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Billboard JAPAN連同企画:コモン / リリシストとしての軌跡

bmrがBillboard JAPANとタッグを組んでお送りする新・連動企画。来日を直前に控えたアーティストたちの過去と現在を結ぶものだ。第一弾として取り上げるのはコモン。ここでは、雑誌時代の『bmr』2007年9月号に小林雅明氏が「リリシストとしてのコモンの軌跡」をテーマとして寄稿した文章を再掲載する。

文/小林雅明

コモンは西海岸ギャングスタ・ラップではなく、むしろディディを名指しでメインストリーム批判を続けてきた

“Act Too(Love Of My Life)”では「コーヒーショップの女性客と白人の男」といった層もリスナーとして取り込みファンベースを広げた『Like Water For Chocolate』、あるいはその前のアルバム『One Day It’ll All Make Sense』からコモン(Common)を聴き始めたリスナーが、彼がまだコモン・センス(Common Sense)と名乗っていてもなんら問題のなかった(注:後に改名したのは、先に同名のバンドがいたため)92年に発表したデビュー・アルバム『Can I Borrow A Dollar?』を聴いたら、程度の差はあれ驚きを隠せないだろう。

今でこそ“良識派ヒップホップの良心”として認識され、菜食主義者でもある彼が、このデビュー作ではほぼ全編を通じてモルト・リカーをダラダラ飲み続け、オンナとヤることばかり考え、ビッチは所詮ビッチと言い放っているのだ。同じ人間が後に“Retrospect For Life”を出すとは夢にも思えないような無軌道ぶりだ。若気の至り、と言えばそれまでかもしれない。ただし、『Can I Borrow A Dollar?』収録曲はどの曲も一聴して、コモンがスキルフルであることが伝わってくるものだった。

外部に向け、好き勝手に言いっ放しだったコモン・センスが、初めて自分自身を見つめ――“Book Of Life”、“Thisisme”など――、また内省的な思慮深さを見せた――“Communism”にて――のが、2枚目の『Resurrection』だった。全体にレイドバックしたビートの良さに負うところがかなり大きい作品だが、このアルバムからはいくらでも現在のコモンと結びつける部分を見つけることができるようになる。

そして、5枚目の『Electric Circus』に至って、フロウというかラップの雰囲気までもなぜかブラック・ソート(Black Thought)っぽく聞こえてしまうほど一体化してしまうことになるザ・ルーツ(The Roots)と出会ったのが、3枚目の『One Day It’ll All Make Sense』。“Retrospect For Life”は、あまりに内容がシリアス過ぎると一部ヒップホップ・ファンは聴きたがらなかったほどリアルな1曲となったが、彼が“コンシャスな”ラッパーとして認識されるようになったのはこの頃からだった。また、6枚目のアルバム『Be』に収録される“Testify”で最もタイトなかたちで提示されることになるストーリーテラーとしての才能を(もちろん2枚目収録の“I Used To Love H.E.R.”でも見せていたわけだが)、最初にこれみよがしに見せつけたのが、この『One Day…』に三部構成の形で収録された“Stolen Moments” だったことも忘れてはならない。

このストーリーテリング曲の第4弾であり最終章“Payback Is A Grandmother”も聴くことができる、4枚目『Like Water For Chocolate』は、ある種ここまで出してきた作品の集大成的な面があるように思える。前半をフェラ・クティ(Fela Kuti)賛歌で挟み込み、その中で、デビュー作にあった荒削りな部分が脈動しているような曲と、成熟した大人としての恋愛観を真摯に言葉にした曲を並べ、後半では、どことなくフロウが似ている(もちろん歌っている時ではない)ギル・スコット=ヘロン(Gil Scott-Heron)の有名な一節「革命はTVで映されない」を引用して始まる“The 6th Sense”、従来からのシリーズものとしては、先に触れた“Payback Is…”だけでなく“I Used To Love H.E.R.”も十二分に踏まえて作られた(に違いない)“A Film Called (Pimp)”も加えられ、亡命中の政治犯アサッタ・シャクール支持表明曲をクライマックスに持ってきている(これはコンシャス・イメージの上塗りにもなった)。それまで他のどのMCも取り上げていなかったようなトピックをバラバラと扱いながらも、コモン自身の個性やキャラをすっかり強く印象づけたのが『Like Water…』だった。

