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FEATURE

ディアンジェロ live report / ついに実現した待望の来日公演

デビューから20年、ついに実現したディアンジェロの来日公演。復活後の彼のステージを2012年から追ってきた音楽ジャーナリストが見た、「孤高の天才」の実像とは。

文/林 剛 写真/Kazumichi Kokei

開演前のZepp Tokyoは、この日を待っていた日本のファンの積年の思いが渦巻いているような……

待望の、本当に待望のディアンジェロ(D’Angelo 以下D)の来日公演は、終わってみれば予想通り絶賛の嵐だった。当初は〈Summer Sonic 2015〉(大阪、東京)の出演アクトとして来日が決定し、その後、[Zepp Tokyo]での追加公演が決定。特に追加公演はチケット争奪戦となり、発売開始直後にほぼ完売したという。サマソニのチケットを買っていたが、できることなら単独公演にも行きたいと、土曜日の朝、電話のプッシュボタンを何度も押していたのは筆者だけではあるまい。なにしろ初めての来日公演。しかも約15年ぶりのアルバムを出して半年ちょっとというタイミング。ヴァンガード(The Vanguard)という新バンドを従えた『Black Messiah』で復活したDの姿を観てみたいと思うのはファンであれば当然のことだろう。

来日ということでは、『Brown Sugar』でデビューした95年に業界関係者向けのコンヴェンション(筆者未見)のため日本の地を踏んだことがあるが、当時はまだ現在のように大騒ぎされる存在ではなかった。ここまで騒がれる存在になったのは、『Voodoo』が名盤認定され、長い隠遁期間を経て『Black Messiah』で復活してからのことだが、開演前の[Zepp Tokyo]は、この日を待っていた日本のファンの積年の思いが渦巻いているような、ともすれば暴動が起こりそうなほどの緊迫感と興奮に包まれていた……とは大袈裟か。これほどまでに愛されるDは、なんて幸せ者なのだろう。そして、Dとヴァンガードも、そんな過剰とも言える期待にあっさりと(もちろん濃厚なパフォーマンスで)応えてくれた。

二の腕ムキムキな筋肉質の体躯。“孤高の天才”などと言われていたイメージとは裏腹な、南部(ヴァージニア出身)らしい気のいい兄ちゃん風の人懐っこい笑顔。「トーキョォ!」という言葉を発するDに感慨無量といったファンも多かったはずだ。とにかく、ライヴを観た人が、それぞれの音楽知識や音楽体験を持ち出して、「俺のD」「私のD」を語りたくなるようなステージだった。

Photo by Kazumichi Kokei

今回の来日公演は、今年2月に始まった〈The Second Coming Tour〉の流れを汲んだショウということで、既に(非公式な形で)YouTubeにアップされているライヴ動画などから、おおよその内容(レパートリーやステージ進行)は予想できていたし、実際に海外で観たという人もいるかもしれない。ゆえに、「この曲をやらなかった」「あの時の動きと違った」「出音が良い・悪い」などといった感想も出てくるだろう。前々日にサマソニ(東京)のステージを観た筆者も、あくまで個人的な印象ながら、単独公演の方が各曲のアドリブが多いかな?とか、音の響きがギンギンしていたような気がする……などといった感想も抱いたが、そもそもライヴは生モノ。毎回違って当たり前なわけで、ここではそうしたディテールについては触れず、[Zepp Tokyo]の客席(1F)後方で観た現場での記憶とスマホへの簡単なメモを頼りに初見のつもりで書いてみたい(記憶違いがあった場合は申し訳ありません)。

開演待ちのBGMでかかっていたJ・ディラ(J Dilla)の『Donuts』(など)を、これほど上の空で聴いたのも初めてではないか?というくらい、Dの登場を待ちわびていた会場。しかし、そうやすやすとは姿を現さないぜ……とばかりに、結局メンバーがステージに登場したのは、当初の開演予定時間より約45分遅れの午後8時10分過ぎ。15年近く待たされたアルバムに比べれば何のこれしき、と思ったファンには、その忠誠心に敬意を表したい。いや、実際に、開演の遅れを帳消しにするほどの興奮が今回のライヴにはあった(と言っておこう)。(→ P2に続く)