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TITO JACKSON interview / 「本当に長い時間がかかった。マイケルも亡くなってしまったし、いろんなことがあったよ」

ジャクソン5結成のきっかけを作った「最初の男」であり、ジャクソン・ファミリーの中で唯一ソロ・アルバムを発表していなかった「最後の男」……ティト・ジャクソンがついに長年待たれていたソロ作『Tito Time』を12月21日、世界に先駆けてここ日本で発表した。3人の息子たち=3Tや、ベティ・ライト、ジョセリン・ブラウン、ビッグ・ダディ・ケインらの助力も借りて、ついにソロ・アーティストとしてのティトがベールを脱ぐ。この発売を記念して、ソロ・プロジェクトに対するこれまでの想い、制作の経緯や参加メンバーについて、そして待たれるジャクソンズの新作に就いてなど、ティト・ジャクソンに直接、話を聞いた。

質問/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) 取材協力/安江幸子 Photo by Taj Jackson

(→ P1より)
――他の参加プロデューサーについて紹介していただきたいのですが。アール・パウエルや、あと弟さんとは別人のマイケル・ジャクソン(マイケル・K・ジャクソン)が参加してますよね。

「そう、アール・パウエル(Earl Powell)、マイケル・ジャクソン(Michael Kurt Jackson)、ジェフ・ロバートソン(Jeff “Tight” Roberson)らが参加してくれた。彼らはもともとジャクソン兄弟の作品に携わることになっていて、私はマーロンを通じて出会ったんだ。でも(ジャクソンズの作品には)スケジュールが合わなかったから、私の作品に起用することにしたんだ。私が持っていた数曲に手を加えてもらって、それから他の曲でもコラボレーションしてもらった。素晴らしいプロデューサーであり、ライター陣だよ。彼らとは次のアルバムも一緒にやっているんだ。そんな感じかな。“マイケル・ジャクソン”には私も驚いたよ。こっちはマイケル・K・ジャクソンだけどね」

――いとことか、親戚でもないのですよね。

「違う。でも面白いもので、彼もいい声の持ち主なんだ。もっとも、私はよく彼のことを『“マイケル・ジャクソン”の声がフラットするなんて初めて聞いた』なんてからかっているんだけどね(笑)」

――今回ベティ・ライトが本編最後の“Cruisin’”に参加していますが、ベティ・ライトといえば30年以上前、彼女の1983年のアルバム『Wright Back At You』にマーロンらと一緒に“Special Love”や“Burning Desire”を提供していたこともありましたよね。

「素晴らしい話があるんだ。ぜひその話をさせてくれ。ベティ・ライトは私たち兄弟とよくショウをやっていたから、次第に兄弟全員仲良くなっていったんだ。いろんな偶然が重なって彼女が私の家に来ることになって、一緒に曲を書き始めた。そしてまたいろんな偶然が重なって、気がついたらスタジオにいて、ああいう素晴らしい曲たちができていたんだ。でもベティとはその後音信不通になってしまって、それから何年も経ってしまったから、どうしているんだろうとずっと気になっていた。

そんなある日、“Cruisin’”のリミックスをやることになった。そうしたらリミックスの担当者が3つのミックスを持ってきた。女性ボーカルのパートが気になったから、『君が足したボーカルはとてもクールだな。誰の声なんだ?』と訊いたら、『ベティ・ライトだ』って言うんだよ。思わず『何だって?!』と言ってしまった。『ベティ・ライトってあのベティ・ライトか?』、『ああ』、『OH MY GOD!』という感じだったよ。電話番号を教えてもらって、彼女に電話して、あっという間に昔に戻ったよ。彼女は素敵だし、歌も素晴らしい」

――すごいですね。プロジェクトのために彼女に声をかけたのではなく、たまたま彼女の声が入ってたと。

「そう、まったくの偶然さ。

ジョセリン・ブラウンの場合はまた違う状況でね。女性ボーカルを探していて、マネージャーのヴァイ・ビラップス(*)に紹介してもらったんだ。彼女がジョセリンと知り合いでね。『会ってみなさいよ。素晴らしい女性だし』ということだったので、家に呼んで曲をかけたらすっかり気に入ってくれた。2日後には一緒にスタジオ入りしていたよ。あのパートは15分くらいで録音したんだ」

*ヴァイ・ビラップス(Vie Billups)は、60年代に活動したガールズ・グループ=フラーテーションズ(The Flirtations)のヴィオラ・ビラップス(Viola Billups)で、グループ脱退後、主に70年代から80年代にかけてパーリー・ゲイツ(Pearly Gates)名義でソロ歌手としても活動した。2003年にマネジメント会社を立ち上げており、ティトや3Tもクライアントとなっている。なおフラーテーションズは近年再結成しており、昨年ガールズ・グループの名曲カバー集『Girls』をリリースしている。

――ジョセリン・ブラウンとは2014年のドバイでの大みそかコンサートで一緒になったことがあったようですが、知り合ったのはその時ですか?

