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滴草由実 interview / 前作で生まれ変わった彼女が10年のキャリアを総括

昨年末に通算5枚目となるオリジナル・アルバム『A woman's heart』をリリースしたばかりの滴草由実。続けざまに、自身のデビュー10周年を飾る2枚組のベスト・アルバム『#10 story ~Best of Yumi Shizukusa~』を発表した彼女が語る「これまで」と「これから」。そして、トラップやディワリなど。

文/金子穂積

レゲエのテイストを入れたら面白いんじゃないかなと思い、ディワリ的なクラップを入れてもらったんです

(→ P1より)
この4月に配信作品として公開された「さくらのぬくもり」という曲も収録されているが、これは特に今回のベスト用に作った曲ではないという。

「自分の中で大切な存在だった、私をずっと応援してくれていたおばあちゃんが、昨年、亡くなってしまって。見送るために東京から出身地の鹿児島に戻ったんですが、その時の鹿児島が、桜が満開の日だったんです。その時、見送る車の中で、(すでに制作途中だった)この曲が頭の中に流れてきて。帰ってきてすぐに、『これは何かのタイミングかもしれない』と思って、制作途中のこの曲をsoundcloudにアップしたりと、だいたいは出来上がっていた曲なんです。で、(おばあちゃんが亡くなってから)1年経った今年の春に正式に発表しようと思い、配信をした曲なんですよ」

そういった新曲とは異なるが、今の彼女のアーティスト気質を強く感じさせるのが、自身の過去の曲を新たに作り直したリアレンジ・ヴァージョンである。2曲あって、ひとつは2003年のデビュー曲「Don’t you wanna see me tonight?」、もうひとつは2ndシングルの「TAKE ME TAKE ME」だ。

「“Don’t you wanna see me tonight?”は、自分の人生を変えてくれた曲。でも、もっと格好良くなるんじゃないかなと思ったんで、コーラスワークも全部変えて、ファンキーにしてしまおうと作りましたね。全然、違うものになるぐらいでもいいなと思っていたので、このリアレンジ版“don’t u wanna c metonight?”を作り終えるまでは、オリジナルは一切聴かなかったです。ただ、オリジナルの歌が体にしみついていたので、ここのメロディはこう歌う、といった固定観念を振り払うように挑みました。

“TAKE ME TAKE ME”のリアレンジ版“take me take me”は、レゲエのテイストを入れたら面白いんじゃないかなと、試しにやってみるノリで制作しました。新たなトラックを聴くまでは想像がつかなかったんですけれども、聴いた時に意外とハマっているな、と。あと、ここにクラップが入ったらいいなと思い、ディワリ的なクラップを入れてもらったんです。ディワリも20歳ぐらいに聴いてたんで、懐かしいかなと思って。これまで、ダンスホールの要素を意識した曲を歌うことはそんなになかったので、それも新鮮でしたね」

「ちゃんとしっかりと自分の新しいサウンドや音楽性を固められた」と自信たっぷりに語ってくれた『A woman’s heart』で、新たな一歩を踏み出した彼女。このタイミングで、これまでの10年を振り返り、「これで、本当のスタートの気がしていますね。10年前の自分は18歳で、これからシンガーになるっていう覚悟はあったんですけれども、10年経って改めて、このベスト・アルバムを作っている最中に新たな覚悟というか意気込みも出てきましたね」と力強く語ってくれた。昨年末、『A woman’s heart』の完成時にインタビューした時よりも、さらに自信がみなぎっているように感じられた。

「最後にクレジットの確認をしていた時に、1曲1曲に関わってくださった人達がいっぱい出てくるんですよね。曲を作ってくれた、楽器を入れてくれた、ミックスしてくれた方とか。みんな、顔を合わせて、人柄も知っている人達だったので、手が止まって、いろんなことを思い出してしまいましたね。1曲に、こんなたくさんの人が関わってくれたんだなと。若い時は自分ひとりだけで頑張っていて、孤独感もありつつやっていたんですけど、全然、ひとりじゃなかったんだ、と思って。前よりも、1曲1曲の重みを感じるようになりましたね」

『A woman’s heart』で自身の世界観を伝えるサウンドや歌声を獲得した滴草由実だが、出来あがった1曲1曲を、今後は違う角度からも光を当てて伝えていくようだ。ベストの最後には、『A woman’s heart』収録の「I don’t Love You」が、レコーディング作品とはまたひと味違ったライヴ・ヴァージョンとして収められている。

「これは、ライヴの1曲目で、新しい始まりをイメージしたイントロになっている曲。今後は、もっとライヴもやっていきたいので、“ライヴにも行ってみたいな”という感覚になって欲しくて入れました。東京と大阪でライヴをするのが決まっているんで、このベスト盤が私を知ってもらうキッカケになればいいなと思ってます」

精力的にレコーディング作品を生むだけでなく、ライヴでも新たな表現の幅を求めようとしている滴草由実。その活動の振り幅に、今後も注目である。