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KANDACE SPRINGS interview / プリンスも称賛したジャズ&ソウルの新星、初来日インタビュー

プリンスが生前に目をかけ、『Purple Rain』30周年記念コンサートに呼んで共演するなどサポート、その歌声を褒め称えたという新人キャンディス・スプリングス。Blue Note Recordsの新星として満を持してデビュー・アルバム『Soul Eyes』を7月1日にリリースする。プリンス、ドン・ウォズ、ラリー・クラインといった大御所たちが揃って称賛する27歳が表現するのは、ジャズとソウル。5月下旬に関係者向けコンベンションの形で初来日を果たした彼女に、デビューまでの道筋、プリンスとの交流、待望のアルバムについて大いに語ってもらった。また、リアーナやハヴィエアーらを発掘したことで知られ、彼女を今回送り出す後見人ロジャース&スターケンのカール・スターケンのインタビューにも成功。80年代から活躍するベテラン・プロデューサーが語るプリンスとの“変わった”エピソードも貴重だ。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr)

Kandace Springs has a voice that could melt snow. 「キャンディス・スプリングスは雪をも解かす(ほどの温かい)声の持ち主」――そう形容したのは、かのプリンス(Prince)だ。彼女の姓にある“春”に引っかけた表現なのだろうが、確かに彼女の歌声は包み込むような魅力を持つ。

ナッシュビル出身のキャンディス・テイラー・スプリングスは、特に近年はリアーナ(Rihanna)を発掘したことで知られ、彼女のデビュー・ヒット“Pon De Replay”や、“Shut And Dance”などを手がけ、また前作『Unapologetic』までエグゼクティヴ・プロデューサーに就いていたエヴァン・ロジャース&カール・スターケン(Evan Rogers & Carl Sturken)が新たに送り出す注目の新人だ。デビュー・アルバム『Soul Eyes』の発売を前に、ブルーノート・ジャパンがプロデュースするカフェ cafe104.5にてコンベンションが開催されたという点でも、所属するBlue Note Recordsの期待が大きいことが窺える。

コンベンションでは、彼女をプリンスのもとに導いたサム・スミス“Stay With Me”や、プリンスの公演で披露したロバータ・フラック“The First Time Ever I Saw Your Face”といったアルバム未収録のカバーを含む8曲の弾き語りライブ・パフォーマンス(およそ30分)の後にトークコーナーが設けられた。このトーク部分での話も短いながら充実した内容だったので、こちらも引用しながら、その翌日に行った対面インタビューから得られた彼女の素顔をひも解いていこう。

Kandace Springs

ポップスは特に聴いてなかった。父が聞いてたニーナ・シモーンとかシャーデー、ロバータ・フラックなんかをよく聴いてたわ

そのアフロなヘアスタイルから遠目にはエスペランサのようにも見えるキャンディス。幼い頃は母が手を焼き、無理やり梳かそうとするなど格闘、自身もアイロンを使って無理やり伸ばそうとして失敗したこともあったそうだが、現在はその髪質を生かしたナチュラルなアフロが彼女の個性になっている。その自然体な姿はそのまま、キャンディス自身のキャラクターにあてはまるだろう。関係者が多いコンベンションという通常とは勝手の違うライブについて「いつもポジティブに、楽しむように心がけているし、昨夜はウェルカムな雰囲気で、みんなすごく耳を傾けてくれている感じがして、よかったわ」と特に緊張もしなかったと振り返り、そもそもドン・ウォズの前でのオーディションでも、元々は彼がプロデュースした楽曲だということを知らないままボニー・レイットの“I Can’t Make You Love Me”のカバーを歌って彼の絶賛を勝ち取った。インタビューでもよく笑い、カール・スターケンに話を聞いている間もちょくちょく口を挿んでは爆笑していた。

そんな彼女が、歌声と共に持つ武器がピアノ。コンベンションでも、オスカー・ピーターソンの“Chicago Blues”を弾いてみせ、自身がピアニストであることを示す場面も。

最初に触れたピアノは、「近所の友人がちょっと生活が大変になって使わなくなった」古いアップライトピアノだという。これを譲り受け、父親が弾いたベートーヴェンの「月光」(ピアノソナタ第14番)を簡単に真似してみせたことから、父親がレッスンを受けさせることにしたという。これが10歳の時の話。「教えてもらったのはウーテン・ブラザーズ(Wooten brothers)なの。ヴィクター・ウーテン(Victor Wooten)の兄たちよ。そこで彼らに教わったジャズのコードがすごく好きで、そこから(ジャズに)ハマっていったわ」と彼女はコンベンションで振り返っていた。

