

確かに当初は有名アーティストを起用しようとも考えたけど、結局誰も思い浮かばなくて。でも、”Over”だけが唯一、誰かゲスト・アーティストが必要だなって思って、ちょうど彼(6LACK)のアルバムを聞いて、ぴったりハマると思ったんだ。実際すごくうまくいったよ

ジ・インターネットは、1月27日にマットが『The Drum Chord Theory』、2月3日にシドの『Fin』と、先述のとおりソロを2週連続でリリース。スティーヴ・レイシーのEP『Steve Lacy’s Demo』も2月24日に発表されたばかり(⇒ 全曲フル試聴可)だが、このリリース攻勢は意図して行われたものだ。

そう、これは意図的なもの。それぞれソロの活動は早めに終えて、次のジ・インターネットのアルバムに取り掛かりたかったから。メンバー全員が何かしらソロの作品をリリースする予定で、次はスティーヴ・レイシーのシングル・シリーズ(※このインタビューは今月上旬に行われた)、そしてクリス(ドラム/エンジニアのクリストファー・アラン・スミス)とパット(ベースのパトリック・ペイジ)もそれぞれソロ・アルバムに取り掛かっている。今度のツアーで、ジ・インターネットの次のアルバム作りに取り掛かる予定だよ。でもじっくり時間はかけるつもり

アルバム・タイトルは、バンドでの私の役割を表している。サメのヒレ(fin)みたいに、最初に目に付くのは私だけど、それは全体のほんの一部でしかないということ

あくまで、ジ・インターネットという本隊ありき。FADERのインタビューでは、個々のソロ活動について、「グループをより高めていくため」が目的なのだとシドが断言していたのも興味深かったが、そうした意思は、魚のヒレを意味する『Fin』というアルバム・タイトルにも表れている。今回のオフィシャル・インタビューでシドはこう説明している。

「(タイトルは)バンドでの私の役割を表していると思う。サメのヒレ(fin)みたいに、最初に目に付くのは私(※ヒレだけが水面上に見える)だけど、それは(バンドという)全体のほんの一部でしかないということ

ここ最近は「サンダーキャット(Thundercat)の新しいやつ、ケラーニ(Kehlani)、それとマット・マーシャンズの新しいアルバムをよく聞いている」というシドが語る2017年のビジョンもまた、ジ・インターネットと共にある。

「(2017年は)とにかく作品を作り続けるよ。今度のジ・インターネットのツアーでは、みんなそれぞれソロも披露するんだ。そこから何かしら生まれるかもね。今はみんなそれぞれ全く違うことをやっている。シナリオは無し。だから、進みながら色々なことが見えてくると思うんだ

日本のファンへ向けて、「ずっとサポートを続けてきてくれてありがとう、とても感謝しているよ。早くみんなに会えるのを楽しみにしてる!」とメッセージを送ってくれたシド。「今度のツアー」は2月から3月まで北米を廻る比較的小規模なものだが、ジ・インターネットの新作完成後にでも、ふたたび来日公演を行ってほしいものだ。

さて最後に。昨年、ジャミロクワイ(Jamiroquai)の初期メンバーであるベースのステュアート・ゼンダー(Stuart Zender)にインタビューした際、『Ego Death』を素晴らしいアルバムだと褒め、「ずっと彼らと一緒に演奏してみたいと思ってる」と話していたことをシドに伝えてみた。
ジ・インターネットは、(ゼンダ―在籍期の)93年の“Too Young To Die”をライブでカバーするなど、以前からジャミロクワイからの影響を公言。だが、92年生まれのシド、88年生まれのマットらは世代ではないはず。ちょうどジャミロクワイが再始動するタイミングということもあり、bmrからの質問として最後に振ってみた次第だ。

私たちは大のジャミロクワイ・ファンだよ!! マットのおかげだね。マットが2011年にLAに引っ越してきた時に、私にジャミロクワイを教えてくれたんだ。彼は、腕にジャミロクワイのロゴ(バッファロー・マン)のタトゥーがあるんだから。でもステュアートが『Ego Death』を好きだなんて全く知らなかった。アメイジング!