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久保田利伸 interview / 「何は無くとも歌、ソウル、R&B。その魅力に取り憑かれて40年なわけですよ」

デビュー30周年を迎えた久保田利伸がこの11月23日に発売するのが、これまでのコラボレーションを総括した『THE BADDEST〜Collaboration〜』。ただのfeaturingゲスト楽曲を集めたというだけでなく、デビュー前のミシェル・ンデゲオチェロがベースを弾いた“Let's Get A Groove ~Yo! Hips~”から友人ミュージック・ソウルチャイルドとの新録曲まで、久保田利伸だからこそ成し得たコラボレーションの数々をたっぷりと2枚組にして収めたベスト・アルバム。Disc 2は「英語詞編」ということで、90年代に全米デビューも果たし、日本人として唯一『Soul Train』に出演したことも語り草な彼が、ザ・ルーツ、ラファエル・サディーク、アリ・シャヒード、アンジー・ストーンらとがっつり組んできたことを振り返ることができる。そのあまりに大きなレガシーを大いに語ってもらったこのインタビュー、予定時間を大幅に超えたその内容を余すことなくお伝えする。必読です。

取材・文/林 剛

僕らの間ではちょっと元ネタに気付いてほしいっていうのもある。ソウル・マニアの間での秘密の気づき合いっこ。それも大事なソウル・マナーなんです

——それが全米リリース第2弾アルバム『Nothing But Your Love』(2000年)になるとラファエル・サディーク(Raphael Saadiq)にプロデュースを依頼していますよね。今回のベストにはラファエルが手掛けたその“Pu Pu”が選ばれていますけど、久保田さんのヴォーカルもラファエルみたいな甘くて青臭い感じで、ネオ・ソウル・オリエンテッドでもあるというか。

ラファエルは僕と同じミュージック・ピープルですね。“歌詞ピープル”じゃないという意味で。ラファエルは歌詞を書くのが途中で面倒臭くなってくるタイプなんですよ。ドウェインはそういうところがないんですが、ラファエルは自由なヤツなので。だから先に進まなくて、僕も2日くらい(ラファエルのスタジオがあった)サクラメントで時間を無駄にしてたんですけど、先にギャラを払っていたこともあって、彼も申し訳ない気持ちになってきたんでしょうね。そこでラファエルが呼んだのがアンジー・ストーン(Angie Stone)だったんです

——アンジーとはその後、ミュージック・ソウルチャイルドと同じくらい濃い付き合いをしていくことになりますよね。

そうなんです。東海岸に住んでる人でもあるので。あと面倒見がいいんですよ。プロ、アマ関係なく、歌を歌ってるヤツがいると好きになっちゃったりとか。ディアンジェロ(D’Angelo)とかね。僕はそういう関係じゃないですけど(笑)

——それにしても『Nothing But Your Love』というアルバムはディアンジェロの『Voodoo』とかジル・スコットの『Who Is Jill Scott? Words And Sounds Vol. 1』と同じ2000年に出されていて、しかもそれらと似たような人脈・環境で作られていたという、まさにフィリーを中心としたネオ・ソウル・ムーヴメントのど真ん中にあった作品で、これは当時かなり衝撃を受けました。

ちょうどネオ・ソウルの匂いが始まる頃っていうのは、僕が無理せず、今何をやればいいかとか考えたり研究したりしないで自然にやれた時期で。だからこのアルバムは一番肌に合ってるんですよね

——ザ・ルーツ周辺との絡みは、最初にお話しされていたように、やはりリチャード・ニコルズとの出会いがキッカケだったと。

そうですね、リッチが頑張ってました。このアルバムに繋がる半年か1年くらい前にザ・ルーツのメンバーがNYのハーレムにいて、彼らが暮らしてるアパートで今プリプロやってるから来いよって言ってくれたのがリッチで。しかもジャジーファットナスティーズのメルセデスはリッチのカミさんだったりして声もかけやすかった。

基本フィリーの人たちって温かいんですよ。NYの都会の冷たさがなくて、アマチュアイズムも含めて純粋に音楽に近いところで付き合える。歌の発音やディレクションも付き合ってくれて、スタジオにリッチがいたり、ジャジーファットナスティーズのどっちかがいたりという感じで、わりとチームとしてやってくれましたね

