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久保田利伸 interview / 「何は無くとも歌、ソウル、R&B。その魅力に取り憑かれて40年なわけですよ」

デビュー30周年を迎えた久保田利伸がこの11月23日に発売するのが、これまでのコラボレーションを総括した『THE BADDEST〜Collaboration〜』。ただのfeaturingゲスト楽曲を集めたというだけでなく、デビュー前のミシェル・ンデゲオチェロがベースを弾いた“Let's Get A Groove ~Yo! Hips~”から友人ミュージック・ソウルチャイルドとの新録曲まで、久保田利伸だからこそ成し得たコラボレーションの数々をたっぷりと2枚組にして収めたベスト・アルバム。Disc 2は「英語詞編」ということで、90年代に全米デビューも果たし、日本人歌手として唯一『Soul Train』に出演したことも語り草な彼が、ザ・ルーツ、ラファエル・サディーク、アリ・シャヒード、アンジー・ストーンらとがっつり組んできたことを振り返ることができる。そのあまりに大きなレガシーを大いに語ってもらったこのインタビュー、予定時間を大幅に超えたその内容を余すことなくお伝えする。必読です。

取材・文/林 剛

ナイル・ロジャースが日本に来ると、僕をゲストに呼ぼうと連絡が来るんですよ。直々にメールが来て、俺が言ってるのに来ないのか?くらいの威圧感で

——今回、全米デビュー・アルバム『SUNSHINE, MOONLIGHT』(95年)に「R&Bヴァージョン」が収録されたキャロン・ウィーラーとのビル・ウィザース(Bill Withers)曲カヴァー“Just The Two Of Us”も、オリジナル・ヴァージョンが録られたのはこの頃でしょうか。

キャロンとは、“MIXED NUTS”とかのレコーディングが終わって1~2年経ってからじゃないかな。“Just The Two Of Us”は僕が日本で既に出していたレゲエのアルバム『PARALLEL WORLD I KUBOJAH』でキャロンと歌って、『あんたオイシイことやるわね』って言われて、それなら全米リリースのアルバムにも入れようよってことでR&Bヴァージョンを作ったんです。

キャロンは、以前彼女が参加していたソウルIIソウル(Soul II Soul)が大好きで。今回、AIと一緒にやった“Soul 2 Soul”っていう新曲がありますけど、それじゃないですよ。僕にしては珍しくイギリスのものが好きで、当時NYゴーゴーって言われてたニュー・ジャック・スウィングと同じ時代に同じハネを持ったグラウンド・ビート、UKゴーゴーって言われてたんですが、そのUKゴーゴーの歌姫(=キャロン)が好きで、連絡取ってもらったんですよ。そしたらロンドンから来ましたね、レコーディングのために。彼女はジャマイカ系で、レゲエに親しんでいる人なので、かなり張り切ってやってくれました

——この時のレコーディングにメイシオ・パーカー(Maceo Parker)がやってきたという話を聞いたことがありますが、“POLE POLE TAXI”(93年)にメイシオのサックスがフィーチャーされているのもその流れですか? しかもダンスホール的要素が入ったジャジー・ファンクという。久保田さんはメイシオのサックスと掛け合うようにスキャットもしていて。

節操ないですよね、メイシオを使ってそんなアプローチというのも。この曲は自分のラジオ番組のテーマ・ソングのために作ったんですけど、これに乗って喋んなきゃいけないんで、歌ばっかりだと邪魔ってことでインスト部分が多いほうがいいと。でも、贅沢しちゃったんですね。ただのインストじゃなくて、メイシオのインストにしちゃったんです。これも、誰でもみんな呼んじゃえ!っていう時期にメイシオを呼んだらスタジオに来てくれて。まあ、世界一のファンキー・サックスを吹いてくれちゃうので凄いなぁと。しかも、気軽にセッション・ミュージシャンみたいなノリで来てくれるんだ、この人も

——全米デビューした頃、ワシントンDCで行われたメイシオのライヴで前座を務めたとも聞いていますが。

はい。でも、メイシオとは2回もセッションしていたのに僕を憶えてくれてないっていう。『今日で3回目になるけど、あの時のレコーディングありがとね。今でも忘れられないよ』って言っても(弱気な声で)イェッ、イェイェイって言って横向いちゃう感じ。自分が前座だったんで思い出してもらおうと楽屋に挨拶に行ったんですけど、それ以上僕と会話を弾ませたくないっていう……。まあ、バリバリのブラザーだし、若くもないんで責めはしないですけど、ちょっと寂しかったですね(笑)

