bmr

bmr>FEATURE>THE INTERNET / 初来日公演を行ったジ・インターネットのインタビュー+ライブ・レポート

FEATURE

THE INTERNET / 初来日公演を行ったジ・インターネットのインタビュー+ライブ・レポート

ついにやってきた。2016年1月27日、ジ・インターネット待望の初来日公演が恵比寿リキッドルームで開催された。バンド編成に変態し、オッド・フューチャーの枠を超えて新たなソウル~ヒップホップを切り拓いていく彼らの一夜かぎりの公演はソールドアウトとなり、熱狂的な声援と共に迎えられた。この熱い夜のライブ・レポート、そしてその直前に行われたミニ・インタビューをお届けする。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr) Live Photo by Masanori Naruse

シド・ザ・キッド(Syd Tha Kid)とマット・マーシャン(Matt Martian)による男女デュオとしてスタートしたジ・インターネット。陶酔的なアンビエントR&Bサウンドを聞かせた2011年のデビュー作『Purple Naked Ladies』も素晴らしかったが、ドラム/エンジニアのクリストファー・アラン・スミス(Christopher Allan Smith)、ベースのパトリック・ペイジ二世(Patrick Paige II)、鍵盤/コーラスのテイ・ウォーカー(Tay Walker)とのバンド編成に移行し、2013年、ネプチューンズのチャド・ヒューゴ(Chad Hugo of the Neptunes)が関わった、滑らかなグルーヴを携えた“Dontchaで驚かされたという人も少なくないだろう。

翌年のツアーではテイ・ウォーカーが脱退し、代わりにサンダーキャット(Stephen “Thundercat” Bruner)やロナルド・ブルーナー・ジュニア(Ronald Bruner, Jr.)の弟である鍵盤のジャミール・ブルーナー(Jameel Bruner)が加わっていたが、2015年に発表された最新作『Ego Death』では、さらにギターのスティーヴ・レイシー(Steve Lacy)が加入。元々ネプチューンズへの傾倒はあったが、N.E.R.D.のような肉体性を持ってバンドは新たなステージへ。来月のグラミー賞では、初めてのノミネーション(『Ego Death』が最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム部門)を受けるなど絶好調の彼らが、満を持して2016年1月、初来日を果たした。

The Internet interview in Japan 2016

まずは、公演当日のリキッドルーム楽屋で行われたシド&マットのインタビューをお届けしよう。翌日には韓国公演というタイトなスケジュールの中、与えられた猶予は10分。シドが故ティーナ・マリーの機材(中には元々リック・ジェイムスのものもあったとか)を譲り受けた件とか、聞きたいことは山ほどあったが、そういう事情に加え、上機嫌のマットが大いに喋ってくれたので、質問がかなり限られたこと、ご了承いただきたい。

生の楽器に敵うものはないし、バンド・サウンド回帰の動きは必然的な流れなんじゃないかな

――今回初めての来日だと思いますが、日本はどんな印象ですか?

シド「最高」

マット「建築が素晴らしいね」

シド「LAとは全然違うところだね」

マット「全然違うけど、共通点も多くあるよ。歩いてみてもそんなに違和感はないし、けっこう心地いい。国によっては違和感をすごく感じるような土地もあるけど、日本はそんなことないね。2日以上滞在できるよ(笑)」

シド「クール!(笑)」

――最新作『Ego Death』を引っさげての来日なので、新作について訊いていきたいのですが、まず最初に、前作『Feel Good』からバンド形態に変わったきっかけは何だったんでしょうか?

シド「ん~……。私はそんなに強い声の持ち主じゃなくて。ファースト・アルバム(『Purple Naked Ladies』)まで歌ったことがなかったんだけどさ。人前で、ただDJがかけたトラックに乗せて歌うっていうのがなんか心地悪くて……ヴァイブが違う!って感じで(笑)。だから初めてショウの時に楽器を弾ける友達を呼んで歌ったんだけど、それがそのままバンドになったって感じ」

――この新作『Ego Death』でさらにバンド感が増したと思ったのですが(シドとマット、そうそうと頷く)、ライブ経験を積んだ影響でしょうか? マック・ミラー(Mac Miller)のツアーで彼のバック・バンドもやっていましたが。

マット「いや、ツアー経験に限ったわけじゃないと思うな。今までの失敗からバンドとして学んだことも多いし、それにスティーヴとジャミールが加わったことも大きい。あいつらが加わったことでもっとクレイジーなサウンドになったんだ」