ちなみに彼女の父親は、セッション・シンガーとして活躍するスキャット・スプリングス(Scat Springs)だ。彼女のソウルフルな歌声のルーツはこの父親にある。「ブラック・チャーチで育ってゴスペルを歌ってた」父とは違って、彼女は教会で歌った経験はあまり無いそうだが、ソウル・シンガーである父親の影響は大きく受けたのだとか。

そして彼女は、13歳のときにノラ・ジョーンズ(Norah Jones)が2002年に発表したデビュー作『Come Away With Me』に出会う。「あんな若い女性がピアノを弾いて歌っているっていうことに刺激されたの。同じ若い女の子としてね。父があのCDをくれたんだけど、アルバムの最後の曲(“The Nearest Of You”)には本当にインスパイアされたわ。だから彼女は私のアイドルなの

ノラ・ジョーンズ以外に当時どういう音楽を聴いていたかと、「ダイアナ・クロール(Diana Krall)をすごく聴いてたわ。それにニーナ・シモーン(Nina Simone)……でもダイナア・クロールの『When I Look In Your Eyes』を特に聴いてたわね」と回答。

ダイナア・クロールの『When I Look In Your Eyes』(1999年)やノラ・ジョーンズの『Come Away With Me』(2002年)の頃といえば、ロジャース&スターケンがインシンクやクリスティーナ・アギレラをプロデュースしていたポップ全盛の時代でもある。「そういうのは特に聴いてなかったわね。ラジオからは聞こえてたし、別に嫌いとかではないけど、父が聞いてたニーナ・シモーンとかシャーデー(Sade)、ロバータ・フラック(Robeta Flack)なんかをよく聴いてたから。個人的な好みね」。おかげで同級生とはあまり音楽について話が合わなかったそうで、「『なに聴いてんの?』って言われて、『これはジャズ。リアル・ミュージックよ』なんて返してたわ(笑)」という状況だったとか。

そうして早くもジャズとソウルを核とした自身の音楽性を築きつつあった彼女は、17歳のときに早くもチャンスに恵まれる。彼女のデモを聴いたエヴァン・ロジャースが、スカウトのためにわざわざナッシュビルまで訪れたのだ。だが、彼女は一度そのオファーを断っている。

ニューヨークからわざわざ会いに来てくれたし、それはとても嬉しかったわ。でも、当時の私にはあまりに大き過ぎる話で、飛び乗るってことが怖かった。正しいタイミングではなかったのね。それで私は父の家を出て、フルタイムの仕事で働き始めたの。ホテルの駐車場の受付よ。普通は女がやらない仕事だけど、私は車が大好きで。それから、同じホテルで夜にピアノが弾けたの。そうやって4年間働いてたわ」。

「車が本当に大、大、大好き。子供の頃から好きなの」という彼女は、実際に自動車デザインの学校への進学も考えたほどだそうだが、「次第に、ずっと同じところに留まってこんなことを続けていてはいけないって思うようになった」と考え、母親の勧めもあってエヴァン・ロジャースへ連絡。「すると、『スターになりたいか?』って訊かれたから、『ええ』って答えたの。それで今ここにいるのよ

そして彼女は、ロジャース&スターケンのSRP (Syndicated Rhythm Productions)と契約。その後、Blue Noteのボスであるドン・ウォズの前で歌う機会を得、彼女による“I Can’t Make You Love Me”は「『これまで聴いた中で一番のアレンジだ』と言ってもらえた」と称賛を浴び、見事にBlue Noteと契約した。憧れのノラ・ジョーンズと同じレーベルと契約できたことも彼女にとってはやはり特別だったという。

Blue Noteと契約した彼女は、2014年9月に4曲入りEP『Kandace Springs』でデビューすることになるが、それより前に彼女に注目したのが、プリンスだ。(→ P2へ)

1. Talk To Me
2. Soul Eyes (feat. Terence Blanchard)
3. Place To Hide
4. Thought It Would Be Easier
5. Novocaine Heart
6. Neither Old Nor Young
7. Too Good to Last (feat. Terence Blanchard)
8. Fall Guy
9. The World Is A Ghetto
10. Leavin’
11. Rain Falling

[日本盤ボーナストラック]
12. Windmills Of Your Mind
13. Too Good To Last (社長 from SOIL&“PIMP“SESSIONS Remix)
14. Stay With Me