——全米リリースのファースト・アルバム『SUNSHINE, MOONLIGHT』からは、ゴードン・チェンバース(Gordon Chambers)との共作曲などもある中、ナイル・ロジャース(Nile Rodgers)がギターを弾いた“Funk It Up”が全米デビュー曲となったわけですが、この頃のナイルの動きは、マイケル・ジャクソン『HIStory』への参加などもあったにせよ、シック(CHIC)も含めてそれほど活発ではなかったですよね。でも、その後、病気から復活してダフト・パンク(Daft Punk)の“Get Lucky”(2013年)にフィーチャーされたのを機に第一線に返り咲いたことを思うと、ある意味、感慨深い一曲ではないですか。

そうですよね。でも、だから当時はスタジオ・ミュージシャンのひとりとして気軽に使えたんでしょうね。もちろんシック、プロデューサーとしてのナイル・ロジャースっていうのは唯一無二の存在で、ギターの神様。そうやって普通にオールドスクールのおじさんのひとりとして位置づけていたわけですが、実はナイルを呼んだのは、この曲を一緒にやったカミュ・チェリ(Camus Celli)とアンドレス・レヴィン(Andres Levin)という、当時NYに住んでた20代のプロデューサーなんですよ。

ミーシャ・パリス(Mica Paris)がループだらけで作ったアルバム(90年作『Contribution』)にメチャクチャ新しさを感じて、これを作ってた彼らを(自身の92年作『Neptune』の頃から)起用したんです。まだ若くて荒削りだったんですけど、ひとりがメロディ、もうひとりがループを使ったDJ風のビートを作るという、よくあるチームで、アメリカとヴェネズエラ出身の白人。

で、ヴェネズエラ出身のアンドレスのほうが、『TOSHI、ナイル呼ぼうよ』って言うわけです。でも、僕は“なんで今ナイルなんだ?”と思ったわけですよ。なんか、“知ってるギタリストが他にいないから有名なギタリストのナイル・ロジャースを単純に呼んだ”と勘違いされたくなかったんですよね。で、『ナイルじゃなくていいよ』って言ったんだけど、『友達だから呼んであげる』って言われて、そこまで言うならってことで来てもらったんです。そしたら、今やああですからね。ナイルは歌っているわけではないし、コラボレーション企画に入れないっていう考え方もあったわけですが、でも、今はナイルとの曲を入れないとヘンでしょうと。なんかもう僕、いろいろと不謹慎な使い方をしてますよね(笑)

結果的にナイルが客演したが、ナイルを直接呼んだわけではなく、ミーシャ・パリスのアルバムに刺激を受けて、そのプロデューサーを起用していたらたまたまナイルと繋がった……そんなストーリーも実に久保田らしいが、常に新しい音、久保田がよく言うところの「Today’s R&B」に刺激を受けて自分の音楽に反映させるあたりは、現在に至るまで一貫している。ちなみに、ナイルとは現在も微妙にいい関係が続いているようだ。

僕のバンドで20年くらいドラムをやってるラルフ・ロール(Ralph Rolle)、彼は今ナイル・ロジャース&シックでもやってますよね。その関係もあって、日本に来た時にはラルフとナイルが僕を(ライヴのゲストに)呼ぼうと連絡が来るんですよ。ナイルからは直々にメールが来て、俺が言ってるのに来ないのか?くらいの威圧感で。だから普通にライヴを観に行きたいんだけど、行けないっていう(苦笑)

全米デビュー・アルバムは、まだそれまでの無邪気とも言えるファンクへの憧れが滲むアルバムでもある。そうしたファンクネスはトニ・トニ・トニ(Tony! Toni! Toné!)のドウェイン・ウィギンス(Dwayne Wiggins)が手掛けた“Nice & EZ”にも感じられる。トニ・トニ・トニの『The Revival』(90年)や『Sons Of Soul』(93年)あたりと同じ西海岸ファンクの音。ドウェインが手掛けた男性シンガーということで、同じ95年にMotownから『Out Of The Blu』を出したブルー(Blu)を思い出す人もいるかもしれない。ラファエル・サディークではなく、まずは、よりファンク・オリエンテッドなドウェイン・ウィギンスを使ったあたりが久保田らしい。

ドウェインのほうがアマチュアっぽいというか、ソウル好きなアマチュアのままやってるんですよね。それって自分と気が合うなと。トニ・トニ・トニの曲を聴いてもドウェインが作ってたり歌ってる曲のほうがソウル臭く思えて。ベタな感じがいいんですよね。それでお願いしたんです。ラファエルの場合、(当時は)どこに行っちゃうか分からない感じもしていて