シド「イエー。ジャミールがもっとモダンなサウンドを、スティーヴが枠に囚われない視点をバンドに持ち込んだんだ」

マット「あのふたりの素晴らしいところは、ちゃんと音楽教育を受けたミュージシャンはよくルールを作ってそれに縛られてしまいがちだけど、あいつらは、音楽教育を受けていながらルールをぶっ壊したいタイプだってことだね」

シド「イエー、あいつらはルールを破るのが好きなんだ」

マット「それが俺たちのインスピレーションになる。そのおかげで、前よりもバンドとしての自信がついたんじゃないかな」

――ちょうどスティーヴとジャミールについて伺いたかったんですが、今回新たに加入した彼らについてどういう人物か改めて紹介していただけませんか。

シド「ジャミールは……(すでに笑いながら)ワイルドカードだね。ノーパンでステージに上がっちゃったり、そういうことをやりかねないヤツ(笑)」

マット「予測不可能。何をしでかすか分からない(笑)」

シド「スティーヴは、まだ高校生。それで(学校があるので)今回は一緒にツアーを回れなかったわけだけど」

――あ、そういう理由だったんですか!

シド「そう。でも次に日本に来るときは連れてくる予定だよ」

マット「俺たちはすぐ戻ってくるよ。それから、スティーヴはまだ高校生ですごく若いのに、成熟しているんだ。ジャミールのほうは、普段はこういう(と言ってハイテンションな動きを見せる)ヤツ(笑)。でも演奏になるとちゃんと真面目にしっかりやるんだ」

――ジャミールは、あなたたちと交流のあるサンダーキャットの弟ということもあり、先にツアー・メンバーとして参加もしていましたが、スティーヴはどういうつながりで加入したのでしょうか?

シド「スティーヴはジャミールと同じ高校に行ってて、ジャミールが最高学年のときにスティーヴがその高校に入ったんだ。それでふたりはすごく仲良くなって、ふたりでつるむようになったわけ」

マット「スティーヴはその時まだバンドをやったことがなかったんだ。ジャミールと一緒にスタジオに来たんだけど、ちょうど俺がビートを作ってて、ギターが欲しくて。それでパトリック(・ペイジ)の代わりにスティーヴにギターを弾かせてみたら、ベースを弾いてたパトリックが……『!』って顔になって(笑)。それで今回のアルバムの曲作りの合宿に来てもらった。クレイジーなヤツだよ。でもいい人間なんだ。自分がすごく才能があるってことを自分で分かってるけど、でも相手を立てるってこともよく分かってる」

――残念ながら時間切れなのでこれが最後の質問になります。ここ最近、フォニー・ピープル(Phony Ppl)であったりソーシャル・エクスペリメント(The Social Experiment)であったり、若いヒップホップ世代でバンドが増えているという印象があります。ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)の最新作『To Pimp A Butterfly』もミュージシャンシップの強い作品でしたが、そういうバンド・サウンドのムーブメントが来ていると感じますか?

シド「イエス」

マット「思うね。でも必然的な流れなんじゃないかな。生の楽器に敵うものはないから。フランキー・ビヴァリー(Frankie Beverly)のコンサートなんかに行けばそのことがよく分かるだろう。ケンドリックがTV番組に出たときもバンドでパフォーマンスしてたけど、あれもクレイジーだったよな。でもそうした傾向は助かるね。それから、(バンド回帰は)そういうサイクルだとも言える。デジタルやドラムマシーンの時代から、またクラシックでタイムレスな生演奏に戻って、それがベストと思える時代になってきたんじゃないかな。J・コール(J. Cole)やケンドリックがとても音楽的な人たちだってことは彼らのインタビューを見れば分かるだろう? 間違いなく彼らもバンドの重要性を理解している人たちだ。フォニー・ピープルみたいなバンドが増えてきて、ブレイクスルーが起こっている状況は俺たちにとっても重要なことだし、嬉しいね。フォニー・ピープルは俺も大ファンだし、仲間だよ」

――なるほど。ありがとうございました。

シド「サンキュー!」

マット「フォニー・ピープルに今話したことを伝えてやらなきゃな(笑)」

シド「イエー!(笑) Hello bands, hello bands!」(→ P2 ライブ・レポートへ)