「そう、一緒だったんだ。よく知っているね。でも、あれはこの録音の前のことで、あの時はまだ接点がなかったんだ」

――ということは今回は再会でありながらも実質的には初対面だったと。

「そうだね。人生は面白いもので、時として意外な人と関わることになる。会ったことはあってもその時はあまり注目していなかったのに、ある日突然とても重要な存在になる。そういうことがあるんだ」

――計画されていたわけでなく、自然にそうなったということですね。セレンディピティ(偶然出会う素晴らしい幸運のこと。またその偶然の幸運を見つける天性の才能のこと)といいますか。

「その通りだよ。すべてが自然の流れで起こったことなんだ」

――ベティ・ライト、ジョセリン・ブラウン、ビッグ・ダディ・ケインと、ゲスト・アーティストはベテランが多いですが、“Not Afraid”に参加しているルー(Roo)というのはどういうアーティストなのでしょうか?

「ルーは駆け出しのアーティストで、マイケル・K・ジャクソンの友人なんだ。ちょっと彼女を試してみようと思ってね。とてもうまい子だよ」

――新人とは思えない感じは確かにありますね。

「そうなんだよ。そのうち頭角を現してくると思うよ」

――ミュージシャンでは、ディアンジェロ&ザ・ヴァンガードでも活躍するアイゼイア・シャーキー(Isaiah Sharkey)が4曲で演奏していますが、どういう経緯で参加したのでしょうか。

「アイゼイアは素晴らしいギタリストだ。シカゴ出身で、アール・パウエルやマイケル・K・ジャクソンの音楽チームの一員なんだ。パティ・ラベル(Patti LaBelle)のギタリストでもあるね。ツアーもセッションもこなすミュージシャンで、素晴らしいギタリストだよ。それでいてとても謙虚なんだ」

――そうやってアールやマイケル・Kが色々推薦してくるアーティストはどうやって起用するのですか。オーディションでもするのでしょうか。それとも過去の実績から?

「こういう言い方にしてみようか。この業界ではある程度の水準に達すると、プロフェッショナルは他のプロフェッショナルを見抜く力を身につけるものなんだ。その人が売れていようといまいとね。

野球選手のバリー・ボンズを知っているかい? マツイ(松井秀喜)も知っているよね? バリー・ボンズはマツイをアメリカに連れて行って、彼はうまいと紹介した。みんな彼を信じたよ。バリー・ボンズなんだから。そういう感じなんだ。プロフェッショナルは他の優れた人たちを見抜く力がある。だからその力を信頼するんだ。試してみて、もし気に入らなかったら使わなければいい、それだけの話さ。また他の人を探せばいいんだ。はい次、NEXT!という感じにね(笑)」

――プロフェッショナルがピックアップする相手もまた、プロフェッショナルということですね。

「もちろんさ。それから、特定のフレーバーを求めて人を紹介してもらうこともあるんだ。この部分にこの音が欲しい、とはっきり分かっている場合だね。このプレーヤーならこの音だろう、と考えて起用する」

――息子さんたち以外に、きょうだいの誰かに参加してもらおうと思ったことはありますか。

「今回はなかったね。将来的にはあるかも知れないけど。今回はジャクソンズやジャクソン5の助けなしに、ティトの“血”だけで作りたいと思ったんだ」

――なるほど。もしマイケルがこのアルバムに参加できるとしたら、どの曲で共演したいですか?と訊こうと思ったんですが……今は適切な質問ではないかも知れませんね。

「今は適切な質問ではないけど(笑)、もし参加してもらえるとしたら“Get It Baby”だろうな」

――ボーナストラックの“I Ain’t Goin’ Nowhere”は個人的に一番気に入っている曲なのですが、どういう風に生まれたのでしょうか?

「あれにもまたストーリーがあってね。私が付き合っていたガールフレンドのことなんだ。彼女はいつも私がどうしているか、いつまたツアーに出てしまうのか、もう戻って来ないんじゃないか、とそういう心配ばかりしていたからね。この曲がその時の私の(「離れるつもりはない」という)気持ちそのものだよ」

――なるほど。でももう何十年も世界中を回っているわけですし、歴代のガールフレンドはみんなその心配をしていたのでは(笑)。

「そうなんだよ(笑)。まぁ、離れていったのは彼女の方からだからね。私からじゃない(笑)。どこかに行ってしまったのは彼女の方なんだ(笑)。ちなみに“One Way Street”も同じ女の子のことを歌っているよ(笑)」

――(笑)。そうですか。題材にされたことを彼女はご存知なんですかね。

「聴いてくれれば自分のことだって分かると思うよ」

――この“I Ain’t Goin’ Nowhere”は、途中で入る語りや、3Tとのハーモニーが、70年代ソウル・ミュージックのコーラス・グループを思わせます。当時、ジャクソン5として、実際にテンプテーションズなど多くのコーラス・グループとステージを共にしたと思いますが、そういうノスタルジーもこの曲にはあるのでしょうか?

