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SAUCY LADY interview / 「多様的であるべきだと思うんです。ひとつのものにとらわれずに」

バークリー音楽院を卒業し、ボストンを拠点に活動している天才日本人プロデューサー/マルチ・インストゥルメンタリスト、金坂征広によるソロ・プロジェクト=monolog。彼が、5月にリリースした最新作『14 Beats N’ Rhymes』に続いて、自身のレーベル=monophonicから女性シンガー/DJ、ソーシィー・レディーのデビュー作『Diversify』をリリースした。前回のmonologロング・インタビューに続いて、今度はソーシィーとmonologが、プリンス・ポールからJ・ゾーン、スラッカー・ザ・ビートチャイルドらまで参加し、あのアンドレ・ハレルが称賛したというアシュフォード&シプソンのカバーも収録した彼女の『Diversify』について語る。

取材・文/末崎裕之 hiroyukisuezaki (bmr)

アンドレ・ハレルも、『これおもしろいアイディアだな』って言ってくれて

(→ P1より)
まさにプリンス・ポール印、といったこのイントロを経て、『Diversify』は開幕する。アルバムを全面的に手がけているのは、盟友monolog aka Yuki Kanesakaだ。

90年代初期のアシッドジャズ的な雰囲気も感じる“Touch It”、ディスコ~ブギー的な疾走感のある“City Lights”で軽やかに始まる。ひと足先にアメリカでリリースされていたこの『Diversify』の説明には「スレイヴ(Slave)やパトリース・ラッシェンのような心地よいグルーヴとジャズファンク」という記述もあるが、“Star Bright”なんかはまさにスレイヴ的な80年代風のエレクトリック・ファンクだ。

ローラースケートとかしたくなりますよね(笑)。スレイヴも好きだし、パトリース・ラッシェンのサウンドって、彼女の声自体がそんなに私の声から遠くないから……そうだ、コンが初めて私の歌を聞いたときに『パトリースみたい』って言ってくれて。『えぇ~、嬉しい!』と思って(笑)

コンとは、コン&アミール(Kon & Amir)で知られるコンのこと。ボストン在住の彼とは親しく、monologは昨年BBEから出した初のアルバム『On My Way』の全編でキーボードを担当していた。彼とのつながりも、ソーシィーの紹介なのだそう。ちなみに『On My Way』は4年前から制作されていたそうで、完成まで「足かけ3年」もかかったとか。コンにリミックスを頼んでいるというソーシィーに、「多分6年ぐらいかかるよ(笑)」と冗談交じりに宣言するmonologだった。

余談はともかく、確かにコンの指摘どおり、彼女の歌声は、パトリース・ラッシェンのように、美しいハイトーンに品のある色気が漂う。「コンは、『パトリースみたい』って言うのと同時に『阿川泰子みたい』って言うんですよ。コンは阿川泰子好きなんですよ(笑)」とも教えてもらったが、アリーヤの影響も受けたとか。その響きは、アシュフォード&シンプソン(Ashford & Simpson)の“It Seems To Hang On”のリメイクで、ひときわ香り立つ。アップテンポなオリジナルとは違って、彼女の歌声がセンシュアルに響くスロウジャムに仕上がっているのだ。本作のハイライトでもある。Uptown Recordsの創設者であり、パフ・ダディ(Puff Daddy)を発掘したことでも知られる、あのアンドレ・ハレル(Andre Harrell)も称賛したというが、それも納得の素晴らしい解釈だ。

私は、オリジナルがいいとあんまり対抗できないから、変えないとなって思うんです。あれはスロウがいいなって思ったんですよね。あの曲はなぜか、友達の中でもDJの中でもみんな一番好きな曲って言うんですよね。なにかでアンドレ・ハレル、あのUptown Recordsの元CEOの、彼に送ったときも『これおもしろいアイディアだな』って言ってくれて。やっぱりみんながあまり考えない雰囲気になったからかな。スロウジャムも、最近そこまでいいものがないし、久しぶり、みたいな感じで(笑)

カバー/リメイクといえば、本作にはテヴィン・キャンベル(Tevin Campbell)の“Tomorrow (A Better You, Better Me)”もある。“It Seems To Hang On”といい、なかなか面白いチョイスだが、ソーシィーは、ブラザーズ・ジョンソン(The Brothers Johnson)のオリジナルが好きでカバーしようと思ったのだとか。

ブラザーズ・ジョンソンのオリジナルを聴いてすごく感動したんですよ、当時。あれ、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)のプロダクションがすごいいいんですよね。あまりにもいいから何か作りたいなと思って、でもリリックが無いな、あ、でもテヴィン・キャンベルが歌ってたじゃん!って。でもテヴィン・キャンベルのバージョンは今聴くと、子供っていうかちょっとcorny(古臭い、陳腐)じゃないですか。もう少し大人向けな感じがいいかなと思って

「Gファンクが好きだっていう話をしてて。それでGファンクの感じを入れました」というソーシィー版だが、このアルバムはこの曲から作り始めたそうで、「初めて一緒にやったものだったので、けっこう苦戦した」のだとか。monologは「なるべくシンガーと二人三脚で作るようにしている」と話していたが、このアルバムもふたりのコラボレーション。

「ユキと一緒にビートを作って。私がサンプルを持ってきて、それを一緒に打ち込んだりとか、たまにシンセベース弾かせてもらって入れたりとか。コードも一緒に考えて。ユキは色々といいコードを考えつくから、それでふたりで『これいいね』なんて言ったり。なのでずっとコラボレーションでしたね。リリックとか、コーラス、メロディとかは全部(自分で)書いて、というかその場で作っていきましたね

これまでも山口リサをはじめ、さまざまなシンガーたちと“コラボレーション”してきたmonologだが、「(ソーシィーが)他のシンガーと一番違うのは、ドラムのサンプルを全部パーツで持ってきてもらえるところですね。たとえば『このフィル使って』とか、『このハンドクラップの音』とか。僕の音楽制作は、“ベーシック”って言われる、4小節から8小節のビートを作るところから始めるのが60%くらいなんですけど。そのベーシックを作るときに明確なビジョンが見えてるほうが脇道に逸れなくていいわけです。ソーシーの場合は、『私これが欲しい』っていうのがバッチリ分かってるんで、僕は手を動かすだけでいいんです。ラクです(笑)」という。DJでもある彼女ならでは、というところか。(→ P3に続く)

 

1. Who Is Saucy Lady? (Intro)
2. Touch It
3. City Lights
4. Beantown Boogie feat. Wasted Talent – Paul Foley and Nabo Rawk
5. Star Bright
6. Tomorrow feat. Clutch the Mechanic
7. It Seems To Hang On feat. JTronious
8. I’m Ready
9. Truth of the Matter
10. Gentle Rain
11. Diversify featuring Plastic 909
12. Touch It (Rahaan Extended Version) *日本盤ボーナストラック
13. Movin’ (J-Zone Remix) *日本盤ボーナストラック
14. Star Bright (Slakah the Beatchild Remix) *日本盤ボーナストラック