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JOSÉ JAMES interview / もう「ポスト・ディアンジェロ」とは呼ばせない

前作『No Beginning No End』で、新時代のブルーノートを象徴するシンガーとなったホセ・ジェイムズ。しかし、その『No Beginning No End』の好評は、彼にとって両刃の剣だった……。そんな前作から約1年半で作り上げた新作『While You Were Sleeping』で、ホセは何を目指すのか。あなたが寝てる間に変身をとげたホセ・ジェイムズが語る。

文/林 剛 通訳/Kana Muramatsu

アメリカでは「ディアンジェロに必死に追いつこうとしている」なんて言われ、ネガティヴに取られていた

ホセ・ジェイムズ。Joseは正しくはホゼ(ィ)と発音するが、「ホセでもいいよ」と本人は言った。そうして本来とは違う発音をされてしまうほど、世界の様々な国で彼の名前が口にされるようになった証拠だろう。チャカ(シャカ)・カーン(Chaka Khan)のように。そして、ホセ同様ジャズやヒップホップ、クラブ・フィーリングを持ち、クールな歌い口でネオ・ソウル的な表現をする新進気鋭のシンガーたちが、ホセと同じ気分を共有する者として紹介されることも増えてきた。

例えば、ホセの『Blackmagic』(2010年)に関与し、この度Brainfeederからようやくフル・アルバムを発表したテイラー・マクファーリン(Taylor McFerrin)、ホセの紹介者でもあるジャイルズ・ピーターソン(Giles Peterson)のお墨付きを得たディグス・デューク(Diggs Duke)など。彼らを一括りにして語るのも乱暴だが、ネオ・ソウルがジャズ・サイドから改めて照射され、“ホセ以降”とでも言いたくなるそうしたムードが醸成されていることは確かだ。それはホセがメジャーのBlue Note Recordsと契約して衆目を集めたことも大きい。

ただ、張本人であるホセは、Blue Note移籍第一弾にあたる前作『No Beginning No End』(2012年)で“ポスト・ディアンジェロ”的なレッテルを貼られ、好意にしても悪意にしても、そう譬えられてしまうことに歯痒い思いを抱いていたようだ。

とにかく多くの人にディアンジェロ(D’Angelo)と比べられて参ったね。確かにディアンジェロっぽい曲も入っていたけど、それっぽいヴァイブを感じるのは“It’s All Over Your Body”くらいだと思うんだ。いや、それを聴いてそう思われるのは構わない。事実だから。ただ、アメリカではインタヴューとかで、『ディアンジェロに必死に追いつこうとしている』なんて言われたりして、ネガティヴに取られていた。自分としてはアルバム全体としてもっとユニークなものを提供したはずなのに、特定の曲だけ取り上げられて、メインの要素を理解されなかった。

例えばキャット・パワー(Cat Power)はアル・グリーン(Al Green)のリズム・セクションを使って録音していたけど(旧ハイ・リズムの名手を迎えた2006年作『The Greatest』)、『アル・グリーンになろうとしている』なんて誰も言わない。それが僕の場合は違った。前作ではクリス・デイヴ(Chris Dave)にもプレイしてもらったけど、彼とも、たまたま偶然一緒に仕事をした、というだけなんだ

ならば、ディアンジェロの『Voodoo』に貢献したピノ・パラディーノ(Pino Palladino)をプロデューサーに迎えたり、ラッセル・エレヴァド(Russell Elevado)をエンジニアに起用したのも“偶然”だったのか?と訊くのは、いまさら野暮だろう。ともあれ、世間のディアンジェロ(の新作)に対する飢えを、良くも悪くもぶつけられてしまったのが前作だった……のかもしれない。

そうした反応も踏まえてなのか、Blue Note第2弾となる1年半ぶりの新作『While You Were Sleeping』は、前作で多くの人が聴き逃していた要素を意識的にクローズアップして制作に臨んだという。こうした意識は、「今思うと自分のヒップホップ的な(セルフ・ボースティング的な)部分が出たかも」というアルバム・タイトルにも表れているようだ。

皆が目を向けてないうちに、ホセ・ジェイムズはここまで凄いことをやってのけたんだ!っていうね。ただ、収録曲をアルバム・タイトルにしたのは、これまでもそうだったし、ジャズ的なお約束と言えるのかもしれない。アルバム全体を象徴するような曲を選んでいることが多くて、それが今回は“While You Were Sleeping”だった。この曲にはアルバム全体を通してやってみたかったことが全て含まれている。ダークな感じのフォーク・ブルースから始まって、少しだけエレクトロニックなものが入ってくるって感じで。リリックも単なる歌詞ではなく、短編小説的な要素があって、これまでとはちょっと違った表情を見てもらえるかもしれない

一聴して気づく前作との違いは、アルバム全編でギターの音が際立っているという点。一曲目の“Angel”ではイントロからジミ・ヘンドリックス風のギターが登場するし、“Anywhere U Go”でもシューゲイザーのようにギターがノイジーにかき鳴らされる。

まさにそれを狙ったんだ。何しろ今作では、自分が書いた曲は全部ギターで作ったくらいだから。ライヴでエネルギーを感じてもらえるような、楽しくなるような曲を作りたくてね。その場合、ギターを使うのが一番効果的だと思った。で、そのエネルギーを表現してくれるギタリストを探していた時に出会ったのがブラッド・アレン・ウィリアムズ(Brad Allen Williams)。彼はジャズだけじゃなく、メンフィス出身ということもあってソウルフルな要素を持っていて、ブルース、ゴスペル、ロック、カントリー……何でも弾ける。今作では、その彼が自分のバンドと一緒にカッコいい音を紡いでくれたんだ」 (→ P2に続く)

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