「みんなは知らないかも知れないけど、息子たちが小さい頃、私たちは歌いながら家中を走り回っていたんだ。その頃の思い出からきている。私と息子たちの、というか私の夢は、いつか家族でこういうことを一緒にやることだった。将来は本格的にやってみたいね。さっきも言ったけど、昔、家の中で歌っていた頃は3Tじゃなくて4Tだったんだ(笑)」

――先ほどソロ第2弾にすでに着手しているとおっしゃっていましたね。ザ・ジャクソンズのアルバムも以前から制作しているという話ですが、進捗はいかがでしょうか?

「制作はしているけど、ゆっくりしたプロジェクトだね。というのも、今は兄弟が全米各地にバラバラに住んでいるんだ。アメリカは日本ほど小さな国じゃないからね。ただ、進捗は順調だよ。半分以上はできたという感じかな」

――あなたのソロの方が先に出そうな感じですか?

「分からないね。そうじゃないかも知れないし。今回のアルバムの息が少しは長いといいんだけどね」

――そのアルバム『Tito Time』は12月21日に日本先行発売になるわけですが、アメリカでの発売予定は? すぐ後に予定しているのでしょうか。

「いや。というのも、この後ヨーロッパに行くんだ。アメリカ・リリースは最後になるんじゃないかな。ヨーロッパでは来年初めに発売される」

――ヨーロッパで発売してプロモーションを済ませてから、全米発売ということですね。

「そうだね」

――ということは、2作目の制作はそういったプロモーションと同時進行なのでしょうか。

「同時進行というか、オフの時とか、合間を縫ってやるつもりだよ」

――ツアー中もバスや飛行機の中で曲作りをするタイプですか?

「昔はそうだったけど、今はそうでもないね。今もパソコンを持ち歩いてはいるけど。でもミュージシャンだったらみんなそうだと思うけど、手元にiPhoneしかなかったとしても、その場で吹き込んでおくことはある」

――若手から多くの尊敬を集めているあなたですが、若手のアーティスト/作品でインスピレーションを受けたものはありますか? あるいは個人的に気に入っている作品を教えて下さい。

「若手で気に入っているのは色々いるけど、何と言ってもMr.ブルーノ・マーズだね」

――あぁ。最近新作を出しましたね。

「そう。新作はまだ聴いていないけど、素晴らしいと聞いているよ」

――彼もまた、あなたがたのフォロワーのひとりですよね。

「そうだね。オールド・スクールなサウンドを持っている。彼の作品はこれまでのものも全部聴いてきたから、新作もぜひ聴いてみたいと思っているよ」

――日本先行リリースということで、ぜひ日本のファンへメッセージを下さい。

「日本のファンのみなさん、ありがとう。私の家族のことも、私自身のことも心から応援してくれている。このアルバムはみなさんのために作ったんだ。だからこそ最初に届けたかった。どうぞ楽しんで、気に入ってほしい。近いうちにみなさんに会えますように」

――最高のクリスマス・プレゼントをありがとうございます。……あっ、もうひとつお聴かせください。今年の〈Soul Train Awards〉のハイライトであるテディ・ライリー・トリビュートで、マイケル・ジャクソンの“Remember The Time”に参加していたのも印象的でしたが、テディから直接オファーを受けたのでしょうか?

「(笑)。いや、実は……ボビー・ブラウンが(“Remember The Time”の)前に出たのは見たかい? あれにも私は出ていたんだ。ただしバックステージで、カメラのないところでね。〈Soul Train Awards〉に誘ってくれたのは、実はボビー・ブラウンの方だったんだ。ところがテディ・ライリーは私の弟(マイケル)と親交が深くて、今回も弟のトリビュートをしてくれたから、番組のプロデューサーがこちらに出た方がいいと言ってきてね。ボビーには楽屋でギターを弾いただけになってしまった。でもボビーはジェントルマン……真のジェントルマンだから、急な変更もすんなり了承してくれたよ」

――それは貴重な話をありがとうございます。近年はこの夏のサマーソニックも含め、割と頻繁に来日されているのは知っていますが、ぜひこのアルバムを引っ提げての来日も果たしてくださいね。

「ぜひそうしたいよ。ありがとう!」

1. Get It Baby (feat. Big Daddy Kane)
2. When The Magic Happens (duet with Jocelyn Brown)
3. Put It On Me
4. We Made It
5. One Way Street
6. So Far So Good (feat. 3T)
7. On My Way Home
8. Jammer Street (feat. 3T)
9. She Gotta Go
10. Not Afraid (feat. Roo)
11. Cruisin’ (feat. Betty Wright)

[Japanese bonus tracks]
12. T.I.T.O. Love
13. I Ain’t Goin’ Nowhere (feat. 3T)
14. Home Is Where The Heart Is
15. Get It Baby (NONA REEVES Remix)
16. We Made It (Remix feat. GOTA NISHIDERA)