だからこそ、そこで一端線を引いて(区切りをつけて?)、次の『Electric Circus』ではあらゆる意味において“飛躍”してみたかったのではないだろうか(もっとも、従来のコモン節が炸裂する、このアルバム中では逆に異彩を放つ“I Got A Right Ta”も入ってはいる)。ただ、この“飛躍”が決して失敗ではなかったこと、そしてやはり彼個人にとっても、プラス・マイナスどちらにしてもかなりインパクトが大きかったことは、“着地点”をスタジオからストリートヘ、そして、オーセンティックなヒップホップを自分自身に求めて、双子のような存在とも言えそうな2枚のアルバム、『Be』と『Finding Forever』(例えば、“The Corner”と“The People”、“Go”とその続編“So Far To Go”あるいは“I Want You”の関係に注目)を作ってしまったことにも表れているのではないだろうか。もちろん、ここで最も興味深いのは、この2枚をカニエ・ウェスト(Kanye West)と一緒に作っていることだ。

あまり表面化することはなかったが、コモンは“I Used To Love H.E.R.”で誤解された西海岸ギャングスタ・ラップなどではなく、むしろP・ディディ(P Diddy)の名指しを繰り返すことでメインストリーム批判を続けてきた。そして、ジェイ・Z(Jay-Z)が「正直、オレはコモンみたいにラップできたらと思ってる。それでも500万枚売ったけどな、コモンみたいにラップしてこなかったのに」と引退する際になんとも微妙な表現で称えたような位置にあるコモンは、今後も何をやらかすのか、その立ち位置の変動についてはわからない。が、『Finding Forever』からシングル・カットされそうな、リリー・アレン(Lily Allen)客演の“Driving Me Wild”が、コモンの新たな結実を見せているようにも思えるのだが……。
(『bmr』2007年9月号より再掲載)

>> bmr×billboard連動企画「COMMON – past and present- コモンの歩み:シカゴから銀幕まで」

コモン東京公演
会場:東京 Billboard Live TOKYO
日時:
2015年9月23日(水・祝)1stステージ 開場:17:00/開演:18:00 2ndステージ 開場:20:00/開演:21:00
2015年9月24日(木)1stステージ 開場:17:30/開演:18:30 2ndステージ 開場:20:30/開演:21:30
料金:サービス 16,000円/カジュアル 14,000円(※カジュアルのみ1DRINK付)

※本公演は特別営業時間となります

コモン大阪公演
会場:梅田 Billboard Live OSAKA
日時:2015年9月25日(金)
1stステージ 開場:17:30/開演:19:00
2ndステージ 開場:20:30/開演:21:30
料金:サービス 16,000円/カジュアル 14,500円(※カジュアルのみ1DRINK付)

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MTV presents SOUL CAMP 2015

出演アーティスト:
2015年9月22日(火・祝日)
COMMON / BIZ MARKIE / TALIB KWELI /YASIIN BEY (MOS DEF) / DJ JAZZY JEFF and more

2015年9月23日(水・祝日)
Ms. LAURYN HILL / THE BEATNUTS / BLACK STAR / BIZ MARKIE and more

日程:2015年9月22日(火・祝)~9月23日(水・祝)
時間:12:00-OPEN / 13:00-START (20:00 END予定)
会場:
<LIVE AREA> TOYOSU PIT
<DJ & FOOD AREA> MAGIC BEACH
<BBQ AREA> LOVE KINGDOM
<FAMILY & KIDS AREA> MIFA Football Park
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