——ヴァネッサ・ウィリアムズが客演したトニ・トニ・トニの“Oakland Stroke”みたいに時折女声が挿まれるあたりのチャラい、イージーな感じがいかにも……。

それ(女声の挿入)もドウェインの仕業ですね。女性はドウェインがマンハッタンの23丁目でナンパしてきた人だったと思います(笑)

——トニ・トニ・トニとのオークランド繋がりからか、タワー・オブ・パワー(Tower Of Power)のレニー・ピケット(Lenny Pickett)がサックスを吹いているという。

タワー・オブ・パワー的なホーン・セクションを呼ぼうっていう話になりまして。でも、わざわざレニー・ピケットを呼びながらリック・ジェイムズ(Rick James)の“Give It To Me Baby”のフレーズを吹かせるという。でも、そのまんまのフレーズでは失礼だと思って、ちょっとだけ譜割りを変えているんですよね

——で、トランペットはクリス・ボッティ(Chris Botti)という。

そうなんですよ。NYでセッションをやると本当にいろんなヤツを呼んじゃうんですよ」(→ P6に続く)

■ 初回生産限定盤 CD2枚組+特典DVD(MV10曲収録)+久保田利伸による全曲レコーディングエピソード・ブックレット付き ¥4,200(tax in)
■ 通常盤 CD2枚組 ¥3,600(tax in)

DISC 1
1. M☆A☆G☆I☆C (KUBOTA meets KREVA)
2. LA・LA・LA LOVE SONG (Toshinobu Kubota with Naomi Campbell)
3. 無常 (feat. Mos Def)
4. FLYING EASY LOVING CRAZY (TOSHINOBU KUBOTA feat. MISIA)
5. Let’s Get A Groove ~Yo! Hips~ (Bass: Meshell Ndegeocello, Saxophon: Michael Brecker)
6. MIXED NUTS (P funk Chant: George Clinton, Bass & Guitar: William “Bootsy” Collins)
7. Soul 2 Soul feat. AI
8. POLE POLE TAXI (feat. Maceo Parker)
9. Golden Smile feat. EXILE ATSUSHI
10. Is it over ? (Hook Vocal: JUJU)
11. Keep it Rock (feat. WISE, Tarantula from Spontania)
12. a Love Story (KUBOSSA ver.) (Flugelhorn: TOKU)
13. Moondust (poetry reading by Kyoko Koizumi)
14. Keep Holding U (SunMin thanX Kubota)
15. Messengers’ Rhyme ~Rakushow, it’s your Show!~ (Rakushow Voice: Naoko Iijima)
16. Love under the moon (Harmonica Solo: Toots Thielemans)

DISC 2
1. Never Turn Back (Feat. Pras)
2. Funk It Up (Guitar: Nile Rodgers)
3. LIVING FOR TODAY (Feat. Mos Def)
4. HOLD ME DOWN (Duet with Angie Stone)
5. Till She Comes (Produced by The Roots)
6. Nice & EZ (Produced by D’wayne Wiggins)
7. SUKIYAKI ~Ue wo muite arukou~ (feat. Musiq Soulchild)
8. Masquerade (Produced by The Roots)
9. Just The Two Of Us (Duet with Caron Wheeler)
10. VOODOO WOMAN (Feat. Renee Neufville)
11. Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars) (Acoustic Piano: Daniel Jobim, Guitar: Goro Ito)
12. NEVA SATISFIED (Produced by Ali Shaheed Muhammad)
13. Pu Pu (Produced by Raphael Saadiq)
14. FOREVER YOURS (Duet with Alyson Williams)

特典DVD
1. Soul 2 Soul feat. AI
2. Golden Smile feat. EXILE ATSUSHI Recording Document Full ver.
3. FLYING EASY LOVING CRAZY (TOSHINOBU KUBOTA feat. MISIA)
4. M☆A☆G☆I☆C (KUBOTA meets KREVA)
5. Messengers’ Rhyme 〜Rakushow, it’s your Show!〜 (Rakushow Voice: Naoko Iijima)
6. LA・LA・LA LOVE SONG (Toshinobu Kubota with Naomi Campbell)
7. Masquerade (Produced by The Roots)
8. Funk It Up (Guitar: Nile Rodgers)
9. Just The Two Of Us (Duet with Caron Wheeler)
10. FOREVER YOURS (Duet with Alyson Williams)