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SYD interview / 「ジ・インターネットでの私の役割は、サメのヒレ(fin)みたいだってこと」

オッド・フューチャーの枠を超え、新たなソウル~ヒップホップを切り拓いていくバンドとして活躍するジ・インターネット。デュオとしてのスタートから、ライブ・ツアーを経てバンド体制に移行した『Feel Good』を経て、ジャミール・ブルーナーとスティーヴ・レイシーを迎えた新体制における2015年の3作目『Ego Death』において、バンドとしてさらなる成熟を見せた。年内にはニュー・アルバムも予定しているという彼らだが、2017年は各人のソロ・リリースから始動。bmrでは、マット・マーシャンズに続いてソロ・デビュー・アルバム『Fin』を発表したシドをキャッチ。あくまでもジ・インターネットのレベルアップを目的としているというソロ活動について話を聞いた。

編集・独自質問・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr)

オッド・フューチャー(Odd Future)の一員として、当初はプロデューサーという立ち位置にいたシド(・ザ・キッド)。マット・マーシャンズ(Matt Martians)とのデュオ時代に発表されたジ・インターネットの『Purple Naked Ladies』が発表された2011年の始めには、シド・ザ・キッド名義でビート集『Raunchboots』を発表していたし、リトル・ドラゴン(Little Dragon)の“Secrets”のリミックスも発表していた。

だが、ジ・インターネットの成功と共に、裏方から徐々にフロントマンとして存在感を示すようになり、2016年はケイトラナダ(KAYTRANADA)、コモン(Common)、リトル・シムズ(Little Simz)、ジェシー・ボイキンス三世(Jesse Boykins III)、キングダム(Kingdom)などの作品でボーカルを務めてきた彼女が、ついに満を持してシンガーとしてソロ・デビュー。マットの『The Drum Chord Theory』との2週連続リリースという形でシドのデビュー・アルバム『Fin』が発売された。

この『Fin』の発売を記念して日本向けのオフィシャル・インタビューが敢行され、bmrからの追加質問も許してもらった。このbmr独自質問と共に、シドが今回のソロ活動についてどのように考えているか、語ってもらおう。

ほとんどの曲は、他のアーティストに提供する目的で書いた曲なんだ

ジ・インターネットのメンバーが個々にソロ活動に動くという話は当初、昨年10月に公開されたFADERの独占インタビュー記事で明らかになった。それは、ジ・インターネットが2017年の春を目標に新作リリースに動いており、それと同時に、シド、マット、スティーヴ・レイシー(Steve Lacy)らメンバーたちのソロ活動も始動しているという話で、この時点ですでにシドは14曲を書き上げ、ほとんどをレコーディング済みとされるなど、ほぼ完成していた様子だった(当時、アルバム・タイトルは『Dive』と紹介されていた)。

ゆえに、今年1月にシドのソロ・アルバムがメンバーの中でいち早く正式にアナウンスされたのも不思議ではなかったが、しかし、元々は自分のアルバムを作ろうと考えていたわけではなかったのだという。

「(ソロ・アルバムのきっかけは)ジ・インターネットとは違うタイプの曲がたくさん出来あがったからかな。当初は他のアーティストに提供しようと思っていたんだけど、まだそういうタイミングでもないかなって思って。それでちょうど、ジ・インターネットの他のメンバーがソロ・アルバムを作り始めていたから、私も自分のソロをやってみようと思ったわけ。
(『Fin』を作り始めた時期は)分からない。だって、アルバムのために曲作りを始めたわけじゃないから。とにかく曲を書きためていたわけ、他のアーティストへ提供するためにね。実は、ほとんどの曲がそういう目的で書いた曲なんだ

なんとなく、アデルやリアーナらへの提供を考えて作った(ものの採用されなかった)曲で構成されたシーアの『This Is Acting』を思わせる経緯だ。レコーディングについて、「レコーディングは自宅スタジオで、ほとんどひとりで行ったんだ。わりと地味な作業だったから、あんまり面白いエピソードは無いね(笑)」と話すだけに、気負わず、マイペースに生まれたという感じなのだろう。アルバムの制作についても、「気を付けたのは、全体を通して中だるみしないようにすること。後はわりと自然に出来ていった」と簡潔に振り返っている。

FADERのインタビューでは、インシンク、ブリトニースピアーズ、バックストリート・ボーイズといった名前を挙げながら、「ポップ・ミュージックはずっと大好きだった」と話し、「私のソロはもうちょっとポップなサウンドも加わることになる」と説明していたシド。今回のインタビューでは、具体的に『Fin』へのアプローチについて「サウンド面でいうと、ジ・インターネットよりエレクトロな要素が強いと思う。もっとモダンでエッジー。歌詞については、ジ・インターネットの時と同じアプローチだね」と話している。

また、プロデューサーとしての顔も持つシドだが、リード・シングルの“All About Me”をジ・インターネットのスティーヴ・レイシーに任せていたのに加え、『Fin』には外部プロデューサーも多く参加している。
ビヨンセのプロデュースで名を上げたメロー・X(MeLo-X)や、カニエ&ジェイ・Z“Niggas In Paris”など数々のヒットを生んだヒット・ボーイ(Hit-Boy)、ケンドリック・ラマーのグラミー授賞曲“i”などで知られるラーキ(Rahki)、カニエ作品の常連であるアンソニー・キルホファー(Anthony Kilhoffer)や、メロー・X、ヒット・ボーイらと共にビヨンセ“Sorry”に関わったヘイズバンガー(HazeBanger)などなど。

メロー・Xはとても素敵な人。ある日彼がやって来て、たくさんビートを作り始めて、最終的に4つ、いいものが出来て、その内のひとつが”Body”になった。ヒット・ボーイも超ナイス・ガイ。彼が”Shake Em Off”をいちから作り上げるのを眼の前で見てたよ。ラーキは超ドープ。彼の曲作りはものすごく細かくて、それがすごく楽しかった。ヘイズは最初のコラボ相手で、彼のエンジニアリング含めて、すごく仕事がしやすかったね。ヘイズとは2曲(“Got Her Own”と“Over”)やったよ。とにかく素晴らしいプロデューサーたちと一緒に仕事が出来て、とても恵まれていたと思う

中でも今のお気に入りは、2曲目の“Know”だという。「全部が私のベイビーだけど、今お気に入りなのは”Know”。ちょうどこの曲のリハーサルをしていて、歌うのがとても楽しい」と話している。
90年代後半のアリーヤ×ティンバランドのタッグを想起させるような“Know”は、R&Bファンからの支持をもっとも得られそうな曲のひとつで、ニック・グリーン(Nick Green)がプロデュースした。『Ego Death』では半数以上の楽曲のソングライティングに関わり、また日本盤ボーナストラック(あるいは『Ego Death (Bonus Tracks)』収録)の“Famous”のプロデュースを務めたニッキー・デイヴィ(Nicky Davey)の片割れでもあるニックは、シドがゲスト参加したケイトラナダ“You’re The One”のソングライティングにも関わるなど、シドの右肩的存在となっているキーパーソンであり、実際、『Fin』においても、“Know”や“Body”などその名が記載されている楽曲は7曲に及ぶ。
(⇒ P2 「”Insecurities”ではロバート・グラスパーがティーナ・マリーのローズ・ピアノを弾いてる」