——ザ・ルーツがプロデュースした“Masquerade”と“Till She Comes”は2曲とも今回のベストに入っていますが、最初のお話にもあったようにザ・ルーツがR&Bのプロデュースにも積極的に関わり始めた頃の曲で、特に“Till She Comes”は、例えばザ・ルーツがディアンジェロと共演した“The ‘Notic”(97年のサントラ『Men In Black: The Album』収録)やエリック・ベネイ(Eric Benet)がザ・ルーツと共演した“Why”(98年のサントラ『Ride』収録)みたいなタイトでミニマルなビートに乗ってR&Bシンガーが歌うという、そういう流れにある曲だったのかなと。ザ・ルーツが“ジャジーなヒップホップ・バンド”と言われていた最後あたりの曲と言いますか。

そうですね。確かに僕とやった時の彼らは、歌モノをやりながら研究中って感じだった。エリカ・バドゥとかエリック・ベネイとか、何曲かで歌モノを楽しみながらやり始めていたんじゃないですかね。

そういえば、ザ・ルーツがエリカ・バドゥをフィーチャーした“You Got Me”(99年)っていう曲がありましたけど、僕の“Till She Comes”をレコーディングしている最中、クエストラヴがエリカにずっと電話してましたよ。アイツは器用で、ドラムを叩きながら片手で電話してるんだけど、何度もしつこくエリカに『サビだけでいいから歌ってくれ』って言ってるんですよね。『違うヤツ(デビュー直前のジル・スコット)が歌ったデモ・ヴァージョンを聴いただろ? え、聴いてねえのかよ……』とか言いながら30小節くらいこっちの曲を進めてるんだけど、そのテイクはさすがにダメでした。そんなことをずっとやってましたね

——クエストラヴらしいですね(笑)。で、“Till She Comes”は、久保田さんと一緒に曲を書いているジャジーファットナスティーズのふたりがバック・ヴォーカルで、当時ザ・ルーツ一派だったスクラッチ(Scratch)がヒューマン・ビートボックス(クレジットではヒューマン・ターンテーブル)をやって、ストリングスに元MFSB~サルソウル・オーケストラのチェロ奏者のラリー・ゴールド(Larry Gold)を起用するという、この当時ならではのフィリー・コネクション満開の一曲でもあるわけですが。

リズム録りの時、ザ・ルーツの連中が年間通して借りてる部屋があると言って、タタミ2畳分くらいの狭いところでクエストラヴがドラムを叩くんですよ。そのほうが音がタイトになるからって言って。で、しばらしくて、クエストラヴの発案で、せっかくフィリーでやるなら“生き残り”がいるからストリングスを入れようと。そこで登場したのがラリー・ゴールド。ラリー・ゴールドの[The Studio]にも部屋があるからっていうので、そこに行ってストリングスを録りました。スクラッチは問題児でね……まあ、呼べば来るくらいの感じでしたけど。曲の仕上がりがわりとスウィートになってしまったので、アクを出したいと思ってスクラッチのヒューマン・ビートを入れたんですよね

——久保田さんの音楽はファンクの要素も強いですけど、新旧フィラデルフィア・サウンドの要素もベースとしてありますよね。

まあ、たまたまなんですけどね、古いものとして(70年代の)フィリー・ソウルは僕の中でデカいですし、やっぱり歌モノとしてすんなり入っていけましたから。ソウル・ミュージックを聴き始めた頃にフィリー・ソウルが流行っていて、AMラジオからスタイリスティックス(The Stylistics)がかかってきた時に、あのメロディの優しさは子供でもとっつきやすかった。そこから始まって、時代を飛んで、たまたま20年くらい前に(新しい)フィリーの人たちが音を作って、ザ・ルーツがいたりとか、ネオ・ソウル特有のコネクションとグルーヴができてNYとフィリーが一緒になって繋がった。たまたまですけど、ずっと新旧織り混ざっていますね

——今回のベストとは関係ないですが、コラボといえば久保田さんの作曲/客演で、松尾潔さんが歌詞を書いた鈴木雅之さんの“リバイバル”が今年出ましたけど、あれも70年代のフィリー・ソウルを思わせるスウィートなバラッドでした。

また元ネタとか言わないでくださいよ(笑)

