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滴草由実 interview / 前作で生まれ変わった彼女が10年のキャリアを総括

昨年末に通算5枚目となるオリジナル・アルバム『A woman's heart』をリリースしたばかりの滴草由実。続けざまに、自身のデビュー10周年を飾る2枚組のベスト・アルバム『#10 story ~Best of Yumi Shizukusa~』を発表した彼女が語る「これまで」と「これから」。そして、トラップやディワリなど。

文/金子穂積

トラップとして意識して聴いたのは、ビヨンセの“Drunk In Love”や、ケンドリック・ラマー、ロード、それとシアラかな

昨年末のアルバム『A woman’s heart』は約4年半ぶりとなるリリースで、彼女にとってアーティストとして新たなスタートとなる一枚であった。4年半の間に、一度は声が出なくなってしまうという事態に見舞われ、そこから歌うことを見つめ直し、発声方法も初心に戻って再習得した彼女。また、デビュー以来行っていた作詞に加えて作曲も自ら行うようになり、アーティストとして大きな飛躍も遂げた。その成長の詳細は、前回のbmrのインタビューを読んでいただければお分かりになるかと思うが、今回発表されたベスト・アルバム『#10 story ~Best of Yumi Shizukusa~』は、そんなアーティスティックな才能が開花した彼女の創造力が色濃く反映された作品となっている。

ベスト盤ゆえに、フージーズのワイクリフ(Wyclef Jean of the Fugees)をフィーチャーした「I’m in Love」といった代表曲が大半を占めているが、注目すべきは約4分の1を占める、新曲や過去の自身の曲のリアレンジ・ヴァージョンだ。中でも、PVも制作された新曲「Rainy」は、ビートにトラップを取り入れつつもメロディアスな曲調となっていて、現在進行形の滴草由実を知ることが出来る1曲となっている。

「今年に入って、『A woman’s heart』からの新たなステップとなるようなクオリティの良いものを作りたいと考えて、いつものようにプロデューサーにトラックを作ってもらうところから始めました。トラップを取り入れた曲がR&Bでも増えてきたと思うんですけれども、ただトラップを取り入れると、どうしても聴く人を選んでしまうような曲調になってしまうかなと思っていて。そこで逆に、“トラップのビートを取り入れつつも、誰でも聴けるような音楽”は多分、誰もやってないだろうな、と。そこからトラックの制作に入ってもらったんです。

で、そのトラックを聴いて、凄い奇麗な、繊細なイメージが沸きましたね。ラララと歌いながらサビを作る時に、この響きでしかはまらないRainyという言葉が出てきて。たまたま歌詞を書いていた時も雨が降っていたんですけれど、そこからいろいろイメージが広がっていったんですよね。トラックが活きるようなメロディの入れ方をしたつもりです。(トラップとして意識して聴いた曲は)ビヨンセ(Beyonce)の“Drunk In Love”や、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)、ロード(Lorde)、それとシアラ(Ciara)“Body Party”なんかかな」

この梅雨の季節にリリースされるということに加え、アーティスト名とも呼応するタイトルが心憎い、その「Rainy」のPVのイメージは、ベスト・アルバムのジャケット/パッケージとも重なるものとなっている。

「アルバムのパッケージもPVも、同じデザイン事務所にお願いしたんです。『A woman’s heart』収録の“Dreaming”のPVも制作していただいたところで。デザインのプロなんで委ねた感じですけど、『水を使ってスタイリッシュなものにして欲しい』とリクエストして、あのPVになったんです。

あと、『色は黒を基調に』ともお願いしましたね。黒は、絵を描く時にもよく使う色ですけれども、何色を混ぜても黒は黒になるんで、音楽的に“他に染まらない”といった意味合いもあって。それと、私はブラック・ミュージックに影響を受けて、音楽でやっていきたいと思ってこの世界に入り、その気持ちは今も変わらないので、そういった意味でも黒を使いました」

今回のベストのために制作されたという、もうひとつの新曲「Dope」のトラックは、自身の過去の曲をサンプリングして作られたという。

「ベストに入れるかどうかで、2ndアルバム『Yumi Shizukusa II』に収録された“Rock in the club”を改めて聴き直した際に、『サンプリングして新しい曲にしたら、もっと格好良くなりそう』という話になったんです。

で、そこからトラックをもらって、1日でメロディ作って、次の日に歌詞を書いて、3日目にレコーディングっていう感じで作りました。『この数日で出来るかな?』と心配したんですけれども、考えてみたら、もとの“Rock in the club”が、LAでワイクリフのライヴを観てすぐにNYに移動し、NYのスタジオで1時間で歌詞を書いて、その直後の深夜の3時頃からレコーディングをしたのを思い出したんですよ。それで、『あれが出来たんだから、これはまだ3日もあるから出来るな』と思ってやりましたね。ある意味、曲のタイトル通りにドープでした(笑)。

オリジナルのAメロ部分は残して、原曲の雰囲気を活かしつつ、コーラスワークなどで、今の私の新しい質感を出そうとトライしました。アルバムを作る時は、いつも遊び心を持たせた曲を入れたいと思うんですけれども、これはそういった曲ですね」 (→ P2に続く)