——はい、メイジャー・ハリス(Major Harris)のアレとか言わないようにします(笑)

あれ、メイジャー・ハリスの“Love Won’t Let Me Wait”は4分の4拍子で、“リバイバル”は3拍子に変えてあるんですけど、それでもわかっちゃいますか? (メイジャー・ハリスの)曲の一番大事なところが出ちゃってるんですね。困ったなぁ(笑)。いや、人に曲を書くことはたまにあるんですが、ベタなソウルというか、元ネタをわかってくださいみたいなレベルの曲を書くチャンスって、なかなかないんですよ。少しポップに工夫してあげなきゃいけなかったりとか。でも、そこはマーチン先輩なので喜んでくれるかなと思って。それに僕らの間ではちょっと気付いてほしいっていうのもあったから。ソウル・マニアの間での秘密の気づき合いっこ。それも大事なソウル・マナーだって、地上波のテレビ番組でも言いましたよ(笑)」(→ P7に続く)

■ 初回生産限定盤 CD2枚組+特典DVD(MV10曲収録)+久保田利伸による全曲レコーディングエピソード・ブックレット付き ¥4,200(tax in)
■ 通常盤 CD2枚組 ¥3,600(tax in)

DISC 1
1. M☆A☆G☆I☆C (KUBOTA meets KREVA)
2. LA・LA・LA LOVE SONG (Toshinobu Kubota with Naomi Campbell)
3. 無常 (feat. Mos Def)
4. FLYING EASY LOVING CRAZY (TOSHINOBU KUBOTA feat. MISIA)
5. Let’s Get A Groove ~Yo! Hips~ (Bass: Meshell Ndegeocello, Saxophon: Michael Brecker)
6. MIXED NUTS (P funk Chant: George Clinton, Bass & Guitar: William “Bootsy” Collins)
7. Soul 2 Soul feat. AI
8. POLE POLE TAXI (feat. Maceo Parker)
9. Golden Smile feat. EXILE ATSUSHI
10. Is it over ? (Hook Vocal: JUJU)
11. Keep it Rock (feat. WISE, Tarantula from Spontania)
12. a Love Story (KUBOSSA ver.) (Flugelhorn: TOKU)
13. Moondust (poetry reading by Kyoko Koizumi)
14. Keep Holding U (SunMin thanX Kubota)
15. Messengers’ Rhyme ~Rakushow, it’s your Show!~ (Rakushow Voice: Naoko Iijima)
16. Love under the moon (Harmonica Solo: Toots Thielemans)

DISC 2
1. Never Turn Back (Feat. Pras)
2. Funk It Up (Guitar: Nile Rodgers)
3. LIVING FOR TODAY (Feat. Mos Def)
4. HOLD ME DOWN (Duet with Angie Stone)
5. Till She Comes (Produced by The Roots)
6. Nice & EZ (Produced by D’wayne Wiggins)
7. SUKIYAKI ~Ue wo muite arukou~ (feat. Musiq Soulchild)
8. Masquerade (Produced by The Roots)
9. Just The Two Of Us (Duet with Caron Wheeler)
10. VOODOO WOMAN (Feat. Renee Neufville)
11. Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars) (Acoustic Piano: Daniel Jobim, Guitar: Goro Ito)
12. NEVA SATISFIED (Produced by Ali Shaheed Muhammad)
13. Pu Pu (Produced by Raphael Saadiq)
14. FOREVER YOURS (Duet with Alyson Williams)

特典DVD
1. Soul 2 Soul feat. AI
2. Golden Smile feat. EXILE ATSUSHI Recording Document Full ver.
3. FLYING EASY LOVING CRAZY (TOSHINOBU KUBOTA feat. MISIA)
4. M☆A☆G☆I☆C (KUBOTA meets KREVA)
5. Messengers’ Rhyme 〜Rakushow, it’s your Show!〜 (Rakushow Voice: Naoko Iijima)
6. LA・LA・LA LOVE SONG (Toshinobu Kubota with Naomi Campbell)
7. Masquerade (Produced by The Roots)
8. Funk It Up (Guitar: Nile Rodgers)
9. Just The Two Of Us (Duet with Caron Wheeler)
10. FOREVER YOURS (Duet with Alyson Williams)